“手づくり醤油に”注目集まる
大徳醤油
兵庫県養父市:めんつゆ、国産丸大豆薄口醤油など
大徳醤油は兵庫県養父市という中山間地にある小さな町の小さな醤油蔵。「命を育む食べものづくり」を理念に、四季の温度変化の中、蔵付き酵母でゆっくりと発酵させる伝統の醤油づくりを守る傍ら、産地や製法まで厳選したさまざまな調味料をつくっています。
今年を振り返ると、新型コロナウイルスに振り回される1年でした。これまで展示会やイベントを通じて商品をお届けしていましたが、それがなくなり取引先の温泉街などが長期休業をするなかで飲食関連の売上げは目も当てられない状況でした。しかし一方でネット販売などは多く利用していただいている結果となりました。
特に注目をいただいたのは「醤油じかん 手作り醤油キット」です。ご家庭で1年かけて醤油を仕込み、育てながら変化を観察し醤油づくりを楽しめます。伝統的な製法でつくる醤油が少なくなってしまっている現状において、未来の子どもたちに伝統の醤油醸造をつないでいきたいという思いで取り組んでいます。
緊急事態宣言やテレワークによって家庭で過ごす時間が増えたことにより、今年は多くの方に挑戦していただきました。それがきっかけで「ふるさと名品地方創生大賞」「但馬産業大賞」などを受賞、さまざまなメディアでも取り上げていただきました。
コロナ禍による生活様式の変化から、これまではどちらかというとニッチな商品への需要が高まっています。もう一度昔ながらの丁寧な暮らしを見直すきっかけになればと期待を寄せます。利便性だけを求める世の中で、つくる人はつくる人、買う人は買う人、と生産者と消費者が離れていきました。そのなかで大事なものが失われてきたと思っています。1人でも多くの人に醤油づくりを体験してもらい、しっかりつながっていければと願っています。
(浄慶拓志)
もろみも楽しめる手作り醤油キット
野菜本来の味と歯応え
竹善
京都府長岡京市:すぐき、三色ぬか漬けなど
よく京都の人は自分の住む土地のことが大好きだと言います。本屋さんで並ぶ京都の特集本も大半の読者が京都の人だということを耳にしますが、生まれも育ちも京都である私の本棚にも特集本が何冊もあります。
京都の大学を出て銀行に就職しましたが、何か生まれ育った地で「京」の付く地域に根差した仕事がしたいと感じはじめ、「京つけもの」屋さんになることを決意しました。つけもの屋さんで6年間修行した後、独立してはや20数年になります。
それだけに京都に対するこだわりは結構あります。まず原材料である野菜ですが、花菜(はなな)や山科茄子・すぐき菜・京丹後与謝野胡瓜など、旬の京野菜を漬け込んでいます。それぞれの産地の農家さんとは直接契約栽培しているので、顔の見える、採れたての新鮮な野菜を漬け込むことができています。
京つけものは三里四方の菜が命。すぐ近くで採れた新鮮な野菜を使うことが何より大事だということが古くから言われていますが、このことを竹膳では大事にしていて、京都にこだわる理由でもあります。
また近年は、漬け方をぬか漬け中心に変えてきました。これは京都独自の「どぼ漬」という方法です。私が子どもの頃、母が夏場に茄子や胡瓜をどぼ漬で漬けていました。漬け上がった茄子の美しい青紫色に感動したのを今でも覚えています。
普通のぬか漬けと何が違うかというと、水気の多いぬか床で漬けているところです。そして漬け上がりが早く、早く漬かるから野菜は新鮮。ぬか漬けなのに野菜本来の味と歯ごたえがあり、栄養価においても米ぬかのビタミンB1とぬか床の乳酸菌が素早く吸収されます。野菜そのもののうまみを生かした漬け方にもこだわっております。
そんな「京都」な私ではありますが、今後とも京ブランドに自身と誇りを持って取り組んでいきたいと思います。
(川原崎一夫)
新鮮な京野菜の旨味を生かす「どぼ漬」
私たちは温州みかんの産地としても知られ、豊富な水産物、真珠の養殖でも知られる宇和海に面した愛媛県八幡浜市でかまぼこ屋を営んでおります。
戦前は仕出し、割烹料理屋を営んでおりましたが、1948年に屋号はそのまま引き継ぎ、西日本でも有数の水産資源に恵まれていた八幡浜の特長を生かせるかまぼこ屋に転進。私は1975年に家業を継ぎました。
新鮮な魚の旬のおいしさを感じていただけるかまぼこづくりをするにはどうしたらいいのか…。追求していくと無添加の商品づくりにたどり着きます。大学時代の先輩やさまざまな方の協力で、化学調味料・保存料を一切使用しないかまぼこの製法ができ、現在に至っております。
主原料は宇和海で水揚げされるエソやグチなどの白身魚。早朝から魚を捌いていき、擂潰機(らいかいき)ですり身をそれぞれつくり、かまぼこや揚げものなどをつくっていきます。なかでも「じゃこ天」は魚の骨や皮も入った、それこそ魚の味、食感が楽しめる天ぷらになっています。かまぼこやちくわも含め、皆さんに長らくご愛顧いただいております。
近年、気候変動など、さまざまな原因で宇和海の漁獲量も減少傾向にあり、原料調達の難しさを感じております。地域の高齢化の問題もあり心配は尽きませんが、今までと変わらない、魚のうまみが詰まった矢野傳のかまぼこ、練りものなどを皆さんに楽しんでいただけるよう、日々励んでいきます。
(井上証之)
擂潰機を使ったすり身づくり
当研究所は、発足してから前身の電子農業を含めると40年以上がたつ。当初のリーダーはすでに亡くなっており、退会者も増加し規模も若干縮小しているものの少数ではあるが、精鋭の後継者を中心に会をけん引している。発足当初のメンバーは健在だが、現役で頑張っているのは私ぐらいで72歳になるが、バトンタッチするまでは頑張らなければと日々奮闘し、新しいことにも挑戦し続けている。
