「よつばの学校」全職員向け講座 参加者感想文から
日本の畜産の現状と安心・安全な食べものとは
お話・寺本陽一郎さん(能勢農場)
畜産を通して、日本や世界の情勢も勉強することができました。その中で戦後に大きく畜産が変わり、牛肉の大量生産が必要になってただ肥らせるだけを目的にしてきたこと、自然環境まで変わっていったことはその時代の必然だったとはいえ、いまこそ社会全体で考え直さなければいけないと思います。しかし、現実にはなかなか難しいことだとも理解できます。
体が大きく、サシが多い牛にするために、病気に追いやるような育て方が一般的に行われ、牛が歩いて屠場に入ればOKとさえ言われるという話は驚きでした。そういうことも結局は消費者が安くておいしいものを求め過ぎというところが大本で、弊害は畜産以外のすべての食べものに言えることです。教育、医療、福祉には市場原理を入れるべきではないという話を聞いたことがありますが、食に関してもそれが言えるのではないでしょうか。
国が示す基準だけでは安心・安全は担保されないというのは、本当にそう思います。何かあってからはじめて中止するなど、日本は欧米に比べて「問題がおきなければ安全」とされる傾向があり、改めるべきです。翻って自分にできることは身近な人に伝えつつ、倫理観を持ちつづけて仕事をすることかな、と考えさせられました。
(淀川産直・稗田健彦)

職員研修として実施している「よつばの学校」全職員向け講座。
毎年4月に開校してきましたが、今年度は新型コロナ感染拡大のため、
7月が第1回目となりました。講師は能勢農場の寺本陽一郎さんにお願いしました。
7月10日(金)、茨木市福祉文化会館。

何が楽しい? 誹謗中傷
みなさん、こんにちは。大阪産直の久米です。コロナはまだまだ明けそうにありませんね。毎日のように関連ニュースが流れています。その中に、唯一感染者がでていなかった岩手県で、初の感染者がでた会社に文句や誹謗中傷の電話やメールが殺到しているという報道がありました。
福島原発の事故の時もそうですが、なぜ差別的な発言や、人を誹謗中傷するようなことを平気で言ったりするのでしょうか? SNSで顔も名前も出さず、平気で人を叩き、大事になってきたら削除して逃げる。何が楽しいんですかね?
そもそも原発事故にしろ、コロナにしろ、元はといえば人間が今まで利益優先で好き勝手してきたことが原因なんじゃないかと思います。その根本の問題に目を向けず、目先の人をいじめるようなことをしても何も解決しないですよね? 心無い発言に腹立たしい気持ちになるのですが、誹謗中傷する人たちも、この生きづらい世の中でのストレスや、社会が抱える問題のひとつの現れなのかもしれません。誹謗中傷は許せることではありませんが、みんながこの世の中の犠牲者なのでは、とも思います。
僕は電車通勤をしているのですが、行きも帰りも車内は僕も含め全員マスク姿です。そんな異様な光景の中、誰かが咳払いをすればジロリと睨みつけ、せき込んだりしようものなら、睨みながらその人から離れていきます。コロナ前までは誰が何をしていても無関心の人が多かったのに…。これが人の防衛本能なのでしょうか?(笑)
いろいろ混乱したりすることが続いていますが、みんなで協力して乗り越えていくしかないですよね。早くマスクをしなくてもいい日がくるようにみなさん頑張りましょう!
(大阪産直・久米公介)

『手の治癒力』
草思社文庫 2018年10月 188ページ 748円(税込)
評者:福井 浩(ひこばえ)
3年ほど前だったか、このコーナーに母が施設に入っていて1晩にナースコール100回…というようなことを書いたが、その母がこの6月に亡くなった。直接的な原因ではないけれど、間接的にはコロナによって面会が2カ月近くできなくなったり、施設でのいろいろな活動が大きく制限されたのが大きかったのでは、と感じている。
リモートだとかテレワークだとか、もてはやされているが、所詮は人間、動物である以上、生きる、死ぬ、というのはバーチャルな「体験」なんかではない。だから生き物としての人間の根源的な活動やコミュニケーションが滞ったり制限されるとき、最も弱い(敏感な)者たちは、その影響や被害を大きく受けるのではないだろうか。
そんなことを考えているときに(実際には亡くなる前だったが)、この本を読んだ。
「手当て」という言葉に象徴的なように、人間にとって「手を当てる」(人間以外の動物にとっては「舐める」)という行為は原初的な「癒やし」の動作であるようだ。世界の四大文明はそれぞれ手当ての技に磨きをかけ、それを医療に用いてきた。ヒポクラテス曰く、「医者たるものは医術についてのあらゆる学理とともに、マッサージも修得せよ」。
ところが、聴診器の発明以来、レントゲンや、あるいはさまざまな計測機器の発明と発展は、少しずつ医療者と患者との距離を引き離し、今ではいわゆる触診はほとんど行われなくなった。さらに看護においても「手を出さない看護」が主流である。しかし一方で、機器ではなく、実際に腕に触れて脈をとると、患者の心拍数は即座に下がり、そのリズムも安定することがあることは、明らかな事実である。
それは、まさに「気持ちの問題」で、人間の(だけじゃないかもしれないが)触覚は、心(脳)に大きく影響を与えているのである。例えば、触ったときの温かさ・冷たさ、すべすべ感・ざらざら感・べとべと感が、快・不快、安心・不安などの感情・感覚に結びつきやすいことは、実感として理解できる。あるいは、親子や恋人、さらにペットと飼い主が触れあったときに分泌される「絆ホルモン」=オキシトシンのことは、ここ数年でかなり有名になった。
人間は、言語や視覚より以前に、触覚で判断・理解し、脳(気持ち)をコントロールしている部分があるということ。それって、人と人との関係を大切にしたい私たちにとって、とても大切なことかもしれないな。