生産者と太いパイプをつくる
遠忠食品
先日、50年後の姿を予測する講演を聞きました。高齢化社会で25%の働く人が75%を支えることになり、食料自給率は19%になり、未来の子どもたちが飢える時代が来る可能性がある。貧乏な国は必ず飢える。日本の第一産業を盛んにしていかないと大変なことになるということでした。生まれてくる子どもたちには責任もなく、幸せに暮らせる日本を目指していかなければと心の底から思っています。
「メイドイン東京の会」を4年前につくりました。東京の自給率はわずか1%しかありません。東京でも農家さん、漁師さんがたくさんいますが、生産量はわずかで商品開発をしたり、1次産業の方々と連携したり、何より消費者の方々に地産地消を訴えかけたり、地道な活動をしています。
昔はつくれば売れた時代があったと91歳の父が話してくれたことがあります。ものが少ない時代で、今みたいな飽食の時代ではなく、流通もシンプルで市場流通が中心でした。弊社の工場が東京の日本橋にあったころは住み込みで仕事を支えてくれた方がいてくれました。原料の供給が途絶えたとしたら、製造ができなくなります。精魂込めた原料の供給があるからこそ、私たちが生産を続けられるので、一次産業の生産者と太いパイプをつくり継続しながら発展する方法しか考えられません。
先日、弊社に60年間務めてくれた方が退社しました。一方、息子が4代目として継いでくれることになり、若い考え方で継続してもらいたいと願っています。彼が「この仕事ができて良かったなあ!」と思ってもらえるような事業になって欲しいです。人のために行動することが結果的に自分も幸せになれるのではと考えています。昔のように豊かな海に戻ってくれればと願いつつ、行動していきます。
(宮島一晃)
宮島さん、親子孫3代
木次乳業は島根県南東部の雲南市という中山間地にあります。かつてこの地域はたたら製鉄で繁栄し、百姓たちもたたら製鉄に携わりながら地域の暮らしを守ってきました。しかしたたら製鉄の衰退や戦後の生活様式の変化などの影響を受け、百姓たちもなりわいを変えながら暮らしを守ってきました。私の祖父も仲間の百姓たちと70年前に酪農を始め、牛乳の製造を始め、今年は木次乳業有限会社を設立し丁度60年を迎えることができました。この60年間で皆さまには牛乳メーカーとして認知いただくとともに、社内でも牛乳メーカーとしての意識が高まっていきました。
私も昨年代表を引き継ぐ際に、改めて当社の成り立ちや未来に思いをはせるなかで、牛乳メーカーという意識に違和感を覚えました。現在当社の主業である牛乳製造は、百姓の数あるなりわいのひとつとして興したものであり、地域の暮らしを守る手段のひとつでではないかと考えることができました。またコロナ禍という状況や、厳しい未来が予測されている地域のなかで、すこやかに生きることについて、これから私たちに何ができるのだろうかと考えさせられました。
これからも皆さまに選んでいただける食べものをつくり続けていくことは勿論ですが、まず私たちは牛乳メーカーに留まらず、暮らしを守る百姓であることを意識し、経営理念「すこやかな暮らしとともに」のもと、創業の思いを実現できるよう歩んでまいります。
(佐藤毅史)
佐藤さん
酪農を始めたころ(昭和30年代)
『こんど、いつ会える?
~原発事故後の子どもたちと、関西の保養の10年』
編著/ほようかんさい(保養をすすめる関西ネットワーク)発行/石風社 単行本 1600円+税
評者:辻田浩司(ひこばえ)
福島第一原発事故後、放出された膨大な放射性物質によって東北、関東でも被爆の不安が高まりました。「この状況を見過ごしていいのか?」日本各地で子ども、もしくは家族に対して一時的な避難受け入れや、長期休み期間を利用したキャンプなどを実施。現在まで、関西でもさまざまな団体が、つながりながら保養の活動を継続しており、よつば関西保養キャンプもそのなかの1つになります。残念ながらコロナ禍でほとんどの団体が活動を自粛せざる負えない状況にはなっていますが、著書では24団体のこれまでの活動が記録され、原発関連の事象を過去から遡ぼることで、同じ過ちを繰り返さないようにしようというメッセージも込められています。
部分的に抜粋すると、主に子どもたちと接する機会の多い各団体の若手フタッフ7人の座談会コーナーでは、保養キャンプに対する思いや苦労話などが語られていました。共に楽しみを分かち合うこともあれば、子どもに対して叱ること、諭すことがある。そこで自分自身が気付かされることもある。子どもがキャンプを通して成長する姿を見ながら、スタッフ自身も成長を感じ、別れが近づくにつれ、タイトルにもある「こんど、いつ会える?」という思いが強くなっていく。実際には2021年の福島県内の検査で、甲状腺ガン、または疑いのある子どもが252人確認されたようです。これだけでも今後、保養の活動は必要であることがわかる。しかし、単に受け入れる側、受け入れられる側の関係だけでは成り立たない。そこで生まれる人とのつながりが保養の活動を継続させていくんだということがよくわかる座談会でした。
「誰かを踏みつけて平気な社会」ではなく、苦しみを自分事として感じられる「分かち合い」こそが、環境の問題などを解決していく力になるかもしれない。保養の活動を通して私たちに訴えかけてくる一冊です。
※2022春実施予定だったよつば関西保養キャンプは、新型コロナウイルス「オミクロン株」の感染拡大の影響で、残念ながら中止することに決定いたしました。今後も東北の子どもたちに安心して楽しんでもらえるような保養キャンプが実施できるよう、実行委員会は活動を続けて参ります。改めて実施が可能になった際はご協力いただきますよう、何卒よろしくお願いいたします。
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