「よつ葉の地場野菜に関する消費者会員アンケート」集計結果報告
―生産者と消費者が学び合い育て合う仕組みとして
綱島洋之 (大阪市立大学)
●回答者の多くは口コミで入会、品質を評価
「よつ葉の地場野菜」のこれまでを振り返り今後を展望すべく,2017年春にスタートした地域・アソシエーション研究所の「よつ葉の地場野菜研究会」。多くの関係者の協力を得て,生産者と産直センター職員,そして消費者会員のみなさんにアンケート調査を実施してきました。中でも特に,消費者会員のみなさんには総勢226名もの方から回答をいただき,かなり規模が大きい調査となりました。この場を借りて感謝を申し上げるとともに,一部分ですが結果について簡単に報告したいと思います。
回答者の平均年齢は現在58歳,入会時42歳。会員歴の平均は15年,25年以上となると急に人数が少なくなります。主たる生計手段が年金,家族の稼ぎという方がそれぞれ34%,59%でした。産消提携運動は全国的に消費者側も高齢化が進んでいると言われていますが,よつ葉に関してはコンスタントに新しく会員になる方も少なくないことが分かります。
関西よつ葉連絡会を知ったきっかけについて「家族や知人から聞いて」が59%を占めました。会員になろうと決めた理由は,「商品の質が良さそうだから」79%,「宅配が便利だから」44%,「配送費が無料だから」28%。つまり口コミで「品質」と「宅配」が強調されていたということになります。回答者の多くは,特に野菜や果物を購入する際に,一般小売店や他の宅配・通販業者よりもよつ葉を利用しています。ふだん野菜や果物を購入するときに重視していることについて,アンケートでは皆さんに選択肢ごとに順位を付けるようお願いしました。上位3位は「旬のもの」「健康に良さそうなもの」「作りたい料理に必要なもの」でした。
●「地場野菜」支える人や理念にも共感
それでは「地場野菜」について。まず,産直関係者が気にしていたのは,宅配される野菜や果物のうちどれが「地場野菜」なのか,会員のみなさんが本当に把握しているのかどうかでしたが,84%の方が把握しているということでした。地場野菜を購入しているという方が,商品を選ぶにあたり重視していることは,第1位から順に「減農薬」60%,「無農薬」58%,「季節感」51%,「鮮度」43%と続きます。いかにも「よつ葉の地場野菜」らしいと言えます。一方で「見栄え」「荷姿」という選択肢を選んだ方がいずれもゼロであるという結果には,さすがに産直関係者も驚いていました。「こういう選択肢を選んではいけない」と回答者のみなさんに感じさせてしまう何かがあるのではないかというところが気になります。そういうものはないとしても,それはそれで,ひとつの課題が浮かび上がります。というのは,生産者アンケートでも出荷や作付けで何を重視しているかを質問したのですが,1~2割程度とは言え,「見栄え」「荷姿」にこだわりを持つ方がいました。考えてみれば,これらは生産者ひとりひとりの人柄や思想がにじみ出てくる場でもあるわけです。生産者と消費者がそれぞれのこだわりをお互いにすり合わせる余地が,どこかに残されているかも知れません。
地場野菜は,一般小売店で売られている物に比べて割高であると言われていますが,実際に消費者会員はどのように感じているのでしょうか。「納得できないくらいに割高である」7%,「そもそも値段が違うとは思わない」18%に対して,「品質が良いので納得できる」70%,「生産者を支えるためなら納得できる」45%。値段は割高だがそれなりの価値があると考えている方が多くおられます。どのような点で品質が良いのかを分類したところ,「安全・安心」が77%,「おいしい」が48%,「新鮮」が26%,「無農薬・無化学肥料」が12%となりました。「安全・安心」が消費者の最大の関心事であり,なおかつ満足していることが分かります。実は最も多くの生産者が重視しているポイントが「おいしいものを出品する」ことだったのですが,これもある程度は消費者からも評価されているようです。
そして,現在会員を続けている理由ですが,やはり「商品の質が良いから」が78%で断トツでした。しかし,先に述べた「会員になった理由」と比較すると,もうひとつ興味深い事実が浮かび上がります。「配送員が信頼できるから」が圧倒的な伸びを見せ,「有機農業を支えたいから」「理念に共感しているから」が次いでいます。回答者のみなさんが商品の質を重視し続けつつも,日々接する配送員たちの働きぶりや,あるいは商品の背景にあるものをも評価するようになっていることが伺えます。
●クレームきっかけに生・消が育て合う
商品に不満がある時の対応についても質問しました。カタログに掲載されている写真と実際に届いたものが違うと感じる頻度は,45%が「全くない」,しかし32%が「数カ月に1回くらいある」そうです。そういうとき,「よつば農産や産直センターにクレームをつける」「配送員にクレームをつける」がそれぞれ24%,26%。そして,ここが重要なところなのですが,クレームを付ける理由として最も多かったのが「お互いのためになるから」です。クレームを受ける立場にストレスがかかることは否定できませんが,それでも配送・事務担当者の実に62%が「よつば農産や生産者に伝えるべき貴重な情報源」として受け止めているということは,特筆に値します。むしろ,消費者がクレームをつけずに我慢して次から買わなくなることが,一番怖いという意見も出ました。
「クレーム」という表現にいい印象を持つ人は少ないかも知れませんが,消費者の感想をよつば農産や産直センター,ひいては生産者にフィードバックしたり,それをきっかけに配送・事務担当者が地場野菜について消費者に丁寧に説明したりする手段として,むしろポジティブな意味で機能しています。私も野菜を作って売る経験をしたことがあるのですが,やはり「こんな出来映えの物を売っていいのか」と悩むことは多々ありました。そんなときに消費する立場からコメントをもらえると勉強になります。よつば農産や各産直センターを仲立ちとして,生産者と消費者が育て合うような気長な関係が築かれています。このことは将来の生産者と消費者に向けてアピールする価値が十分あると私は思います。
以上の結果について、開かれた場所で議論を深めるために、下記のとおり成果報告会を開催することになりました。会員の皆さんのご参加をお待ちしております。
地場野菜研究会報告会
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