自然界の生命力に任せる
農家の後継として、慣行農法で菊を中心とした切り花の栽培を行っていましたが、20年くらい前から農薬を散布した日の夜は疲れがひどく残ることがあり、有機農法に切り替えたのですが、害虫の被害は想像以上でした。
2005年8月、自然農の話を聞き、半信半疑で「赤目自然農塾」を訪れたとき、田畑、塾生、心地のいい空間が待っていました。以来、毎月塾生として通い続けることになります。また次の月には塾の創設者である川口由一さんの田畑の見学会に参加し、川口さんから「肥料を与え過ぎれば作物がひ弱になって、虫に犯されますね。畑は耕さなければ、自然に豊穣の舞台になりますよ。」と言われてすぐに納得しました。こちらは隔月で学んでいます。
私は現在、木津川市で自然農で自営しながら、一部を自然農の学びの場として、約20名の方々が学んでおられます。
ここで、自然農の基本的なことを紹介しておきます。『耕さず、肥料、農薬を用いず、草や虫を敵としない。』という農の在り方です。最も大切なことは耕さない。耕しますと、そこに生きている命を奪ってしまいます。草は虫や小動物に食べられ、食べた虫たちは命が尽きれば、土に還り微生物が分解して草の命を養う。その生態系を壊してしまいます。また肥料、農薬を持ち込んでも、生態系を壊してしまいます。
食べる部分だけ必要最低限持ち出して、籾殻や根っこは田畑に返す。『持ち込まず、持ち出さず』草や虫も、必要最低限は取り除きますが、自然界にできるだけ手を出さず、作物の幼い時期は少し手伝って、あとは自らの生命力に任せる。種をまいただけでは野生の草に負けてしまいますが、過保護に育てれば、生命力の弱い野菜になります。子育てと同じです。私は「生命力のある野菜が健康な体をつくる」と信じています。自然農に興味をもたれた方は、JR木津駅東口、毎月第3日曜日とその前日の土曜日、9時から。お弁当、長靴、農作業のできる服装でご参加ください。予約不要。
(奈良会員 細谷泰高)
苗床づくり(左手前が細谷さん)
稲木づくり(右端が細谷さん)
(池田会員 内藤美帆)
講演中のはたさん
気付けば自身も〝よつ葉っこ〟
(京滋産直 吉村隆宏)
コロナ禍での「助けて」の声~シングルマザー世帯の困窮~
●医師にも理解されない化学物質過敏症
“しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西”はシングルマザーを支援する当事者団体です。シングルマザーがイキイキと楽しく暮らせる社会を目指して、情報提供やセミナーの開催、合宿やクリスマス会など親子交流会を行っていました。しかしコロナ禍となってからはイベントなどが中止となり、“ドドーン”と増えたのは、食料品をはじめとした物資支援と生活相談でした。
突然の学校休業で自宅待機となり、「給食がなくなって食費が上がった。お米の減り方が“ハンパ”ない!」、「卵1パック買うのもちゅうちょして、値下がりしてから買った」などの声が届きました。コロナ禍も2年近く続き最近では、「貯金が底をついた」、「何でもいいから送ってください」、「妊娠7ヵ月なのに1日1食しか食べていない」など、切羽詰まった「助けて」の声が届くようになり、その都度、常備している緊急支援用の食料品を段ボール箱に詰めて送っています。
●社会福祉制度の問題点
また、食料支援と並行して生活相談活動も行っています。相談のメールや電話があると、居住している自治体の“ひとり親支援”のサポートを求められたかどうかをまず確認します。そして制度の情報提供、社会福祉協議会や女性センターの連絡先を伝えた上で、必要に応じた資料を支援物資と一緒に箱に入れて送ります。“食べ物”は親子のお腹を満たし、社会資源へのアクセスは、その地域で親子が生きていくうえで安心感を与えてくれるからです。しかし、さまざまな支援制度(児童扶養手当の臨時給付金、生活保護、緊急小口貸付け金、住宅確保給付金など)がありますが、必要な情報が当事者に届き、活用されているとは言えない現状があります。私たちも最新で信頼性の高い情報を伝えようと公的機関のHPなどを調べるのですが、これがはっきり言って難しい…。さっと読んだだけでは分からないことも多く、生活のため時間に追われる当事者の方々が、活用までたどり着けないのも無理ありません。
制度の問題点がうかがえる一例として、このようなケースもありました。「過去に役所、社会福祉協議会から家賃を借り返済が2日遅れたため、二度と貸付金を貸してもらえない」という相談があり、私たちも驚いてしまい国の対応を確認するため厚生労働省のコールセンターに電話したのですが、「細かいことは地元の社会福祉協議会に問い合わせてほしい」とのこと。言われたとおり地元の社会福祉協議会に電話しても、「よく経過がわからないので、本人さんからご相談ください」という回答でした。しかし、過去に生活保護を受けていた際、役所の担当者から厳しいことを言われ、「自殺したくなった」という経験を持つ相談者に、これ以上「頑張れ!」とは言えません。「いかに支援できるか」ではなく、「いかに支援を最小限に抑えるか」という目的のためとしか思えない管理を行う“お役所”に怒りが湧き、同行して抗議したい気持ちでいっぱいになりました。せっかくさまざまな給付金が予算化されていても、申請率が上がらず必要な支援が当事者に届かないはずです。給付や貸付の条件に当てはまらないと自己判断し、申請を行わないシングルマザーもたくさんいます。心も身体もボロボロになっている相手に対し、それでも“棘の道”の申請作業全般を乗り越えないと「助けませんよ」という姿勢はやめてほしい。
●経済的困窮は〝自己責任〟ではありません。
悲痛なメールに象徴されるような経済的困窮は“自己責任”ではありません。もともと不安定雇用が多く、ギリギリの生活を送っているシングルマザー世帯にとって、コロナ禍による休業や解雇、学校休業によって食費が増えることは大きな打撃です。給付金や補償だけの問題ではなく、誰でも食べていけて教育を受けられ文化的な生活を送られる、という当然の権利がもともと侵害されており、コロナ禍によってそれに拍車がかかったのです。世界でみれば上位10人程度の資産家が、世界人口の半分にあたる下位36億人と同等の資産を有する状況を、“努力”や“幸運”、“自己責任”などの言葉で説明できるでしょうか? 相対的貧困率が約50%にのぼるシングルマザー世帯の困窮は、その世界の現実を象徴するものとして捉えなければなりません。
終息がみえないコロナ禍の不安が、シングルマザー親子の心と身体、生活をむしばんでいくことを危惧します。何とか支えていけるよう、これからもそれぞれの地域で、できることをひとつずつやっていきたいと考えています。
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