〝未来をたがやす〟をテーマに、さまざまな分野のエキスパートの方から話を聞いたり、パーソナリティの土井コマキさんの実体験をもとに紹介していくFM802・EVENING TAPのコーナー「コマキ手帖」。よつ葉ホームデリバリーとのコラボレーション企画のなかから、今回は6月16日に放送された、山名酒造の代表取締役、山名洋一朗さんのゲストインタビューを紹介します。
土井:今日は〝日本酒〟のお話です。ご紹介するのは、兵庫県丹波市にある1716年創業の蔵元、山名酒造の日本酒です。1716年ということは…現在305年目! そんな山名酒造の12代目、山名洋一朗さんに「山名酒造の日本酒のこだわり」についてお話を伺いました。「こだわり」というと、どういうところになりますか?
山名:ひとつは米と米麹と水だけを使用した「純米酒」という日本酒を作っているところにあります。
土井:純米酒だけなんですね?
山名:去年までは純米酒以外もつくっていたのですが、2021年からは全量になっています。
土井:すごく思い切りがいるようにも思いますが、それはなぜなんでしょう?
山名:純米酒以外は米と米麹と水に、さらに醸造アルコールを足したようなお酒もあるんですけれども、今、私たちが目指しているのは、より純粋なものづくりをする、ということです。ですので自社で作っていないアルコールを仕入れてきてお酒に添加するというのはやめていきたいなと。よりお米だけで作った日本酒というのを目指して酒造りをしています。
蔵の菌と共生した酒造り
土井:なるほど。さらに木製の桶で作るということにもこだわっているということを伺ったのですが…。
山名:そうですね。「木桶」といわれるものですが、それにお酒を仕込む量を増やしていっています。今でもお醤油屋さんやお味噌屋さんでよく使われている桶なんですけれども、日本酒の世界ではかなり希少なものです。元々、日本の発酵食品を仕込む際には木桶を使っていたんですけれども、使い勝手が悪いとか、生産性が悪い、などの理由で現代の酒造業界ではあまり使用されていません。木桶を作る職人さん自体も減ってきています。そういったところを復活させながら進めていっています。
土井:それは、なぜなんですか?
山名:ふたつあります。まずは日本の伝統的な発酵容器、昔から使われてきたものを未来にも伝えていきたいということです。化学素材もいいですが、木桶は見た目が美しいですし日本の固有のものなので、私たちが日本の文化としてもっと誇るべきものだと思っています。なのでそういったものに囲まれて仕事をして、次世代に伝えていくということをやっていきたいと考えています。
そしてもうひとつ。酒蔵の中、いわゆる発酵の仕事というのは、発酵させる菌である微生物と共生して仕事をしていくような環境にあります。山名酒造の蔵は300年くらい歴史がありますが、長い時を経て蔵内には微生物がたくさん住み着いています。それを生かした酒造りをしていくには化学的な素材よりも有機的な素材でできた桶を使うことが望ましいという結論に至ったわけです。木の中には菌が住み着きやすいということもあります。
化学とか技術革新を追求した酒造りも素晴らしいのですが、長い目で見ると、蔵の菌と共生したアナログな酒造りの方に私は未来を感じていて、そういう意味では木桶は過去から未来につないでいくバトンのような役割を担ってくれるのではないかと思っています。
土井:う~ん、素敵ですね。何か生きやすい環境なのかもしれないですよね。もしかすると木桶というのは。
山名:そうですね。そうだといいなと思っています。
木桶に蒸米を仕込む工程
酒は人と人の輪を結ぶ
土井:ホームページを見ていると、お米の生産者の取り組みを紹介されていたり、ビンを作っている職人さんや、包装用の木札を作っている方まで。いろいろな方を紹介していたりしますよね。
山名:山名酒造の日本酒を皆さんにお届けするまでには、いろいろな方が関わってくださっていて、できるだけその方たちのクラフトマンシップを皆さんに伝えていくことも私たちの使命だと思っています。そういった意味でビンのメーカーさんだったり、エンブレムの木札を作っている学生の方々だったりとかを紹介させてもらっています。
土井:いっしょに作っているということですね。すごいな…そうなると、紹介しようにもキリがなくなりますよね。
山名:そうですね、キリがなくてよかったなと思っています。
土井:ほんとそうですよね。そういったひとつひとつのことを知ると、もっとお酒がおいしく、身体に染み渡っていくような気がします。
山名:私たちがホームページに書いていることを「つまみ」にして、私たちのお酒を楽しんでいただけると、それはすごくうれしいなと思います。
土井:確かに。なんかそれが正しい呑み方のような気がしますね。
「未来をたがやす」をテーマにお届けしているんですけれども、山名酒造の活動を通じて、未来がこうなっていたらいいな…という夢や目標を教えていただきたいです。
