
私たちはどこに向かおうとするのか
コロナが問う 暮らしのあり方
新型コロナウイルスは収束の気配をみせません。息の長い取り組みを覚悟しなければならないようです。当初は新規問い合わせと注文数の激増への対応に追われていたよつ葉でしたが、やっと少し落ち着いてきたところです。この事態は私たちに何を問いかけているのか、腰を据えて考えてみなければなりません。そこで、よつ葉の会員さん・生産者・職員に、それぞれの立場で何を感じ考えてきたのか書いていただきました。読者の皆さんが、自ら「ウィズ・コロナ」への指針を立てるための参考になれば幸いです。
(編集部・下村俊彦)
田舎暮らし 考えてみては
丹波ハピー農園・堀 悦雄
飽きっぽいマスコミはあまり騒がなくなりましたが、新型コロナウイルス症は一向に収まりません。
世の中では大変重大な影響を受けられた方が多いようですが、田舎暮らしの百姓にはあまり影響がありませんでした。
日頃から、安心して食べられる自分が育てたお米と野菜中心の食事、人に会わなくてもできる仕事、無駄なストレスもなく、昨秋岩手から来てくれた短角牛という赤牛と、この夏丹後から来てくれたヤギたちと楽しく暮らしています。
コロナが世界中に及ぼした影響と大きさを考えると、重労働でお金的には貧しくても私と家族にとっては自然農でなりわっている今の暮らしのありがたさが身に沁みます。
牛とヤギは、我が家のペットです。現在、牛4頭、ヤギ3頭で毎日の世話はありますが、家族の日常に楽しい刺激を与えてくれています。っと、表向きに言っていますが、近年どんどん酷くなる獣害対策のために田んぼの周りの里山に入り、せっせと野草を食べてシカやイノシシを田んぼから遠ざけてくれています。
コロナ感染はすぐに収まりそうもなく、その他の巨大災害の不安もある今が、時代の大きな転換点のようにも思います。こんな大変な時代だからこそ、四季の風を感じて生きられる田舎暮らしを考えてみられてはいかがだろうか。
ただし、百姓でなりわうのは重労働と大変な困難と貧乏を覚悟しなければならないでしょうから、しっかり覚悟を決めてからにしてください。
ぶっちゃけ、田舎暮らしはしんどいけど楽しいよ!

堀さんと「ペット」の牛
タブレットより大事なもの
池田産直・稲原 裕
新型コロナウイルスの発生と拡大は私たちの生活をわずか半年の間で一変させました。私たちの配達の現場でも、新規入会の問い合わせと日々の配達量が激増し、特に緊急事態宣言が出された頃は、毎日の業務をこなすのに追われた日々が続きました。
会員の皆さんも、学校の一斉休校や在宅ワーク、自粛要請でさまざまな影響を受けられていることと思います。
私たちが配達を担当する豊中市では、2月27日木曜の夜の安倍首相(当時)の一斉休校要請の記者会見を受けて、国からの正式要請を待たずして、即座に3月2日からの小中学校の休校が決まりました。中学三年生にとっては金曜日に登校したら、いきなり今日が中学校生活最後の日になり、泣きながら帰宅する生徒もいたようです。例えば、もう一日休校の日をずらして、生徒の心のケアをできていたらよかったのにと感じます。国から言われたことを何も考えずにそのまま右から左へ実行する、思考停止なこの決定にはすごく違和感があります。
また、自粛期間中に授業ができないということで、国からはタブレット端末の購入に自治体へ交付金が出されました。豊中市でも30億円ほどの予算をつけて行っていくそうです。これからの教育にこのようなものは必要だと思いますが、タブレットがあれば何でもできるような風潮はおかしいと思います。それを使いこなす環境が今の教育現場にあるのか? 教員の多忙化や長時間労働など教育現場ではさまざまな問題があります。タブレットも必要だとは思いますが、この莫大な予算を教員の増員、少人数学級の実現など、先に解決すべき課題がたくさんあるのではないでしょうか?
ウイルスの感染拡大を防ぐためには今までの生活を変える必要があることは分かります。SNSの普及などで、今は直接顔を合わせなくても、地球の裏側にいてもコミュニケーションが取れます。新型コロナウイルスの拡大で、日常生活や仕事でもこの動きは急速に進んでいます。新しいコミュニケーションの取り方は有効で必要なことだと思いますが、人と人の関係で一番大事なことを忘れてはいけないのではないかと思います。今一度、日常生活から見つめ直す必要があるのではないでしょうか。
(特集は2面につづく)

㈱産地直送センター(池田産直)の移動販売車「しゅんの助」と稲原さん(コロナ前のイベントで)