「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」
免疫について書かれた本ではないのですが、免疫についてすごく有益なことを教えてもらいました。丸山優二・NHKスペシャル「人体」取材班著『人体 神秘の巨大ネットワーク 臓器たちは語り合う』です。
この本の第5章・腸では、臓器としての腸よりもどちらかというと、腸内フローラ(腸内細菌叢)についてページが割かれています。「腸は細菌たちを養い、人体のネットワークに参加させている、特別な臓器なのです」(134ページ)。そしてこの腸内フローラが私たちの免疫機構と密接な関係があることが分かってきたそうです。腸には全身の免疫細胞(白血球)の7割が集まっています。外界から取り込まれる細菌やウイルスは呼吸器系か消化器系かのどちらかですから、腸や胃、ノドの粘膜が免疫の最前線になります。しかも、腸内フローラが免疫細胞の訓練の場になっていて、ここで鍛えられた免疫細胞たちが血管を通じて全身に送られます。糖尿病や高脂血症などは血管の病気で、毛細血管がボロボロになりますが、免疫細胞が思うように現場に届いていないためにコロナウイルスにやられている可能性があります。
また、最近は花粉症やアトピー性皮膚炎などアレルギー疾患が増えています。さらにアベ首相も罹っている潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患も増えています。いずれも本来は排除する必要のない花粉や卵などを攻撃する免疫の「暴走」と言えます。自己免疫疾患は自分の臓器を攻撃するのですから実に厄介です。この免疫の暴走にも腸内フローラが関わっています。
最近、免疫細胞に攻撃をやめさせる「制御性T細胞」が発見され、このなだめ役がやはり腸内フローラと密接な関係があります。攻撃の司令官をつとめるヘルパーT細胞とこの制御性T細胞は兄弟の関係でどちらもナイーブT細胞から分化するのですが、この時にある種の腸内細菌がからんでいて、マウスに食物繊維の多い食事を与えると制御性T細胞が増えて、免疫の暴走がなくなります。
野菜が大事なことが分かりました。もうひとつ、発酵食品については以前から免疫を高めることが言われてきました。乳酸菌やビフィズス菌はもちろんのこと、忘れてはならないのは、みそもしょう油も発酵食品ですし、納豆も漬け物もそうです。毎朝の具だくさんのみそ汁は食物繊維と発酵食品の宝庫で、免疫力を高めます。しかもダシを取る花かつおや厚削りもまた発酵食品です。
コロナ禍で地球温暖化問題が後景化しているのが気になっています。一昨年関西を襲った台風21号。マンションだからと油断していたところ暴風雨でベランダの隣家との重い仕切板が宙を舞い飛び、豪雨でドアの溝まで浸水、ガラス戸が突き破られるかと震えた恐怖の一日でした。昨年は関東方面。私も地球の温暖化がこの2年でやっと「自分ごと」になったばかりです。
そんな折、「気候クライシス」というTV番組を見る機会がありました。世界195カ国の科学者たちでつくるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)がまとめた特別報告書からの警告を伝える内容でした。温暖化によりハワイやカリフォルニアの山火事で民家が焼失、グリーンランドや南極で氷が溶解、ベネチアの高潮被害、日本でも未曾有の巨大台風被害。毎年住む家や暮らしを奪われる人が確実に増えています。
「人々の暮らしあってこその経済成長」のはず。便利な生活の中で使い捨てられるプラスチック製品・ポリ袋などは燃焼によってだけでなく、自然界で劣化する過程でもメタンガスなど温暖化の要因をつくっていることが分かってきたのだとか。反省後の私たちがやるべき環境ケア。「自然をこれ以上壊さない」微力でも日常的な行動を一つ一つ積み重ねていきたいと思います。
(ひこばえ・下村純子)
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2020年9月 関西よつ葉連絡会
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