米の検査規格の見直しは本格輸入の布石か?
安田節子 (食政策センター・ビジョン21)
●農薬多使用助長する米検査規格
私も参加する「米の検査規格の見直しを求める会」は米の検査規格の着色粒の厳しすぎる等級の見直しを長年求めてきた。カメムシ斑点米(着色粒)が1000粒に1粒(0.1%)までなら一等米だが、それが2粒になると二等米になってしまう。等級落ちすれば米の買取価格が下がるため、農家は一等米をめざしてカメムシ防除に励むことになり、ネオニコチノイド系農薬(主にジノテフラン)が大量に使われ米の農薬多使用の元凶となっている。
農民連食品分析センターの最近の検査でも調べた大半の米にネオニコ農薬が残留し、私たちは米から日常的に農薬を摂取している現実がある。
検査を受けないと「未検査米」と表示しなければならないうえ、検査米には「産地」「産年」「品種」の3点表示ができるが、検査を受けない米にはできない。そのため、検査は任意だが、ほとんどの農家は検査を受けざるをえない仕組みになっている。一方、輸入米には等級がない。着色粒は1%までOKで国内基準の10倍もゆるいダブルスタンダードなのだ。
●消費者の要求無視し 見直し進む
私たちの要請に対し、政府は一貫してゼロ回答だった。ところがここにきて、米の検査規格の全面的な見直しが急ピッチで進められることになった。2019年3月、「農産物規格・検査に関する懇談会」が農業競争力強化支援法を踏まえ、規制緩和が必要とする論点整理を出した。そして2020年4月、規制改革推進会議は(株)ヤマザキライスの意見書をそっくりそのまま「農産物検査規格の見直し」として内閣に提言した。
意見書では、玄米で行われる米の規格検査は、国際流通は精米であるとして白米での検査(注:輸入米はほとんどが精米で輸入され、半数は米国産 表参照)や、フレコンバッグ(1トン入り)での検査を可能にすること、また、検査を受けない自主検査を可能にし、「未検査米」表示をなくすこと、また「産地品種銘柄指定」を見直し、全国的な「品種銘柄」設定をすること、AI化などスマート農業への転換、そして1等、2等の等級廃止など。
提言は大規模生産者と米輸出業者の利益に一致する。
「規制改革推進会議(会議)」は2015年TPP日米二国間合意文書に基づいて内閣府に設置された。外国投資家や利害関係者が日本に対する要求を「会議」に付託すると、会議の提言の形で内閣に提出され、政府は提言に従って必要な措置をとるというもの。「会議」は米国の要求をストレートに実現できる売国窓口なのだ。改悪農協法や種子法廃止は規制改革推進会議から提言された。「会議」の提言は米国側の利益のためのものなのだ。
「会議」の提言は直ちに閣議決定され「農産物検査規格・米穀の取引に関する検討会(検討会)」が20年9月に立ち上がり、スピード審議で2021年春に結論を出すことになった。
検討会は等級廃止を見送り、あとは提言どおりを結論とする見込みだ。等級緩和すると農家は農薬を使用しなくなり、着色粒の混入割合が大きくなるという委員の意見があった。斑点米を除去する色彩選別機が普及しているのに、だ。
並行して消費者庁は、検査を受けない「自己確認」による3点表示を容認し、「未検査米」表示をなくす改正を2021年7月1日に施行する。
米の検査規格の見直しは米の本格輸入を見据えての国内整備ではないだろうか。
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