よつばつうしん
2015年9月号(No.054)
うまい話まずい話	やさい村	河合左千夫
(その9) ヒロシマ―ナガサキ―フクシマ

朝日新聞が原爆の日を前に、生存する被爆者の方々にアンケート調査をしたところ、多くの人たちが福島第1原発事故を目のあたりにして、原爆も原発も同じだとの思いに至ったと答えています。放射能によって自らの体をむしばまれている人たちですら、それまでは、原発に対してはほとんど無関心だったり、「平和利用」はいいことだと思っていたそうです。
 アメリカやドイツなどからイランとの間で何年も続けてきた核開発についての協議がようやく妥結して、経済制裁が解かれることになりました。イランが持っているウラン濃縮工場の一部を認めるというものです。核分裂をするウラン235は天然のウランの中にたった0.7%しかなくて、これを4%から5%まで遠心分離器で濃縮して初めて核燃料となります。さらに濃縮をすればウラン型原爆(広島に落されたもの)の材料になります。イランが認められた濃縮工場で原爆を作ろうとすれば1年かかるので、この規模ならいいだろうということです。
 核燃料を作るのもウラン型原爆の材料を作るのも全く同じ技術です。そこで「平和利用」の看板を掲げるために原発が必要となります。そもそも順序が逆なわけです。ところが「平和利用」の結果、大量の死の灰と、もうひとつの原爆、プルトニウム型原爆(長崎に落されたもの)の材料となるプルトニウムが生み出されます。青森県の六ヶ所村に作られている再処理工場は、死の灰の中からプルトニウムだけを選り出して、その他のものはほとんど空中や海中へ捨てるためのものです。いわば、これも原爆材料製造工場です。日本はウラン型もプルトニウム型もどちらのタイプの原爆材料製造工場を持っているわけです。
 福島第1原発事故を受けてドイツは脱原発を決断しました。「あの日本ですらあんな事故を起こす」というのが大きな理由だったそうです。決定を下したのは政府の倫理委員会。原発は経済問題などではなく、人類にとって倫理の問題です。


水俣たより
 「公害の原点」水俣からH
風評被害と脱原発
企業組合エコネットみなまた 永野隆文


 今回は、「風評被害」についてです。もともとは、根も葉もない噂により経済的な被害を受けること。それが、本来の意味を離れて一人歩きし、「現実に問題が発生している、あるいはその可能性がある」事象に対しても安易に用いられ、本質に対する考察や対処がされず、社会にとって重要な事項であるにもかかわらず、誤魔化すための一種の常套句と化している状況が今、水俣で見受けられるのです。
 風評被害が水俣で使われたのは、最近では、福島原発事故直後、水俣市立水俣病資料館が、福島原発事故の被害を受けた人々に向けて「水俣はいかにして風評被害を乗り越えたか」を発信した時。13年、「水銀に関する国際条約」に水俣という名前を入れることに反対した水俣市議会の「水俣の名前を入れれば市民への風評被害が永遠に続く」という理由の時。
 そして今、福島産の食べものを食べて、福島を応援しようということが、水俣で少しずつ進められています。しかも、被曝に最も敏感な「小中学生」の学校給食に導入を最終目標として。発端は福島と水俣の中学生交流事業の中で、「風評被害を受けている福島の農産物を何とかしてあげたい」という、中学生の素朴な発想から生まれた、いわば善意が出発です。しかし、このままでは、福島原発事故の本質、原因の究明や収束、10数万人の避難者の問題が、わきに追いやられるという「効果」を伴いながら進行していくことでしょう。


原発から1kmの海岸での
再稼働阻止集会2015.8.9

11年4月、農水省が中心となり、東北地方の被災地産品を「食べて応援しよう!」とキャンペーンを始め、今に至ります。本来、原発事故で農家が蒙っている甚大な被害は東電と政府に補償させることが基本です。そのことや、今ある原発をどうしていこうという立場に立つことなく、食べて応援ということには賛成できません。現在国は、避難者の帰還を積極的に進めています。土地や食べものの安全キャンペーンがはられ、今回の学校給食導入の背景がそこにあり、さらに「水俣」の名前が使われるのだとしたら、残念でなりません。「食べて応援!」が脱原発社会到来の一助になるならば何も言いませんが。



編集委員からの一言


 アベ首相は憲法学者のほとんどが「違憲」と判断した安保法案について国民の理解が進んでいないことを認めながらも衆議院で強制採決しました。そして政府与党内ではあろうことか、支持率が下がっても一時的なもので、そのうちみんな忘れてしまうから大丈夫。などとも言っているそうです。
 国民から選ばれた、といっておきながら国民の声に耳を傾けない。それどころか政府に批判的な報道をするところにはお仕置きが必要だ、などと発言する与党議員も。民主主義といいつつ近代日本の帝国主義に通じるものがありますね。
 今春、従姪が自衛隊に入隊しました。彼女は戦争がしたいのではなく災害救助活動にあたる自衛隊員の姿を見て、自分の進路を決めたそうです。そんな彼女もこの法案が成立すれば、戦地に赴くことになるかもしれません。そして彼女だけでなく、多くの尊い命が危険にさらされるこの戦争法案には断固として反対します。

(兵庫いきいきコープ・田中一彦)


 

INFORMATION
9/12(土)〜ロードショー
●映画『BREATHING EARTH』
〜ブリージング・アース:新宮晋の夢〜
シネ・ヌーヴォ 06-6582-1416
http://www.cinenouveau.com/ 
9/21(月・祝)10:00〜 13:30〜
●『地球交響曲第8番 上映会in京田辺』
会場:NPO法人京田辺シュタイナー学校
主催:地球交響曲第8番京田辺上映実行委員会
お申込み・お問い合わせ:
gaia8kyotanabe@gmail.com


9/20(日)10:00〜 14:00〜 18:00〜
●映画『小さき声のカノン』
鎌仲ひとみ監督作品。福島─チェルノブイリ、国境を越えて「被ばく」から子どもを守る母たちのドキュメンタリー
会場:茨木市福祉文化会館5階ホール
お問い合わせ:072-650-3211(淀川産直)
10/18(日) 13:30〜15:00
●第210回 住まいの勉強室
 『エンジョイシニアの住まい』

場所:高槻市立総合市民交流センター
講師:磯田吉郎氏
(一級建築士、福祉住環境コーディネーター)
予約連絡先:072-671-2284(井上)

苫小牧沖のフェリー火災事故(8月31日)により北海道宛の本紙のお届けが遅れました。また、届かなかったのは北海道宛のうち一部であることが再発送後に判明したため、重複して届いた方もいらっしゃると思います。ご了承ください。


戦争法案廃案!	原発再稼働反対!	安倍政権退陣!

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