今年は高密植栽培(大きくならない台木に接ぎ木をするわい化栽培よりもさらにコンパクトな栽培方法で隣の樹との間隔も狭い)の研修のため先進地である長野県へ研修に行ってきた。昨今の深刻な人手不足を考慮し、手入れや生産を効率的に行えるということで決断した。長男の了解を得たことが後押しした。
もう一つは平地のわい化りんご園地に自動草刈り機を導入したことである。これは高密植栽培とともに昨年末、補助事業の対象になったことで導入した。今はやりの果樹では数少ない「スマート農業」につなげ、将来、子や孫へ受け継ぐ有益な材料となると踏んだためである。中3の孫が休みに乗用の草刈り機で手伝ってくれていたが、わい果樹の樹幹下が処理できず、それが解消できるのが大きい。孫にはときどき草刈り機を洗浄してもらっている。
さらに黒星病に対し、生育の初期段階で新JAS法有機農産物に使用できる農薬や納豆菌液を培養して散布し、減農薬栽培を実現したことである。当会は有機や減農薬栽培が主体であり、安全性を追求する姿勢を貫けたことは大きい。
長男はまだ就農していないが、雪の上で行う剪定作業を休みには手伝ってくれている。時代の変化に対応していけるようコミュニケーションも行っているつもりだ。次世代の人たちが結束していけるようにサポートをもう少しだけ頑張っていきたいと思う。
(今井正一)
今井さんご夫妻
高知県の30代若手ナス農家さん3名(都築さん・五嶋さん・松本さん)は生産者であり父親です。「子どもに食べさせたくないものはつくらない」という思いとそれを実現する技術でこだわりのナスを栽培されています。
土づくりの段階では農薬を使った殺菌・殺虫が行われるのですが、3名は一切農薬を使わず微生物のたっぷり入った堆肥を入れ、透明マルチを敷き、太陽熱の力で温度を60℃近くに上げ、土にいる病害虫を退治することで、健康にナスが育つ土づくりをしています。
高知県は天敵昆虫の研究が盛んでピーマン農家さんの96%、ナス農家さんの99%が天敵昆虫を入れて農薬の使用量を極力減らしています。若手農家さんも、天敵昆虫を購入するのですが、さらに土着の天敵であるタバコカスミカメや田んぼのあぜにいるカメノコテントウムシなどを野外に取りに行ったり、農家さん同士で分け合ったりする面白い取り組みもされています。またハウス内に天敵が住み着く花なども植えられています。天敵を入れると自然と強い農薬は使わなくなるので、ネオニコや有機リン系、除草剤は一切使わず栽培をしています。
トマトトーンなどのホルモン剤を使わずに、ミツバチやマルハナバチをハウス内で飼って自然な受粉をされています。ハウスに行くと、ハチがナスの紫の花の中で楽しそうに仕事をしています。
高知のナスをいつも食べていただき、ありがとうございます。今後も農家さんとともに、一生懸命工夫しながらお届けさせていただきます。
(鳥谷恵生)
都築功さん
五嶋高之さん(左)と松本博明さん(右)
ネパールの女性たちと共に
ネパリ・バザーロ 高橋百合香
(https://www.verda.bz/)
インドの感染爆発の影響を受け、2021年4月末からネパールのカトマンズ盆地でも再び厳しいロックダウンがありました。国際線も運航停止になり、商品が数か月輸入できず在庫も底が見えてハラハラしました。現地では長期のロックダウンにより仕事を失ったり、ストレスがたまり家族間の問題が噴出し、追い詰められた末の自殺や事件もありました。社会的に立場の弱い女性や子ども、障がいがある方たちが犠牲になることに心が痛みます。
このような状況下、お付き合いしている生産者団体の中で、より生活が困窮し支援が必要であった「ウールンガーデン」「ミランガーメント」「スパイシー・ホーム・スパイシーズ」のワーカーにはお見舞金をお渡ししました。世界的なパンデミックで、特にハンディクラフトは仕事が激減したからです。2015年のネパール大地震でも被災し、コロナ禍以前から経済状況は逼迫していました。シングルマザーの方々も多く、家賃や電気代、子どもの学費を滞納している人もいました。食品も必要最低限なものしか購入できず、ガスや食用油を買うのもちゅうちょせざるを得ないような状況でした。ささやかな額でしたが、目先の生活が救われたと喜んでいただきました。
また教育支援のなかでも、2007年から紅茶農園のワーカーの子どもと少数民族キサンの若者の高等教育支援に力を入れてきましたが、今年は応募者が例年の倍近くになりました。どのご家庭も非常に厳しい生活状況のため、経済状況や女性優先で対象を絞ることができず、全員受け入れざるを得ない状況でした。未来を担う若者たちの教育は重要です。この他、養護施設の子どもたちも支援しています。行き場のない子どもたちが自立するまで、私たちが責任をもって支援しなければという思いで一杯です。
先日、奨学金支援で准看護士コースを卒業したキサン民族のギタさんから、病院で働く動画が届きました。テキパキと看護をする姿に感動しました! 若者が夢を叶えて働く姿は、私たちの希望の光でもあります。後に続く子どもたちにとっても将来の夢を描けることでしょう。
日頃からの皆さまのご支援に感謝いたします。2022年もネパール、そして沖縄や福島、岩手と関わり学びながら、共に歩んでいけたらと思います。
ミランガーメントの皆さん
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