岸田政権は「原発の建て替え、新設は行わない」という従来の方針を転換し、「次世代革新炉の開発・建設」を宣言したうえ、「最長60年となっている運転期間の見直し」、「既存原発の早期再稼働」についても言及しました。
関西よつ葉連絡会では、“食”を切り口に自然との関わりが大切にされ、誰もが安心して暮らせる社会を目指すという立場から、一貫して原発反対を訴えてきました。その中で現実のものとなってしまった福島第一原発事故を私たちは決して忘れません。苦しい状況に追いやられた生産者の事を、放射能への不安と生産者への想いに引き裂かれた会員の皆さんの事を、そして何より、故郷を、家族を、安らかな暮らしを奪われた福島の人たちの事を決して忘れません。
「安全な原発」など、これまでもなかったし、どのようにして言葉を飾ろうがこれからもありえません。私たちは、断固として政府の原子力政策に反対します。
(関西よつ葉連絡会事務局長 松原竜生)
岸田政権の愚かな原子力政策
小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
日本では、これまで57基の原発が運転されてきた。それらすべては自民党政権によって安全だと認可されたものだ。彼らは原発だけは絶対に安全で、大事故を想定することは不適当だとした。でも事故とはもともと想定できないからこそ、事故というのである。フクシマ事故が起きた後、彼らはその事故は「想定外」だったと言い訳した。
フクシマ事故では20万人近いひとたちが生活を根こそぎ破壊され、流浪化し、今でも数万人の人たちが自分の家に帰ることができない。多くの日本人はすでに忘れさせられてしまっているが、事故当日発令された「原子力緊急事態宣言」は11年半以上たった今も解除できないまま続いている。被曝に関する法令は反故にされ、本当は「放射線管理区域」に指定して一般の人々の立ち入りを禁じなければならない場に、被曝感受性の高い子どもを含め100万人単位のひとが棄てられたままになっている。
●「原子力マフィア」という犯罪組織
日本では国を頂点として、電力会社、巨大原子力産業、マスコミ、電通など広告宣伝会社、学会、教育、裁判所などがすべて一体となって「原子力ムラ」と呼ばれる巨大な権力組織を作って原子力を進めてきた。それなのにフクシマ事故に対する責任を負うべき彼らは、誰一人として責任を取らないままである。私は彼らは犯罪者組織だと思うので、「原子力マフィア」と呼ぶようになった。
「原子力マフィア」の中心であった安倍元首相は、自分たちの責任を忘れさせるために、国民を東京オリンピックのけん騒に引きずり込んだ。その安倍元首相は自分が働いた悪事の数々がバレそうになったら、さっさと逃げてしまった。安倍政治を継承すると言って跡を継いだ菅前首相は、COVID19への対応で無能・無策をさらけ出し、簡単に政権を降りた。その後を今、岸田首相が継いでいる。
岸田首相はもともと中身のない人で、「聞く耳」を標語にしている。その彼はフクシマ事故の原子力緊急事態宣言の解除すらできないのに、今は停止している原発の再稼働、原発の寿命を80年まで延長、さらに新たに原発を作ると言いだした。彼の聞く耳は、自民党や財界、原子力マフィアだけに対して向いている。
フクシマ事故が起きる前、日本の電力の30%は原発が供給しており、原発がなければ停電してしまうと国民は脅かされた。確かに、フクシマ事故が起きた2010年度1年間を見ると原子力の電気は全体の30%を占めていた。しかし、その1年間の火力発電所の設備利用率は47%しかなかった。つまり半分以上の火力発電所を止めていたのである。仮にその年に、原発を全て止め、その分の電力を火力発電所を動かして供給したとしても、火力発電所の設備利用率は70%にしかならず、残り30%の火力発電所は止めておかなければならないほど日本の発電所には余裕があった。
もちろん今書いたことは1年間を通してのことで、電気が足りるか足りないかということはピーク電力使用に関わる問題である。しかしフクシマ事故後、原発はほぼすべてが停止した。特に2014年度の1年間は、原発はすべて止まっていて1kWhの電気も起こさなかった。それでも、停電など起きなかったし、1年を通しての火力発電所の設備利用率は57%にしかならなかった。
原子力マフィアはずっと嘘をついてきた。一つの嘘がバレるとまた次の嘘をついた。いままた、電力がひっ迫していると彼らは言い出したが、発電設備はフクシマ事故後むしろ増えているし、電力の消費量は逆に減っている。ピーク電力が足りなくなると言うのは発電設備の運用を彼らが恣意的に少なくして、あたかも原発に頼らなければ停電してしまうかのように嘘をついているだけである。
●手放せない核兵器保有能力
フクシマ事故により、それまでの安全基準が間違っていたことが事実として示された。それを受け、原子力規制委員会が作られ、原発の安全性を審査するための新規制基準が作られた。しかし、事故は規制をすり抜けて起きることは、すでにフクシマ事故が示した。そのため、原子力規制委員会は、彼らが定めた新規制基準を満足していても「安全だとはいわない」と言っている。つまり、今や原発の事故は前提にされてしまったのである。その上、原発の運転は原則40年だが、新規制基準に合致するなら、あくまで例外として60年まで運転を認めることにした。ところがそれは例外どころか、美浜3号機、高浜1,2号機、東海第二と40年を超えた原発に次々と運転許可が出されてきた。そして岸田首相は、今度は80年まで運転することを認めると言いだした。原発はフクシマ事故が示した通り、超巨大な危険を内包した機械である。厳重に整備して安全だと言われても、40年以上前に作られた飛行機に乗る人はいない。おまけに80年前の飛行機が事故を起こさないと言われても誰もそれに乗ろうとはしないだろう。
また、岸田首相が言い出した「新型炉」など、とうの昔から構想され、どれも実現できずに潰れてしまったものばかりである。いずれも実現の可能性はないし、仮にそれが実現できるとしても長い時間がかかる。現在「原子力マフィア」が言っている電力のひっ迫とはもともと何の関係もない。原子力マフィアの目的は原子力にしがみついてカネ儲けを続けることである。そして、より本質的には「核」と「原子力」は同じもので、原発をやめてしまうと、核兵器保有の能力を失ってしまうということである。

「原発のない明日を! 老朽原発このまま廃炉! 大集会inおおさか」