
「これからのよつ葉」を語ろう
『Life』2021年30号から続く
あけましておめでとうございます。本年はよつ葉にとって世代交代の年となります。そこでこれからのよつ葉を担っていく世代による新春座談会を企画しました。座談会の様子は、すでにカタログ『ライフ』30号表紙でお伝えしましたが、本紙ではさらに詳しくその内容をご紹介します。新たなステップを踏み出すよつ葉をどうぞよろしくお願いします。

2020年9月30日、よつ葉ビル5F会議室で 左から
高木俊太郎さん(よつ葉のパン工場「パラダイスアンドランチ」代表)
河野鈴鹿さん(奈良産直会員 伊賀で野菜料理教室「はなのうてな」を主宰)
松原竜生さん(大阪産地直送センター代表/関西よつ葉連絡会次期事務局長)
安原貴美代さん(大阪・能勢で地場野菜を生産・集荷「北摂協同農場」代表)
人との出会いをつながりに
松尾(司会) よつ葉は、新しい年を連絡会の代表と事務局長の世代交代とともに迎えることになり、新たな一歩を踏み出そうとしています。そこで、これから私たちは何をしていくのか、よつ葉をどうしていきたいのかという話を、それぞれの立場からしていただけたらと思っています。
まず松原さん、次期事務局長として、どういうところを大切にしたいとか、どういうところを変えていきたいとか、イメージしていることはありますか。

司会の松尾章子さん(ひこばえ企画部(左)
と和田玲美さん(ひこばえ制作部)
松原 よつ葉のいいところとして、例えば病気をしても、その後も形を変えて違う仕事や場所を提供できていたりとか、これができないからダメって一般の会社みたいに切り捨てるんじゃなくて「じゃあこっちをやって」みたいなところが確かにあって、それは大切にしていきたいです。でも人は自分たちの意識の外には気づきにくいもので、ぼくらもいろんな面で排除の論理というか、知らず知らずのうちに排除してしまっている部分があると思います。
これからは、たまたま出会った人にどれだけうまくフィットしてもらえるか、うまく力になってもらえるかっていうように、仕組みや関係のあり方を、具体的な業務を含めて柔軟に変えていけるような力を身につけたいと思います。
つながりに励まされて
安原 コロナの影響で能勢地域でも林間学校やイチゴ狩りなどさまざまなイベントが中止になりましたが、芋掘りは実施しました。いつもはリピーターが多くて「あっ、お兄ちゃんになったね」という感じなのですが、今回は初めての方が多くて新たな出会いがたくさんありました。
ところがこちらの見立てが悪くて9月で終わってしまったんです。メールで「すいません中止です。芋無くなりました」って連絡するときに「さぞかし怒ってるやろな、がっかりしてるやろな」と思うんですが、返信メールがあたたかくて、「暑くて大変でしたね」とか、「来年楽しみにしてるので頑張ってください」とか優しいんですよ。
仕事をする中で、ちょっと失敗しても受け皿を作ってくれるとか、やり直しをさせてくれるというところもあって、よつ葉は優しいなと思うんですけど、会員さんのメールも優しくて、そんなやりとりに励まされたり、温かさを感じたりします。
高木 よつ葉の生産会議(工場・農場の会議)っていうのがあって、その座長を3年しています。そこが主体になって生産現場の各社で取り組んでいる工場CLUBでは、よつ葉の生産工場(よつ葉のPBって呼んでいます)が、それぞれ会員さん10名ぐらいを募って、半年ぐらいかけて交流して、作業体験もしてもらって、いいところだけじゃなくて裏側まできっちり見てもらおうということでやってきました。
そこでは、すごく密度の濃い交流ができています。家族に来てもらったりするので、その後にもつながる出会いがたくさんありました。お店に来てもらったりとか、別のイベントで会ったりとか。
昨年はそんな交流の機会を設定することが難しかったわけですが、ふれあいを持てるような場はやはり欲しいと思うし、どういう形でならできるか、いろいろ考えることができた一年でもあったので、来年は楽しみかなと思っています。

優しさが好きで続いています
河野 私がよつ葉会員を長く続けているのは、優しさみたいなものが常に感じられるっていうことが大きいです。人間味があるって言うか。それが商品からもカタログからもいろんなイベントからも伝わってきます。食品の安全性というところだけで判断するという選び方もあるとは思いますが、私はよつ葉さんのそんなところに、親しみやすさというか、愛を感じるわけですよ。それが好きで続いているなと思っています。
個人的な要望としては、ヴィーガン表示をしてほしいです。アレルゲン表示はされていますけど、もう一つ完全植物性のみで作られているという表示を検討してもらえないでしょうか。
安原 河野さんの要望からは離れますが、会員さんの要望として有機農産物、オーガニックを望む方が多いんです。でもいまの農家の平均年齢はすごく高くて、有機認証を取得するにはある程度の経済力も必要ですし、なかなか難しいんです。宅配業者のなかには認証を得たものばかり扱っているところもあるんですけど、そうするといま頑張ってはる農家をどんどん切り捨てていかなくちゃいけなくなります。認証がなければうちは貰いませんよっていうようなところにはしたくないと思っています。
ですから、新規就農者を含めて農家をどう育てていくか、どれだけ長くやってもらうかということを推進していきたいんです。そうするためにはできない人をどうフォローしていくか、一緒にやっていくかということがすごく大事になってくるのですが、なかなか道のりが遠くて。