山名:私たちがお酒を作り続けることが、地元の農家さんたちがお米を作り続けていくひとつの理由になると思いますが、私たちの酒造りを通じて、地元の田園風景がこれからも美しく保たれ、未来にわたって続いていけばいいなと願っています。
お酒は人と人の輪を結ぶものだと私は思っていて、50年後、100年後とたったときに今自分が進めていることがまた次の世代に引き継がれていき、山名酒造の日本酒をどこかで誰かが呑んでくれたときに、そこでまた輪が生まれていたら一番うれしいことだなと思います。
野菜づくりは難しい、でもやめられない
くまもと有機の会
熊本県上益城郡 :ごぼう・人参
ごぼう畑にて
(村上活芳)
村上さん
地域とともに
アグロス胡麻郷
京都府南丹市:摂丹百姓つなぎの会
時の流れは早いもので、南丹市日吉町上胡麻に移り住み、20年が過ぎました。15年ほど㈲アグロス胡麻郷で働き、現在は生産者として畑やビニールハウスで主に枝豆や小松菜、ズッキーニを栽培しています。
この20年の間に結婚し、子どももでき、地域の自治会や消防団に加入し、地元の方々と接する機会が増えました。特に消防団では同世代の方々と知り合うことができ、消防団活動にとどまらず地域のこと、暮らしのこと、田畑のことなどでよき相談相手になってもらっています。
またそのつながりもあって、田植え、草刈、稲刈などの手伝いもしています。田んぼや畑を取り巻く状況は、担い手不足、高齢化、イノシシやシカによる獣害など深刻な状況です。
しかし上胡麻の方々は何とかして田んぼや畑を荒らさないように、農家・非農家関係なく上胡麻にある山全体を囲っている鹿網の補修や点検に協力して取り組んでいます。田んぼや畑を自分たちの力で守っていこうという姿勢にはいつも頭が下がるばかりです。10年後も20年後も豊かな田園風景の広がる上胡麻を残せるように、私自身微力ながらこれからも協力していきたいと思っています。
(坂本大介)
息子さんと一緒に
記憶の継承活動を止めない
若梅会 新垣ゆき(沖縄物産企業連合)
沖縄戦において女子学生が従軍補助看護婦として動員されたという話は『ひめゆり学徒隊』の存在から有名かと思います。あまり知られていませんが、実はひめゆり学徒隊以外に8つの女子学徒隊が存在していました。その一つに『白梅学徒隊』があり、沖縄県立第二高等女学校4年生の56名が動員され、そのうち22名が戦禍で命を落としました。
現在、沖縄県糸満市国吉に白梅之塔が建てられ、学徒の他、沖縄戦で亡くなった教員と生徒149名が祀られています。この周辺において多くの白梅学徒隊が命を落としたことからこの地に慰霊碑が建立されました。
沖縄県立第二高等女学校には後継の学校もないため、塔の建立はもちろん、修繕や慰霊祭や節目の参拝については白梅同窓会を中心として行われてきました。その際の資金源は、いただいたお香典や御寄付と、同窓会が平和講話やガイドを行い、いただいたお車代などを積立て、貯まったら修繕などに使うといった形で運営されてきました。しかし同窓会も最年少は89歳、遺族の方々も高齢化が進み、今までのような取り組みができなくなってきて、記憶の継承と塔の維持管理が困難になってきました。
そんな状況になり、2019年に集められたのが『若梅会』です。メンバーは白梅学徒隊を学び、継承活動を個々に行っている9名で、慰霊祭をはじめとした祭祀から塔の維持管理、記憶の継承など、同窓会の後継として活動を始めました。若梅会の運営資金については、同窓会から活動費として最初にいただいたお金と、同窓会の代わりに実施した講演料を資金源として運営してきました。
しかし、結成一年でコロナ禍により、一番の資金源である講演が軒並み中止となったため入ってくるお金が完全にストップしました。それでも手弁当で慰霊碑の維持管理のためにメンバーが動き、2021年3月には活動に対し、寄付金をいただきましたが、節目の参拝や塔の維持管理は非常に費用がかさみ、現在、これに塔の修繕が加わったため、財政的には逼迫した状況にあります。
現在は修繕に向けてのクラウドファンディングを実施していますが、その他、今後も記憶の継承をテーマとしたさまざまなプロジェクトを予定しています。記憶の継承を止めないためにも、多くの人に白梅学徒隊や若梅会を知っていただき、その活動にご賛同いただけたらうれしいです。
クラウドファンディング:YUIMA
(https://yuima-okinawa.jp/)
※2021年8月31日まで
振込先:琉球銀行 寄宮支店 普通口座
口座番号0999162 若梅会
※直接お振込の場合は、住所などの個人情報が分かりかねるため、返礼対応できかねますので
ご了承のほどお願い申し上げます。
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