原発事故と農業を考える 支えよう 東北の米づくり 朝日新聞の月曜日の朝刊に掲載される「朝日歌壇」の愛読者の1人です。震災と原発事故が発生した3月11日以降、投稿される歌は被災地を詠んだものがほとんどになっています。 生きてゆかねばならぬから 原発の爆発の日も 米を研ぎおり 福島市の美原凍子さんの投稿歌です。米を研ぐという日常が、どれほど危い薄氷の上で営まれているのかを震災は教えてくれました。原発事故は、放射能汚染という空間的にも時間的にも区切りを付けることができない災害をもたらしています。それでも人は生きていくわけです。どう生きるのかを一人ひとりがこれまで以上に問い続けながら、震災から2カ月がすぎました。 よつ葉の年間予約米 今年度のよつば農産の中心課題の1つが「よつ葉の年間予約米」の拡販です。民主党政権による米の戸別補償制度の導入によって、2010年産の稲作は大きく揺れ動きました。その上に、昨年夏の異常高温が重なって、10年産の新米が出荷される頃から、米の市場流通は低迷、スーパーで売られる米の価格は下がる一方となりました。 原発事故を境に変化 最初の1週目、積み重ねてきたキャンペーンが功を奏したのか、年間予約米6アイテム全てが前年同時期対比で120%以上の受注数を集めました。ところが、ちょうど予約米受け付けスタート週の金曜日に大震災と原発事故が起こってしまったのです。2週目からの予約注文に大きな変化が表れました。6アイテムのうち、山形県・おきたま興農舎の「コシヒカリ」と「つや姫」、青森県・新農研の「アキタコマチ」の予約に急ブレーキがかかったのです。逆に、地場の「コシヒカリ」「キヌヒカリ」、島根県・やさか共同農場の「コシヒカリ」が前年比150%を越える注文数を集めたのと顕著な違いでした。そして、4週間で〆切った11年産年間予約米の予約注文数は、山形県、青森県の米が前年より減じ、地場、島根県の注文数は5割近い増加という結果に終わりました。 「風評被害」とは考えない 原発事故で膨大な量の放射性物質が拡散し続けている状況は今も続いています。東北で、これから田植えがスタートする11年産のお米、しかも年間を通して、食べ続けていただく年間予約米だけに、少しでも汚染のリスクを避けたいと考えられた会員の皆さんの判断は、十分に根拠のあるものです。その選択を「風評被害」と呼ぶことは間違いだと考えています。国が定めた基準以内だから「安全」という主張こそ、逆に間違いだと思うのです。 日常からの変革を
私たちに何ができるのか。私は、おつき合いを重ねてきた東北各県の農家の皆さんが、つくり届けてくれる農作物を、彼らと共に食べていきたいと思います。まぁ、私は余命の少ない歳ですから。でも、そうした判断は、私たち一人ひとりが自らの判断として決めるべきことであるとも思っています。 古きほど 汚れたるほど誇れるを 政治家は着る 新品のナッパ服 最初に紹介した朝日歌壇に投稿された、宗像市の巻桔梗さんの歌です。この国の政治の質を変えないと、未来の子どもたちに申し訳ないと思いながら、自分たちの非力を痛感する毎日です。でも、年齢を重ねて、根源的変革は日常の積み重ねの上にしか生まれないことをようやく知りました。あきらめずに刻んでいきたいと思っています。(よつば農産・津田道夫) |