『《地球・子供・家》の危機』
~SDGs時代の「住まい」を考える~
釜中 明【著】 東洋出版 2021年4月 246ページ 1760円(税込み)
注文番号:45018
[いい家塾]主宰の釜中明氏が4冊目となる著書を出版されました。住まいを主テーマに、精力的に活動し、提言を続ける氏にまずなにより敬服します。
新刊書の題は『《地球・子供・家》の危機 SDGs時代の「住まい」を考える』。
話題は住まいのことから、社会、地球的な規模の事柄にまで及びます。それらの課題はお互いに関連し、危機的な状態を呈するまでになっています。病根の根は深く、歴史的に形成されてきたもので、今では修復不可能なレベルまでになっている、とさえ思われるものです。生活と密接な、住まい、食の環境から、社会環境、地球・自然環境の悪化などなど。深刻な問題がどんどん膨らむばかりです。
一言でいえば、持続不能な石油文明がもたらしたものと言えます。安価な石油を土台に人々の暮らし方は一変し、生活価値観も大きく変わりました。今、その土台が揺らいでいるのです。持続不可能な土台の上に構築された暮らし方は、いつかは壊れるのです。
危機を口にする政治家・企業人は増えていますが、それに対する処方箋は危機の先送りといった類のものです。石油の変わりの代替エネルギーを求める動きは急ですが、どれをとっても持続的なものとは程遠いように思えます。増え続けるエネルギー消費を減らすことが肝要なのでしょうが、見かけ倒しの「省エネ」が多く、本気度は感じられません。社会が自ら進んでそのような方向へ舵を切らないとしたら、コロナ禍の如く、降ってわいた「災禍」のような形で危機は現実になるのでしょうか。
一人ひとりにできることは知れたことでしょうが、将来は? 持続可能な社会の在り方とは? もっと真剣に考えることはできます。一昔前の暮らし方に学ぶことも重要です。その時代から学ぶことは多いと常々思っています。
そんな現在の状況の中で〝住まい〟を根本から見つめ直す、考えるためのヒント、アドバイスが込められた著作です。一所懸命な釜中氏の熱意が伝わってきます。ぜひ、特に家の購入を考えている方には、ご一読をお勧めします。
(鈴木伸明)
<いい家塾>25期生募集!
原子力災害考証館 furusato
〒972-8321福島県いわき市常磐湯本町三函208 電話:0246-43-2191
評者:下前幸一(地域・アソシエーション研究所)
先日、地域・アソシエーション研究所の取材で、福島を訪問しました。東日本大震災と東京電力福島原発事故から10年。良くも悪くも10年という時間の堆積の中で何が変わり、なにが変わらなかったのか。何を私たちは記憶し、考え、語り、そして伝えなければならないのか。問いかけは重く深く鳴り響いているのだと思います。それをどう受け止め、あるいは耳をふさぐのか、今を生きる一人ひとりに問われているのかもしれません。
双葉町の避難指示が解除されたばかりの区域に昨年9月、「東日本大震災・原子力災害伝承館」が開館しました。国の予算53億円を使った福島県の立派な施設ですが、原子力災害について東京電力や国・県の責任を問うという視点が見られず、語り部にも自粛を要請するなど、特に被災当事者たちからの批判にさらされています。批判を受けて少しずつ展示内容などが見直されているようですが…。
一方で、民間の取り組みとして3月12日に、いわき市の旅館「古滝屋」に「原子力災害考証館 furusato」がオープンしました。水俣の「水俣病歴史考証館」からもお手本として学んだそうです。官製の伝承館に比べると規模は小さいですが、公的な施設では触れられていない事実を展示することを目指しています。館長の里見喜生さんは震災時、障害児たちの居場所づくりに奔走し、「未来の子どもたちのために私たちは腐葉土になろう」とNPO「ふよう土2100」を立ち上げ、また東日本大震災の教訓を伝える「3・11メモリアルネットワーク」の理事としても活躍されています。
現在の企画展のひとつは大熊町で津波によって連れ合いと父上と娘さん(次女)を亡くされた木村紀夫さん。放射能汚染のために捜索は阻まれ、ようやく2016年に見つけた夕凪(ゆうな)ちゃんの遺品のマフラーとランドセルが展示されています。木村さんの自宅は中間貯蔵施設の敷地内にありますが、国の買収交渉には応じていないそうです。
考証館はまだまだ始まったばかりですが、原子力災害をできる限り体系的に整理すること、被害の克服に向けた草の根の取り組みをアーカイブすることを展示のポイントにしているということです。スタッフの西嶋香織さんと鈴木亮さんは4年まえに避難指示が解除された富岡町在住で、双葉郡における地域活動の支援、情報交流の活動をしています。考証館は閉じられた場ではなく、そこからさまざまな人たち、活動へとつながっていける場であろうとしているように思います。
考証館を訪問して、福島のもう一つの顔に出会った気がしました。
