(北摂協同農場・安原貴美代)
能勢の新規就農者の取り組み
米づくりを未来につなげる
大阪府・能勢町は全国的にも新規就農者数の割合が多い地域となっています。そのほとんどの生産者は有機農業での生産に取り組もうとしています。しかし、稲作は田んぼはもちろん、機械類や作業のための広い倉庫の確保などを考えるとかなりハードルが高くなります。おまけに野菜とは違い、米作は年一回の作付けになりますので10年やっても10回の経験でしかなく、野菜の生産者は増えても、米農家の生産者は増えないのが現状です。一方、米生産者も高齢化が進み、先祖代々の田んぼをどう守っていくかが、大きな課題となってきています。そんななかで地域の米づくりの伝承を未来につなげていきたい。その思いを形にし、提案してくれた安田君。能勢の集落に根づいており、彼の提案に地域の農家も賛同し、一人でも多く稲作に取り組む新規農家と技術や経験の豊富な米作農家をつなげる役割を担っていきたいと奮闘しています。
農業研修から新規就農まで
「能勢農業みらい塾」の代表で、大阪府能勢町で稲作農家をしている安田ふぁーむの安田と申します。すでによつ葉各紙で何回か寄稿させてもらってはいますが、今回は私の新規就農までの歩みやお米塾について紹介させていただけたらと思います。
私は紆余曲折を経て30歳間近で本格的に農業の道を志し、2019年3月に当時の移住先であった北海道十勝から能勢町に移住し(出身は大阪府箕面市)、町内にあったよつ葉グループである(有)北摂協同農場(以下、北摂)に入社しました。
北摂は野菜の栽培が中心で農業の基本を一から学ぶことができ、同時にたくさんの地元農家さんと知り合う機会が持てました。また、入社時から独立後は無農薬栽培によるお米農家になりたいと考えていたため、勤務時間外に知り合いの方からお借りした圃場で実験的に無農薬でお米づくりを試すなどしていました。
幸い、その年の夏から秋にかけて町内の空き家とその近隣の農地(1町2反ほど)を紹介してもらうことができ、半ば強引? ではありましたが、2020年3月に円満退社、晴れて(イバラの道の)新規就農を果たしました。
「能勢農業みらい塾」立ち上げ
今年で3シーズン目に突入しましたが、まだまだ失敗や不安の連続で、農法においても試行錯誤を続けています。近所に無農薬米をつくっている人はいないので、困ったときや悩んだときは虹色米や有機納豆でおなじみの南丹市の堀さんによく相談しています。
収穫量はまだまだ目標には及びませんが、自分のつくったお米をおいしいと喜んでもらえることがとても嬉しくモチベーションにつながっています。この記事が出る頃は田植えの真っ最中だと思います。頑張れ、自分(笑)。
北摂の安原さんとよく「あと5年もしたら農家がいなくなるな」「米をつくる若い農家がほんまにおらんな」みたいな話をよくしていて、特に北摂は能勢中の農家さんから米や野菜を受け入れているため、安原さんは私以上に現状をヒシヒシと感じているようでした。なので私がこのプロジェクトの話を持ち掛けた際に「積極的に協力してくれる」と言っていただき、また野菜農家の成田さんとお米農家の塚原さんにも賛同をいただいたことから発足に至りました。
現状と今後に向けて
この4月から2期生の研修が始まりました。今年度は最終的に5組の方が参加され、それぞれの農家で研修を進めています。今シーズンは広域連携をやっていきたいと考えており、1件の農家だけでなく本人と農家の希望で別の受け入れ圃場での研修も行っています。ひとくくりに農家といっても規模や農法もそれぞれ異なるため、複数の農家の作業を経験することでより多くの学びや気づきを得てほしいと思っています。
また、昨年参加してくれた1期生の方も、複数人の方が引き続きお手伝い兼ねて兼業農家(?)として来てくれています。今年度はトラクターなどに乗ってバリバリ実務をこなしつつ、自らの圃場も確保して自分たちのやりたい農法でお米づくりにチャレンジしています。
プロジェクト立ち上げの構想から1年半がたち、試行錯誤や議論を重ねつつ、なんとか2期目も無事に進みだしました。正直言ってお米づくりのハードルはとてもとても高いです。資金的にも栽培管理においても農地の確保などにおいても…。なので、お米農家(兼業農家)を増やすというよりも援農による交流人口、能勢で頑張っている農家さんを実務的にサポートしてくれる人材が増えてくれることが農業活性化そのものにつながると今は考えています。
「まもなく食糧危機が来る」なんて言われ始めていますが、実際に来るか来ないかは置いといて、私は変な食糧備蓄を進めるよりも、自分の住んでいる地域の近くにいる農家さんとつながっておくことの方が大切だと考えています。しっかりとした関係を構築しておくことで、もしもの際には農家さんは必ずあなたを助けてくれます。(それまでは買い支えてあげてください)
今後とも安田ふぁーむや「能勢農業みらい塾」の取り組みを通じて、農家と消費者が緩やかなコミュニティーの中でお互いを支えあうシステムづくり(農で皆がより楽しく、よりハッピーになれるグループづくり)を目指して活動してまいります。今後ともよろしくお願いいたします。
安田さん一家
北摂協同農場の稲穂
研修中の安田さん(右)
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