安原さん
目先の効率では幸せになれない
松原 いまの社会は効率にとてもこだわるけど、目先の効率だけを考えていて大きな観点で見ると非効率なことをしてますよね。有機認証の書類もそうですけど、そこに力をかけると誰かが管理をしやすくなるかもしれないけど、そんな時間があったらもっと野菜の顔を見たら、みたいな。まごうことなくちゃんと農薬を使わずに作ってる農家さんが淘汰されていくみたいなことになっていて、すごく非効率というか不合理だと思います。
2050年には海の魚の量よりも海の中のプラスチックの量が多くなると言われています。プラスチックは確かに便利だし、ぼくらもなかなかそこから抜け出せないのですが、大きく言えばすごく非効率です。魚も安心して食べられなくなる社会になってしまう。
これからは目先の効率だけじゃなくて、大きいところの効率というか、何が自分たちにとって幸せなのかとか、ちゃんと考えないといけないと思います。そこを考えないでなんとなく流されている幸せや豊かさみたいなことの結果が、毎年起こる災害とか今回のコロナで浮き彫りになっているんじゃないかな。

松原さん
職人仕事にこだわって
高木 その目先の効率っていうことですけど、どうしても世の中が大量生産で効率化してみたいな感じで、パン業界も全体としてそうなっています。そういう流れが嫌だなって思うのは、職人の技術が重視されなくなっているからです。ぼくらみたいに一個一個手でつくっていたら、一個一個形も違うのですが、そういう違いがなかなか伝わらなくなっている。よつ葉の中ではかろうじて伝わっている部分もあるとは思うんですけど。
河野 よつ葉で買うものはどれもおいしいって家族も言ってます。家族は外でも食べたりしますよね。あーっ、やっぱりお家で食べるよつ葉のはおいしいなっていつも言っているんですよ。味に出てると思います。手をかけてるということが。食べたら分かるという感じですね。
安原 カタログでも、どんなふうに手をかけているのかいろんな事を伝えてくれていますしね。そういうところを会員さんはよく読んでくれているなと思います。
もうひとつ、配送員が直接会員さんに伝えてくれていることが大きいと思います。配送員は私たちの畑に援農に来てくれて、農業の大変さを体験してくれるんですけど、それをきちんと会員さんにも伝えてくれて、会員さんがそれを理解してくれて、じゃあ頑張って買って応援するわねという形になるのは、自社配送だからだと思います。宅配便に頼むのではではなくて、自社配送にこだわることで、生の声でうまくつなげてくれます。

高木さん(左)と河野さん
もっと遠くまで届く言葉を
河野 とにかく双方向で。そこがいいですね。ほんものの味を一人でも多くの人に知ってほしいと私も料理教室などを通してできることをやっているし、よつ葉さんにもそうあり続けていただきたいと思っています。そのためには想いがもっと熱く出ててもいいかなって感じます。暑苦しいくらいに熱があふれているカタログがあってもいいと思うんですよ。
松原 味覚ってすごくパーソナルなものだから、「ほんものの味」も強制されるものではないんですけど、かと言って人それぞれでいいんだよと言えないような問題でもありますよね。ぼくらはぼくらの立場から絶対こっちなんやと伝える強さ、熱さもいるかなと思います。個人的なものだからどうぞご自由にという側面はあるんですけど、一方では社会のあり方に規定されているわけですから。
もう一つは、会員さんとも一緒になって、食べものとか生活があまりにも自分たちから遠くに離れてしまっていることとか、何が使われているか分からないような加工品とかじゃなくて、シンプルに自分たちが分かるようにするとか、そういうことを変えていく努力を双方でしていかないといけないと思います。
そのとき、河野さんのようによつ葉のことをすごく分かってくださる方がいらっしゃるのは、もちろんありがたいですし、ぼくらの力だとも思うのですが、そこにあぐらをかいているようではどんどん劣化していくと思うのです。
ぼくらとは真逆の考え方の方もおられるわけですから、ぼくらが考えているような、よりましな社会にしようと思えば、そういう方との対話とか議論のほうがむしろ大事になるわけであって、予定調和的にフィットする人たちだけでハッピーみたいにはなりたくないなと。
難しくても少し遠い人にも届くような言葉とか表現とかあり方を作っていきたいなと。それは多分よつ葉を作ってきた上の世代の人たちもそうだったと思うし、ぼくらもそうであり続けないといけないなと思っています。
(まとめ・編集部)