(奈良南会員 小出佳織)
『自家製ミルクカフェ ブラウンスイス』 絵:小出佳織
『まほうのおまめ』
だいずのたび
辰巳 芳子【監修】 松本 春野【文・絵】 文藝春秋 2020年8月 単行本 1650円(税込み)
評者:尹 英順(別院食品)
お豆の種はお豆。種だけど食べられるし、植えられる。豆腐、納豆、味噌、醤油においしく変身する、みんなの力になるお豆は、魔法の種、お豆!
初めてこの絵本を手にしたとき、『魔法』という言葉に本当だぁ〜とちょっと感動しました。なぜ今まで大豆と魔法が結びつかなかったのか不思議なくらいピッタリだと思いました。
絵本は女の子と大豆くんが友達になり、栽培から加工まで大豆の一生?!を一緒に旅する楽しいお話。旅の途中、女の子は鳥に食べられる大豆くん、雨にぬれる大豆くん、茶色く枯れてしまった大豆くんを心配したり、枝豆は大豆だったと知り驚いたり、豆腐屋さんやお味噌屋さんをのぞいたり、街には変身した大豆くんがいっぱいいることに気づきます。優しいタッチの絵と、大豆くんの旅ナビが、ほんわかした気分にしてくれます。
この絵本は「大豆100粒運動」を提唱する、料理家・辰巳芳子さんの思いがたくさん詰まった絵本です。戦争、貧しい時代を体験した辰巳さんは、人は大豆と米さえあれば何とか生きていくことができる。大切な幼い命を守るにはまず、この国の大豆を再興することだと言っています。この絵本を通して大豆100粒とは子どもの手のひらにのる量なんだと知りました。2004年にスタートした「大豆100粒運動」は、今では3万人の子どもたちが種をまくようになったそうです。
わが家の食卓に欠かせない豆腐、味噌、醤油の原料である大豆の自給率はわずか7%。輸入大豆に頼っている日本ですが、幸いにもよつ葉の豆腐は、国産契約栽培大豆100%。これって本当にスゴイことなんだと実感せずにはおれません。年々栽培が難しくなる気候変動の中でも毎年大豆を届けてくれる全国の大豆生産者の皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。大豆をこれからも安心して栽培できるよう、会員さんに豆腐を食べて応援してほしいです(宣伝?!)。絵本は大人も学べる大豆資料付きです。ぜひ食育に親子で読んでほしいです。
生命のバランスを乱す合成化学物質
●医師にも理解されない化学物質過敏症
化学物質過敏症(CS)の患者さんの話に向き合って約30年になります。この病気は従来の病気と少々異なっています。発症の機序も世界的にいまだ解明されていませんし、特効薬もありません。多くの国で患者が増加し続けていますが、その中でもドイツ、アメリカ、カナダ、日本、その他では病名登録が認められています。
病院には専門別にいろいろな科がありますが、CSの症状は多彩で複数の科にわたっていますので、何科を受診してよいのか分からないのです。例えば頭痛と腹痛、筋肉痛や湿疹また眼も…またあるときは鬱もと、これまでの医学では考えられず、現代の医学教育を受けてきた医師に「そんな病気はありません」と言われて精神科を勧められます。このように一般の多くの医師に理解されないなかで、患者さんは辛い思いをしながら、あちこちの科を渡り歩くことになります。
現代社会は多くの合成化学物質に囲まれ、私たちは便利に生活しているのですが、人間の体は精密な機械です。このままの状態が続くとヒトという精密機械が合成化学物質に蝕まれて心身ともに少しずつ壊れていき、社会が成り立たなくなるときが来ると感じています。
2010年、ハーバード大学の研究者たちは農産物に残留した有機リン農薬でも子どもたちの発達障害が増加するとデータとともに米国小児科学会で発表しています。日本でも子どもの発達障害の増加は右方上がりに増え続けており(文部科学省のデータ)、横浜市など支援学級をつくっても、つくっても足りないので、境界線児は普通学級に入れていると現場の教師が話しています。他市でも把握されていないだけで大同小異だと思われます。
私がずっと患者さんの話を聞いてきたのは、ちょっとした情報を知らないためにCSのように医師にも周囲の人々にも理解されない深刻な辛い症状になってしまうのだと痛感したからです。また鬱に対する環境医学の治療が現代医学のそれと全く異なるのは驚きです。化学物質過敏症は、次のような日常生活の中で原因物質が体内に蓄積して発症します。
有機と慣行栽培の栄養価を比較するラトガーズ大学の研究
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