〝未来をたがやす〟をテーマに、さまざまな分野のエキスパートの方から話を聞いたり、パーソナリティの土井コマキさんの実体験をもとに紹介していくFM802・EVENING TAPのコーナー「コマキ手帖」。4月からスタートした、よつ葉ホームデリバリーとのコラボレーション企画のなかから4月28日に放送された、まるとも海産で営業をされている樫原さんのゲストインタビューを紹介します。
土井:しらす、みなさんはどのように食べるのが好きでしょうか。私はやっぱりシンプルに冷奴。たまごかけごはんにトッピングしたり、あとは野菜サラダにパラパラッとかけて、塩味を足したり…アクセントになります。歯ごたえとしても。おいしいですよね。そんなしらす・ちりめんを販売している「まるとも海産」で営業をされている樫原さんにお話をお伺いしていきます。
「まるとも海産」は自然豊かな和歌山県湯浅町にありまして、そこで獲れる新鮮なしらすを天日干しにしたり、釜揚げにしたりしています。それではまず、〝しらす〟って何の魚?というお話から聞いてみましょう…赤ちゃんですよね?
樫原:そうですね。しらすはイワシ、大半はカタクチイワシの稚魚なんですけれども、季節によってはウルメイワシ。メザシになる魚種の稚魚だったりもします。
土井:季節もあるんですよね、きっと。
樫原:湯浅は禁漁期間がないので、一年中水揚げがあります。他の地域だと漁獲できない時期もあるんですけれども、和歌山は黒潮の流れもあって、魚の群れがわぁーっとくるので、たくさん獲れる漁場になっています。
土井:そうかぁ! だから、年中私たちはしらすを食べることができているんですね。
樫原:普通だと漁がない期間は冷凍して、その冷凍したものがスーパーなどに出回っていきます。ですが、湯浅のしらすの場合は禁漁期間がないので、獲れたてを皆さんにお届けすることができ、冷凍していない状態で食べてもらえるというのが一番の特長になります。
港についたしらす
〝し〟の形のしらす
土井:そんな中でも、まるとも海産がこだわっているポイントはどこですか?
樫原:湯浅町はほんとに自然しかないところで、工場もないので海がすごくきれい。水揚げされたばかりのしらすは透明度が高く、茹で上がったしらすも真っ白な、きれいなしらすに仕上がります。
そして、私たちの一番のこだわりは〝鮮度〟です。水揚げからどれだけ早く茹でるのか、というところが重要になってきます。まるとも海産の場合は、栖原漁港というところでしらすが水揚げされ、5分もしないうちにセリが終わり、5分もかからないところに工場があるので、だいたい20分もたたないうちにしらすが釜茹での状態になっているというところがポイントですね。
やはり、水揚げから釜茹でされるまでの時間が短ければ短いほど、茹で上がったときのしらすも、きれいな〝し〟の形になるんですよ!
土井:あ、平仮名の〝し〟の形みたいにちょっと曲がるということですね。
樫原:そうです。ほんとにクリッときれいに曲がった形になるので、そこは鮮度を見極めるポイントにもなります。
また、ちりめんの話をさせていただくと、私たちは昔ながらの「天日干し」といった製法をしています。〝せいろ〟という、しらすを干す四角いザルにしらすを広げて天日干しにしていきます。
土井:天日干ししていないちりめんもあるということですかね? 全て干しているものだと思っていました。
樫原:機械乾燥が多くなってきているように思います。やはり天日干しは手間がかかる部分があって。気候や湿度によっても仕上がりが左右してしまうので干し方を変えたりだとか、職人さんの見極めも重要になってきます。ですが、それだけ手間をかけて、お日さまの光に当てて干したちりめんというのは旨みがグッと引き出されておいしく仕上がるので、手間暇はかかりますが、昔ながらの製法を守っていこうという意味もあって、完全天日干し一筋でやっています。
釜揚げされたしらす
未来をたがやす
土井:「未来をたがやす」をテーマにお届けしているんですけれども、まるとも海産の〝しらす〟を通じて、未来がこうなっていたらいいな…という夢や目標を教えていただきたいです。
樫原:今は高齢化、後継者不足がすごく深刻な問題のひとつになっていると思うのですが、私たち湯浅のしらす業界も同じ問題をかかえています。
そこで、地元の小学校の子どもたちに向けて、私たちの町の歴史や海の環境だったり、食べることの大切さを知ってもらえるように、工場見学を実施しています。子どもたちに〝食〟や〝海〟の大切さ、〝私たちの仕事〟について興味をもってもらえたらという思いで取り組んでいます。
土井:そういった取り組みがあって、自分の周りにある海や山であったりが、もっと好きになってもらえたら、後継者不足につながっていくかもしれないですよね。
しらすをせいろに広げてちりめんに
チャレンジ精神が生んだ
農薬不使用〝新生姜〟
高生連
高知県:新しょうが、パプリカ
高知県慣行栽培での生姜の農薬使用数は露地で30回、ハウス栽培で8回が基本になります。一見少ないように見えますが、問題は土壌消毒に使う強い薬剤にあります。
生姜は続けて作物を栽培することが大変難しく、かつては〝臭化メチル〟という強烈な農薬を使用して、土壌を殺菌して栽培をしていました。この防除が安定した連作を可能とし、ハウスのような同じ場所で生姜をつくり続けることができていたのです。しかし時代は変わり、現在はオゾン層を破壊し、人体に悪影響を及ぼす〝メチル〟は全面禁止となりました。
その頃、横山忠彦さんは代替の農薬を使用して栽培を試みますが、以前のような農薬の強い効果はなく、新生姜の品質が悪くなってしまいました。それに伴い、防除回数も逆に増え、農家が管理する項目は増えていくような状況となりました。
ここで基本となる大切な土壌の消毒に、何か方法がないか、横山さんは真剣に考えました。まず夏の暑い陽射しを利用してハウスの土を太陽熱で消毒する。そして地中にパイプをくぐらせ、ボイラーで熱湯を通して地中を消毒する。つまりダブルの高熱で土を完全に消毒してやれば、以前の環境が取り戻せるのでは!?