福島原発事故から10年 各地で集会
原発のない社会を
肌寒い曇天の下でしたが円山公園野外音楽堂には1000人ほどが集まり、「脱原発、再稼働反対、福島原発事故を忘れるな」との想いを新たにしました。
集会では、福島原発告訴団団長の武藤類子さんが、原発事故から10年を迎えた福島の現状を報告されました。東電旧経営陣や国が相手の刑事裁判、依然として危険な福島第一原発、汚染土再利用の動き、小児甲状腺がんをめぐる問題、震災・原発事故に関する伝承、原子力勢力の復活など、いずれも現在の出来事です。政府の言う「復興」など事態の一面でしかないことがよく分かります。
この10年で、何が変わったのでしょうか。原発事故の真相はいまだに解明されたとは言えません。事故の責任者たちの刑事責任も問われていません。原発は再稼働されてしまいました。集会の参加者はかつてとは比べものになりません。私自身、何かしらの後ろめたさを感じるのも事実です。
でも、それだけではありません。原発が人間の手に負えないシロモノであることは、多くの人々の脳裏に刻み込まれています。安全基準も確実に厳しくなり、かつてのように簡単には稼働できなくなりました。司法の場でも運転差し止めを命じる判決が出るようになりました。確実に変わってもいるのです。
この変化をさらに後押しし、原発などなくとも暮らせる世の中へ、それが現役世代の責任だ。コロナ禍で無言を余儀なくされる中、そんなことを考えつつ京都市役所までデモを終えました。
(山口協 地域・アソシエーション研究所)
京都集会
東日本の大震災から10年となる3・11を前にエルおおさかで集会が開かれ約550人が参加した。講演をした福島原発告訴団団長の武藤類子さん(本誌3月号に執筆)は、「重い十年だった」という言葉から講演を始めた。ニュースなどを観ても3・11以降、復興がどれほど進んで、どれだけのものが進んでいないのか。また現在、どんなことが福島で起きているのか、知らされる機会は少なく、自分の手で意識的にそのような本や掘りさげた新聞記事などを探していかないと表面的な情報だけで、知ったつもりになってしまう。見えないものはないものとして10年間を過ごしてきたようにも思う。
武藤さんの講演ではいま、福島で起きている問題の紹介があった。詳しくは『よつばつうしん』3月号を見ていただきたいが、告訴団団長として不当な裁判結果もあるなかで裁判が解明してきたことなどの期待を投げかけて元福井地方裁判所裁判官の樋口英明さんに講演のバトンを渡した。
樋口さんの講演は『私が大飯原発を止めた理由』と題して「極めて危険だから止めた」と話した。<危険>とは①事故発生率②被害の大きさの2つからなるとして、原発は両方の意味で大変危険と原発の危険性を改めて詳しく説明してくれた。
集会のあとは天神橋から西梅田までの1時間ほどの行進をした。コロナ禍で大きな声は控えてのアピールだったが、10年を節目にした意味のある集会であった。
(矢板進 京滋産直)
大阪集会
3月20日(土)福井県大飯郡高浜町で行われた「老朽原発動かすな!高浜全国集会」に、よつ葉の仲間総勢8人で参加しました。福島第一原発の事故後、原発の経年劣化対策として、稼働から40年以上経過した原子炉を動かさない「40年ルール」が導入されましたが、現在の法律では原子力規制委員会の認可を受ければ、最長20年の範囲内で一度だけ延長できることになっています。既に町長が再稼働に同意した高浜町の高浜原発において1、2号機が稼働すれば、国内で初めて40年を超えた原発が動くこととなり、これから続々と出てくる40年越え老朽原発の動向に大きな影響を与えます。これを止めることができるかどうかが大きな分水嶺となるという状況を受け、集会とデモ行進には400名近い人が全国から集まりました。
先日、市民団体から送られてきた冊子に、劣化ウラン弾による被ばくの影響を受けた子どもたちの写真が掲載されていました。劣化ウラン弾は、原発の燃料として使うためにウランを濃縮させる工程で出る残渣を利用しており、高い貫通力を持つだけでなく、内部被ばくを引き起こす最悪の兵器です。何年も前に映像で初めて観たのですが、それによって被害を受けた赤ちゃんや子どもたちの姿だけで、どんな条件であれ原発はいらない、「核」はいらないと思わずにはいられません。
集会の直前に、使用済み燃料の中間貯蔵施設候補地が未定なことを理由に、福井県議会は再稼働の議論を断念しましたし、同じく老朽化が進む東海第二原発も、避難計画が不全なため再稼働を認めない旨の判決が、水戸地裁によって出されました。とても喜ばしいことなのですが、燃料の置き場所や避難計画どころの話ではないのです。そもそも、そんな事が問題になるようなものは、速やかに捨て去るべきなのです。
(松原竜生 連絡会事務局)
大阪集会
Copyright © 関西よつ葉連絡会 2005 All Rights Reserved.