食は生命とつながっている
脱骨研修からよつ葉の食を考える
コロナ禍は私たちよつ葉連絡会にとっても食品配送の現場やイベントなど、さまざまな影響を及ぼしました。かねてより取り組んできた研修のあり方もこれまでと違うやり方を模索することとなり、大きなことはできなくても「できることからやっていこう」と、リモートなども使いながら活動を進めてきました。今回はその中から「脱骨研修」を紹介します。この取り組みは自社で農場・加工場を持つよつ葉連絡会にとって事業活動そのものを振りかえる機会にもなっています。
(編集部・矢板 進)
効率至上主義からちょっと離れて
よつ葉の食肉加工の大きな特徴は、牛も豚も屠場から搬入される枝肉から加工している点だと考えています。現在、流通している食肉原材料は、部位ごとにカットされ包装された部分肉がほとんどです。それを加工する現場では生きものとして育ってきた牛や豚を想像することは難しいけれど、部位ごとに必要量を確保できるし、加工作業も容易です。その方が効率的であることは明らかだと思います。しかし僕は枝肉から加工を始めるこだわりが、よつ葉の食べものへの考え方を示すものだと捉えてきました。
地球という類まれな生命体が育てた生きものをいただく。人間もその中で生をつないでいく。食べものを届ける仕事というのは、生きものが育つ現場とそれをいただき家族を育てる現場をつなぐ仕事であると思うからです。そのためには現代社会をくまなく包む、圧倒的な市場経済の効率至上主義からちょっとだけ離れたポジションに足場を置くことが大切だと考えています。
よつ葉の食肉加工を担う能勢食肉センターは2009年に牛や豚の脱骨作業用の加工工場を新築しました。ここでよつ葉のさまざまな現場で働く若い人たちに、豚の枝肉の脱骨作業を体験してもらう場をつくりたいと始めたのが「脱骨研修」という取り組みでした。握ったことのないサバキ包丁を使って、豚の枝肉を分割し骨をはずす。あまり参加者の仕事に役立つとは思えない研修ですが、一頭一頭の豚の個体差や肉質の違いを実感することがよつ葉の食への取り組みに触れ、考えるきっかけになればと思ったからです。
今年の2月、よつ葉が土曜日の配達を止めたのにあわせて、土曜日の研修活動の1つとして、再び脱骨研修を呼びかけました。すると予想をはるかに越えて、15名ほどの参加希望者がよつ葉のさまざまな現場からありました。作業場のスペースなどの都合で4名1組で2組。合計8人が隔週で午前10時から午後1時までの3時間、半年間の研修に取り組んできました。
包丁を動かして、未知の豚枝肉に挑む作業はその人の気性や性格がよく表れます。一緒に作業を進めながら、そんなところに突っ込みをいれたり、婚活の行方を教えてもらったり。研修中も終わってから能勢農場が準備してくれたカレーの昼食を皆で食べながらも、楽しい会話が絶えませんでした。若者たちが案外、悩みを抱えると占い師に頼るという実態も新たに発見して、こちらも土曜日が楽しく、始める前のおっくうさはいつの間にか消えてしまった半年でした。
参加を希望して、第1期には入ることができなかった方々と一緒に、9月11日から第2期を始めます。今度はどんな新しい発見が待っているのか。能勢食肉センターの現場には、いろいろご迷惑をかけているとは思いますが、いましばらくのご辛抱を…。
(能勢食肉センター 津田道夫)
肉と向き合ってみれば
2月から8月まで2週に1度のペースで、食肉センターで豚の脱骨作業の研修がありました。脱骨とは食肉加工のうち、右と左の半身に分割された(背割り)後、骨を取り出して肉の塊だけにしていく工程です。
自然のものが相手なので、なかなか自分の思う通りにはいかない作業です。一頭一頭に個体差があるなか、関節の継ぎ目にピンポイントに刃を入れなければいけなかったり、逆に軟骨には刃を入れないように切り進めていかなければならなかったり。木材から釘を引き抜くのとはやはり違う作業です。
そうして肉と向き合ってみれば肉は当然のように部位ごとに売られているけれど、それが傷がつかないよう慎重に分割された結果であることが分かります。また部位によってはどれほど取れないかということも(ヒレ肉だと一頭から子どもの二の腕2本分ほどしか取れないのです)考えずにいた肉のあり方の、当たり前ではなさに思い至った、そんな半年間の研修でした。
(ひこばえ 阪本貴史)
豚って意外と大きいな
脱骨研修参加させていただきありがとうございます。隔週4人の班での研修、初めて会う人ばかりでしたが、皆さん優しい方で一安心。初めての食肉センター内、貸していただいた作業着に着替え作業場へ。
冷蔵庫を開けるとたくさんの頭のない豚が吊り下げられていて驚きました。初見の印象は、「意外と豚って大きいな」でした。背骨を中心に縦に切られた豚を吊り下げられた状態から肩肉を外していくのですが初めはその作業にも苦戦しました。いざ、脱骨作業。津田さんのお手本を見ながらやっていきました。
繊細かつ力のいる作業に悪戦苦闘でしたが3週、4週目とだんだん慣れていき、最後まで楽しくできました。特に難しかったのが吊り下げ状態からバラ肉を外すところでした(包丁を入れる箇所)。この研修で身についたことは今後使うところがあるか分かりませんが(笑)、めったにない体験ができました。農場の皆さん、毎回おいしいカレーライスごちそうさまでした。
(大阪産直 青山太志)
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