横山さんは果敢にチャレンジしました。ハウスの土壌に穴を掘り、パイプを巡らせます。そして太陽熱養生処理ができる肥料を選び、上からビニールで押さえ込み、上下からのダブルの高熱処理です。
実際にやってみると…大成功です! その年の生姜の生育は抜群でした。さらに横山さんは考えます。「ハウスだからこそ虫の混入はほぼないとすれば全面有機での新生姜栽培ができるかも…」これも大成功でした!
もう一つの大切なこだわりがあります。通常、生姜は全て生産者、もしくは業者が洗って出荷をします。この洗浄は、実は生姜に傷をつけ、傷みを発生させる原因になっています。
横山さんの圃場の土は細かい、真新しい団粒構造の土で形成されており、土付きでも大変きれいです。そこでわざと一切洗浄をしないで、つまりまるで掘り上げたばかりのような状態がそのまま続くように、土付きで出荷しています。
皆さまに掘りたての鮮度で、そして農薬不使用で、しかも高品質の新しょうがを楽しんでいただきたい。それが生産者の熱い思いです。どうか、そんな生産者の真摯な思いを少しでも感じていただければ嬉しいです。
(新井春樹)
新生姜生産者・横山忠彦さん
安心・おいしいトマトづくりを!
高槻地場農産組合
大阪府高槻市:摂丹百姓つなぎの会の地場野菜
5月後半から7月末まで採れるかな!!
ビニールハウスでの栽培のきっかけは、さかのぼること14年前。知人からビニールハウスを譲り受けたことから始まる。譲り受けたビニールハウスを解体し、持ち帰り組み立てをし、いざトマトづくり!!
初めてのトマトづくりはわからないことばかりで、知人・友人に教えてもらいながらなんとか収穫できました。その後も毎年試行錯誤しながら、栽培をしています。「トマトおいしかったで」と言ってもらえると、来年はもっとおいしいトマトづくりをしようという気持ちになり、消費者の皆さんから元気をもらっています。
ハウス栽培以外に露地栽培も行っており、夏季は15種類ほどの夏野菜を栽培しています。栽培のこだわりの一つとして、できる限り低農薬・有機肥料を施肥しています。自然事象には勝てませんが、心を込めて栽培し、より多くの方に安心・おいしい野菜をお届けできるといいなと思っています。
(山本 知)
山本さんのビニールハウス
肥料がなくても作物が育つ?
丹波ハピー農園 堀 悦雄
いつもご愛食ありがとうございます。丹波ハピー農園の堀です。私はこの丹波の地で百姓を始めて25年になります。
当初は有機質資材も少しは使ったやり方でしたが、10年ほど前から有機質の肥料も使わない無投入栽培をしています(ネギなど一部の葉物野菜は来歴のわかる有機質の資材を最小限に与えていますが)。普通に考えると肥料もあげないで作物が育つとは考えにくいのですが、お米や大豆では最近それなりに育つようになってきました(といってもご近所さんの半分以下ですが)。
百姓の世界では理想の土のことを雑木林の下土と言いますが、耕さず肥料もなしでフカフカした作物を立派に育てることのできる土のことです。
わが日本では70年ほど前から化学肥料と化学農薬が農業を助け、発展させてくれました。その後除草剤もでき、農家の苦労は軽減され収量も大きく伸びました。しかしそれから今まで使い続けた化学物質で先祖たちが数千年間育てた農地は今や、化学物質由来の窒素は作物を害するほどあるのに、命を育むための地力は奪われていったようです。
ですから私が農地を預かって10年くらいはまともに作物が育ちません。それは化学物質や肥料を施さず、野草や作物残渣、緑肥作物などで化学物質で疲れ果てた土の地力復元に必要な時間と努力だと思うからです。
ご近所さんからは草ばかり生やして「出来の悪い駄農!」だと言われましたが、20年以上の時間と田んぼへの愛でそれなりの田んぼ、畑の姿になってきました。雑木林の下土は育つのに数百年、いや数千年の時間をかけて育まれてきました。
化学物質で70年間痛めつけられた土が、わずか10年ほどで蘇る! これは奇跡です。すべて自然の力で短時間(といっても10年くらいはかかりますが)で本来「土」が持っていた能力が蘇ってくる。ダイナミックな奇跡が目の前で展開していきます。作物を収穫した後、草も生えなかった農地に青々と野草が茂り、その野草を肥やしにして作物が育つ。美しく、しなやかに自然が見せてくれるドラマにワクワクドキドキの日々です。その上、こんなにして生まれてきた米や豆や野菜たちで日々の命を養える私は世界一の幸せ者!
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