熱中症対策! 「家・住まい」あまりにも無関心?
釜中 明(一般社団法人 いい家塾)
●地球温暖化と以外に多い住居内の熱中症
「暑い~、もう死にそうや!」近年これが日常会話になりました。日本列島は連日、35℃以上の猛暑日が続き、40℃を超える酷暑の地域も出現しました。猛暑・酷暑で熱中症が心配です。東京都板橋区の民家で8月8日朝、90歳と86歳、82歳の3姉妹が室内で亡くなりました。いずれも外傷はなく熱中症だといいます。エアコンは設置されていましたが使用せず、姉妹は「エアコンは嫌い」と話していたといいます。
厚生労働省によれば、近年、年間30~40万人もの人が熱中症になっています。死亡者数は2010年から2019年までの10年間で1万人を超えていて、毎年1000人前後の人が亡くなっています。発生場所は屋外を予想しますが、住居内が多いのに注目すべきでしょう。筆者の前著書『真逆を生きる』(JDC出版)に「2003年8月、ヨーロッパが熱波に襲われ3000人以上が死亡した。「これは地球温暖化による異常気象である」と指摘をしました。そもそも石造りの家は、一度温度が上がると下がりません。高温の室内から逃げる場所もない人々が熱中症になり犠牲となりました。
私は「家・住まい」の重要性にあまりにも無関心であることに警鐘を鳴らしたいと思っています。原因は断熱ができていないので室内が高温になっていることと、湿度も高いほど危険が増大します。汗が蒸発して体温を下げることができないので熱中症を発症する、と専門家が解説しています。問題は断熱性能が劣悪だと熱い外気温が室内を高温にすることです。さらに構造材が鉄やコンクリート、内外壁材や床などに石油化学物質建材を使用していれば湿度を調湿できません。これが木材などの天然素材を使用していれば、高い調湿性能が発揮されます。いま、家自体の質が問われているのです。
「家のつくりやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比(ころ)わろき住居(すまひ)は、堪へ難き事なり」『徒然草』第55段、鎌倉末期、吉田兼好法師著になる有名な一節です。この国は、夏の高温多湿、冬の低温乾燥の四季があります。これをわきまえて家を造るべきだと賢人は教えました。エアコンの発達で兼好のアドバイスを皆、忘れてしまったようです。住宅産業界の現況は住宅の質の「住み心地」が欠如していることが問題なのです。合理化によるコスト削減策、利益追求が品質の低下を招き、さらに欠陥住宅が後を絶たない現状があります。いい家塾は兼好のこの教えを基に、さらなる高みを目指し「いい家」造りを実践してきたと自負しています。「こんなはずではなかった」と家を買って後悔する人が実は非常に多いことから、20年前本私は「いい家塾」を設立したのです。
・「いい家とは」どんな家?=長寿命でオンリーワンの「住み心地のいい家」
・住み心地のいい家=「夏涼しく、冬暖かい自然素材の健康住宅」。なんとエアコンゼロの家も実現しています。
●解決策は、「湿気」を制すること。「湿気」とは何か?
「住み心地」のいい家にするためには、五感の満足が必要です。そのための一番の解決策はまず「湿気(度)を制する」ことです。「夏涼しく冬暖かい健康住宅」をつくるため、夏季の高温多湿、冬季の低温乾燥と折り合いをつけることができれば解決します。それは「湿気」をコントロールすることで解決。モットーは「夏を制すれば冬も制する」を実践してきました。では湿気とは何か? 湿気とは空気中の「水蒸気」なのです。「空気は窒素、酸素、二酸化炭素などの気体で成り立っているが、その他に水蒸気(水が気体となったもの)も含んでいます。水蒸気は非常に小さな気体で、酸素や窒素の大きさが10万分の38~42㎜であるのに対して、水蒸気は10万分の4㎜の大きさしかありません。この空気中に含まれた目に見えない水蒸気(気体)が、冷たいものに触れて水(液体)になる現象が結露です。
つまり木材は、周囲が乾燥していると細胞中の水分を放出し、湿度が高いと湿気を吸収して周りの湿度とバランスを保とうとします。この木材の調湿性能が結果として室内の湿気を一定に保つのです。木が呼吸しているといわれるのはこういう意味です。木造の家で自然素材の和室8畳の場合、夏の高温多湿のときは湿気を吸収し、冬の低温乾燥時には逆に湿気を放出します。その量は小さなバケツ1杯分の水に相当するのです。
「湿度」とは空気が乾いているか、湿っているかを示す度合いです。絶対湿度と相対湿度があり、絶対湿度は1㎥中の水蒸気量をグラム単位で表し、相対湿度はある気温で現実に含んでいる水蒸気とその温度で水蒸気を含みうる限度(飽和水蒸気量)との割合を百分率で表したもので、日常使う湿度OO%がこれになります。「賢者は歴史に学び愚者は経験に学ぶ」という格言がありますが、当塾では「温故知新」を実践しています。その証として、例えば竣工した塾生の奥田邸や三浦邸は、エアコンなしの「無冷房、少暖房」の家が実現しています。
・住まいとは何か=「人生の基地であり、家族の健康と、
生命と財産を護る器である」
・基本理念=「人は家を造り、住まいは人を創る」と定義している。
家づくりは人づくり、人づくりは国づくり、
故にいい家づくりが大切なのです。
・合言葉= 「家、笑う」
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