みんなで守ろう 田んぼの恵み
米づくり よつ葉の取り組み
私の住む町はかつて
私の住む町は、都会に近い田舎といった場所で、山々が並び、ヤマメやアユ、そしてホタルなどが生息するきれいな川が流れ、田んぼが多く生きものと自然に囲まれ、とても恵まれた地域でした。
そんな環境だったこともあり、小学生の時には、カブトムシやクワガタを山へ捕りにいったり、魚を川に獲りに行ったり、神社に蝉の羽化を見に行ったりと、よく友達と遊んだものです。春にはつくしを収穫して佃煮を食べたり、イナゴも佃煮にして食べたこともありました。学校の課外授業では、田植えや近隣の山にハイキングに行ったり、当時は自然を身近に感じることが当たり前でした。
失われていく農地・離農
あれから約半世紀、日本人の米離れの影響もあってか、今では田んぼの面積はみるみる減少し、代りにマンションや家が立ち並ぶようになりました。きれいだった川も護岸工事が進められ、有名だった「れんげ米」の田んぼも開発計画の候補地になっています。少子高齢化で減少した人口を、田んぼや畑を居住地に変えることで外から人を呼び込み、人口の増加を図ろうと考えたのです。
農水省の発表では、農地面積の減少に歯止めがかからず、2020年現在で荒廃化などによる減少が1年間で3万3千ヘクタールと発表がありました。これを大阪府の面積(約19万ヘクタール)で考えると、このまま減少スピードが衰えなければ、たったの6年で大阪府の面積に相当する農地が消滅することになります。また、主な仕事が農業の農家数も5年前と比べて約40万人減って136万人にまで減少しているとありますので、離農する農家のスピードに担い手の増加が追いついていないということになります。
そのような状況の中で、私の住む町のように都市開発で農地が失われていくことは、自分たちの食の未来を脅かすことにつながると思います。特に深刻なのは、中山間地の米づくりです。よつ葉とお付き合いのある中山間地の産地では、そのような世の中の趨勢に対して、少しでもその流れを食い止めたいと、日々米づくりに取り組んでいます。
「お米の担い手促進プロジェクト」
高知県の米農家は、高齢化により離農した農家の耕作放棄地が年々増加するのを目の当たりにして、仕事を辞めて実家の米づくりを引き継ぎました。近隣の耕作放棄地を引き受けて、無農薬の米づくりで再生させようと取り組んでいます。
彼が引き受けた耕作放棄地は荒れ放題で、背丈以上のヨシがたくさん生い茂り、圃場整備もされていない土地を開墾し、地力を高めて田んぼへ再生させるのに5年ほど必要としました。今も可能な限り引き受けていますが、一人が引き受けられる広さには限界があるため、まだまだ耕作放棄地がとり残されています。
私たちよつ葉が地場と呼んでいる地域の一つに、大阪府能勢町の北摂協同農場があります。高齢化による離農が進み、それらの農地を他の農家が引き受けるため、一人の耕作する面積が増加傾向にあります。耕作面積の増加は全国的な傾向ですが、中山間地は平地と違い、田んぼの法面は急斜面が多く、除草作業が重労働なのに加え、圃場整備もされていないので田んぼを引き受けるのも容易ではありません。
そこで、都会の消費者に米づくりの大切さを伝えたい、また、今後の担い手になってもらいたいと、能勢の米農家と一緒に「お米の担い手促進プロジェクト」を立ち上げ、今年からスタートしました。消費者が主体となって農家とマンツーマンで米づくりに挑戦します。
命の循環の営み
田んぼには、田植えの時期になると、トンボやカエルなどの生き物が水辺を求めてたくさんやってきます。
育った稲の葉の露が蒸発して雨雲となり、夏の雨の恵みをもたらしてくれることもわかってきました。稲刈りが終わったあとの田んぼに白鳥や雁がやってきて、落ち穂を食べに飛んできます。そんな水鳥が越冬しやすいように、冬の間に水をためる「冬水田んぼ」をする農家もいます。
田んぼには、自然環境への恩恵だけでなく、命の循環の営みがあります。そして何より、私たちは田んぼで育まれたお米という種をいただくことで、命をつないでいます。
それらのことだけみても、米づくりの問題は農家だけが考えればいいということにはならないと思っています。私たち都会の消費者自身の問題でもあるということを理解し、これから先は農家と一緒に歩むことが、私たちの食の未来を豊かにすることへつながると思います。
だからといって、いきなり米づくりを担えるわけでもありませんので、まずは食べることで米づくりを応援し、除草作業など、自分にできることから行動することで、これから先へつなげていきたいと思います。
(よつば農産 横井隆之)
能勢・塚原さんの田んぼで
Copyright © 関西よつ葉連絡会 2005 All Rights Reserved.