私たちは、農場や食品加工工場を自分たちで運営しています。よそから仕入れるだけの単なる消費者団体ではなく、自らも生産活動に参加することで、生産・流通・消費の結びつきを強め、食べものをめぐる社会的仕組みを作り変えることを目指してきたからです。2013年の最終号となる今月号では、その生産現場の中から3つの工場の責任者に、加工工場の、さらにはよつ葉の「これから」について語っていただきました。 (編集部・下村) |
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私たちの望むもの
ハム工場・佐藤雄一 |
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よつ葉のハム工場建設に向けての内部の反応は、あまり前向きなものではなかったと聞いています。資金調達、建設用地、人材等あまりに困難な問題が多く、当時のよつ葉の規模では自前のハム工場を持つには時期尚早過ぎ、誰もが実現に向け具体的な計画を立てることができませんでした。
しかし、ハム工場建設の牽引力として皆を引っ張った中心人物が周囲の反対をかわしながら、時には強引にハム工場建設計画はスタートしました。そして数多くの困難に立ち向かい、紆余曲折を経て一時は頓挫しかけた時期もあったと聞いていますが、1992年10月に工場は完成し翌年の3月には、よつ葉の店舗からハム・ウィンナーの供給を開始し現在に至っています。
私自身はそんな立ち上げの喧騒が収まった時期にハム工場にやって来ました。あらかじめ敷かれたレールの上を走れば良い訳です。ところがそのレールは途中まで、そこから先は自分で作らなければなりませんでした。とは言えそんなことでしか人は成長しません。完璧なレールなど存在しなかったからこそ20年以上も続けることができたのだと思っています。よつ葉の工場はモノだけではなく人もつくっていく場所です。
工場立ち上げに全力を注いだ第一世代から、商品、経営の安定が自分の世代の役割と位置付け、まだまだ不充分ながらも一定の成果は出せたものと思っています。しかし満足はしていません。もっと遠くまで行けるよう次の世代に伝えなければいけないことは、生産・流通・消費をひとつのものと捉え、その束縛から自由になることこそが私たちの望むものだということです。何ものにも支配されず、何ものも支配しない。そんな生産・流通・消費の一役を担うべくよつ葉のハム工場は建設されたはずで、工場建設にはそんな思いも込められていたことを次の世代に残さず伝えなければなりません。 |
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家庭の味のお手伝い
大北食品・熊崎光浩 |
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大北食品で惣菜作りに関わるようになって14年が過ぎました。
関西よつ葉連絡会の立ち上げ当初は、素材(農産品、精肉、基礎調味料)を中心に扱い、世間も惣菜は各家庭で作るのが当たり前でしたが、徐々に工場生産品となり、今や加工された惣菜がなければ、生活できないような時代になりました。
そんな時代になっても、よつ葉の会員さんはよつ葉の素材を使って各家庭で手作りしてほしいという思いはありますが…いや、よつ葉の素材を使って作るとこんなにおいしいものができるんだよ。全国の生産者の思いを込めた農産品で作るからおいしいお弁当にもなるし、夕食のおかずができるんだよ。ということを伝えられる惣菜を考えながら仕事づくりに努めています。
よつ葉の生産工場としての課題は、もっと技術を磨いて懐を深くし、周囲でとれた野菜の加工を拡げていくこと、会員さんが利用しやすい惣菜とはどういう形が良いのかを決めていくことで次の世代につないでいくことだと思っています。 |
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人と関わるから面白い
高木俊太郎 |
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国産小麦、契約栽培や有機栽培の素材、よつ葉の素材だけでパンを作るなど、聞こえの良いスローガンは解り易く大切です。しかし、これがよつ葉らしいことなのか、やりたいことなのかと考えるとちょっと違うと思います。
もちろん大切な一面ではあります。しかし、他団体でも同様の取り組みをしているところはあり、今やネットで検索すればたくさんそんなものは出てきます。やっぱりものづくりや配達にも人と人の関係がなくては、面白くない。
会員さんには、交流会や工場見学のときに、どんな思いでどんな人たちが作っているのか、感じてほしいとお願いします。カタログを見た時にも、商品の向こう側を想像してほしいと思います。
同じ原料でも、機械で人の手も触れず作られるパンと、僕らが手作りしているパンは同じではない。野菜や穀物が育つ畑、加工し、届けてくれる人を知ると、食べるものがもっとおいしくなります。食卓での会話もはずみます。
よつ葉の工場として、食事がただの栄養補給、食欲を満たすためだけのものになってしまわないように、これからもものづくりを通して食べる楽しさを伝えていく使命があると思います。 |