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農業や畜産の現場から1年を振り返る
コロナ禍での現状と新たな展望
昨年に引き続き、今年もコロナウイルスに翻弄される一年になりました。関西よつ葉連絡会の中には配送・生産加工場とありますが、同じ生産の現場でも消費と直接的なつながりのある受注生産の食品加工業と原料調達などの農業・畜産の第一次産業とは少なからず、状況は異なるようです。農業や畜産においてコロナ禍はどのような影響を及ぼし、その結果として現場にどのような展望をもたらしたのでしょうか。よつ葉の自社農場に今年一年を振り返ってもらいました。
(編集部 矢板進)
これからの畜産の具体的な道筋
コロナ感染が拡大したことにより緊急事態宣言が発令せれ、その割には感染拡大を制御しきれない政府の対応に憤りを感じていましたが、ようやく感染拡大が落ち着きだしてきました。ですが、完全な収束が見えない状況は変わりません。
コロナ禍によって日常生活や仕事の面で大きな変化があり、ストレスを感じている方も多く居られると思います。
能勢農場でも共同生活の面で、休みの日に実家に帰ることや友達と会うことが難しくなり、買いものなどは限られた場所にしか行けないなど、普通にできていたことができない日々を過ごしていました。仕事の面では移動動物園の開催がキャンセルされたり、小学生の子どもを募って毎年夏に開催している林間学校、よつ葉の職員と会員さんの交流の場にもなっている農場祭り、たくさんのよつ葉の会員さんが参加しているいちご狩りなどの行事も軒並み中止になるなど対応に追われました。
また原油の高騰や世界の物流が滞ったことによるエサ代の値上がりなどが農場の経営に大きく響き始めています。初めにも書きましたがコロナが完全に収束することはまだ先ではないかと思いますが、今までの日常が少しずつでも戻ることが一番の望みです。これからはウイズコロナ・アフターコロナといった、コロナウイルスと共存せざるを得ない方向に向かってきており、感染防止対策を行いつつ、さまざま取り組みが行われだしてきています。
移動動物園やいちご狩りは感染防止対策を徹底し、林間学校は以前のように子どもたちの笑顔が見られることを望み、そのときの状況を考慮し開催することの意味を農場内で議論を重ね開催できるようにします。またあらゆることが制限され、新たな一歩が踏み出せない状況になりがちですが、次を担う私たちが畜産の現状を考え、新たな取り組みにチャレンジしていかなくてはなりません。
この先、北海道を除く各地域の酪農家の離農、廃業が加速している昨今、F1(異なる系統や品種の親を交配して得られる優良品種)の市場出荷が今後ますます激減することで、仔牛価格が高騰し導入が困難となることが予測されます。繁殖からの一貫生産の実現に向けて、放牧に適した高知県の土佐あか牛の繁殖事業に展望を見出しており、この事業への具体的な道筋を考えていきたいと思います。
(能勢農場 中原恵一)
能勢農場のあか牛
都市から集落移住もいいですよ
あらゆる人が密になることが制限され、のどかな私の集落でさえ以前とは様変わりした2年間でした。ある程度の規模以下で、お勤めしながら農地の保全管理には稲作が効率的です。ただ田植えと稲刈りだけは手伝いに親戚の皆さんが帰省して来られ、大人は作業、幼児は虫網での昆虫採集と和気あいあいと汗を流されます。
しかしこの期間は自力もしくは、人を雇って作業された方がほとんどでした。ただでさえ米価の下落、高齢化など、離農は加速しているのに再びこのような状況となれば、さらに追い打ちをかけて最後には集落の維持も難しくなるでしょう。
営利目的ではなく保全管理を目的にされている方がほとんどです。形は違いますが、私の集落55世帯、農地面積が約30haで環境保全のために、助成金が毎年300万円程支給されています。この資金を利用して、農道、水路、ため池、農地等の保全管理をしていますが、申請してもらうものなので当然申請して保全活動をしなければ、助成金はもらえません。
コロナ渦においても日役(ひやく)という奉仕活動だけは続けました。里山に設置している獅子垣の点検や補修、水路の泥上げなど。日役に出ると日当が出るのですが、この手当はもれなく自治会へのカンパとなり、この資金で公民館の修繕費などに充て、自治会費を抑え、みんなで守っています。野菜のおすそわけだけではなく、みんな知り合いで助け合って生活しています。
農村が崩壊すれば、一時的に水を蓄えてくれる水田がなくなり、また獅子垣や柵の管理をやめてしまえば、都市部にまで影響を及ぼすでしょう。これまで人を集中させて、あらゆるサービスを享受することで、お金が循環して成り立っていた都市での便利な生活でしたが、移動が制限された途端に職を失い、その日に食べることもままならない人が現在もたくさんいらっしゃいます。不便はありますが、今から集落への移住準備を始められませんか。
(丹波協同農場 近藤 亘)
麦の種まきをする近藤さん
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