学びの本質を求めて
~コロナが気づかせてくれたオルタナティブな学び~
守安あゆみ(認定NPO法人コクレオの森)
●教育の本質を問い直すきっかけ
新型コロナウイルスのまん延という困難によって、わたしたちは生活スタイルを大きく変えざるを得なくなりました。それはまたわたしたちの価値観を大きく揺さぶった出来事でもありました。教育という視点から見た人々の意識の変容について、記してみようと思います。
昨年、全国の学校が一斉休校になりました。子どもの学びが止まってしまったのです。この長い休校期間に、子どもたちは学校から配布されたプリント学習などをしていたようですが、それよりも「やったー!春休みがとても長くなった」と、遊んだり、やりたいことをして過ごしていたようです。これは裏返すと、学校が提供する学びは子どもたちにとって、自分たちのやりたいことではなかったということではないでしょうか。そもそも知識偏重の画一的な一斉教育は、一人ひとりの子どもたちの個性や能力をつぶし、枠にはめるやり方ですから、子どもが自分から進んで学ぼうとしないのは当然のことです。そして長い休みが終わって学校が再開した時、「そもそも学校ってなんだろう?」「学びってなんだろう?」という問いを持つ子どもや親が現れてきました。コロナによる一斉休校がそれまで気づかなかった教育の本質を問い直すきっかけとなったのでした。
●学びとは経験を通して身になること
箕面こどもの森学園中学部3年生のAくんは、そんなコロナ休校を経て転校してきた一人です。箕面こどもの森学園(以下、こどもの森)は、子どもの個性を尊重し、子どもが主体的に学び、民主的に生きることを大切にした小中学校です。Aくんは一斉休校の時に、お金の稼ぎ方について調べたり、実際にメルカリで不用品を売って収入を得た経験から、「学校で教えてもらわなくても自分で学べる」と感じたそうです。休校明けに授業が退屈になり、「学校ってなんのためにあるんだろう?」と考えるようになりました。それまでは高校行って、大学行って、就職して、と普通に思っていたのが、ある時ネットで学生社会起業家に出会い、「学習は家でできる。ネットでできる」と気づいたと言います。Aくんにとって学校はコミュニケーションの場。友だちと話をすることで考えが深まったり、気づきを得られる場所だそうです。そして自分にあった学校を探して、こどもの森を見つけました。Aくんは、「学びとは、経験を通してそれが自分の身になること」と語ってくれました。
科学実験(中学生)…科学実験が好きな人たちが選択して学んでいます。
体育祭…子どもたちが企画運営する体育祭です。
にわとり飼育…子どもたちがにわとりを飼いたいと提案をして、全校集会で何度も話し合いをした結果、2羽のにわとりが学校にやってきました。
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