もう40年近く前になると思うのですが、その日は和歌山電子農法研究会の生産者の皆さんと会員さんの交流会で広川町にいました。みかん畑の見学をすませ、海辺で昼食交流会をしてお開きになった時、同行していた川西産直(当時)の前迫くんから「これから芦浜原発の候補地の錦港へ行こう」と誘われました。新聞で現地に反対する会ができたとの記事を見たので連絡してあるとのことです。唐突でしたが反原発は非常に大事な課題だと思っていたので一緒に行くことにしました。
紀伊半島を一周している国道42号を広川町から潮岬を経て錦港まで走りました。まだ明るいうちに紀伊長島から錦港へ入る峠のドライブインに到着し、反対する会の阪口さんと会いました。この時、阪口さんが「自分は内陸部の人間だから、鮮魚の産直の話には漁師で原発に反対しているこの男が適任だろう」と阪口和郎さんを連れてきてくれていて紹介してくれました。
その後は川西産直代表(当時)の津田政己さんが改めて錦まで行って阪口和郎さんとの間で鮮魚の産直の話を詰めてくれました。同時に浜に2軒あった加工業者のうち、糸銀さんに保存料を使わない塩干物を作ってもらって冷凍で出荷してもらう話もまとまり、鮮魚と塩干物の産直がスタートしました。
早朝の漁でとれたイカやアジなどを阪口さんがセリで買いとり、保冷箱に箱詰めし、それをこちらの保冷庫に積み込んでトンボ帰りし、お昼過ぎには大阪へ到着し、各産直の車に積み分けて配達しました。とれたてのイカが白色ではなくて茶色をしているのを初めて知り、感激しました。
鮮魚の産直は私たちのアイデアではありません。能登半島に原発計画が立ち上がった時、地元の西海漁協の組合長が各地の消費者団体に「鮮魚の産直で反原発の支援を」と呼びかけ、なるほどこんなやり方があるんだと、私たちも2回ぐらい参加しました。
錦漁協は残念ながら、どちらかというと漁業権放棄に傾いていました。50万kWの原発は150万kWの熱を出して、それを温排水にして流します。いわば巨大な湯沸かし器が浜辺にできるわけですから、周囲の漁業権を放棄してもらわなければなりません。でも、漁業権は組合員のひとりでも反対すれば放棄できません。たったひとりで反対していた阪口和郎さんに私たちは出会うことができました。
~きららの看護付小規模多機能ホームが始まります~
この4月からきららの看護付小規模多機能ホーム〈略して・看多機ホーム〉が始まります。長年待ちに待った施設です。新施設建設が決まった瞬間は忘れもしない一昨年のお餅つきの最中。12月27日のお昼前でした。べったんべったんと石臼を搗いてるところへ郵便局のバイクが到着。市役所からの手紙が届きました。
「皆さん、とうとう、新しいきららの施設ができますよ」「おおー」と100人近い参加者がどよめきました。隣り合う人々が思わず抱き合わんばかりの喜びようです。「これだけきらら利用希望者がいると言うのに、今のきららでは狭すぎる」と嘆願状をしたため、市長さんに直訴に及んだ98歳の阪本先生はつきたてのお餅を前に感涙でした。最初の計画からなんと6年かかりました。
~みのり豊かな高齢期を~
日本の高齢者人口は2025年には30.0%となり、2040年には35.3%になると見込まれています。そんな高齢社会を目前にきららは2001年のNPO法人開始時から人生の晩年を人間らしい尊厳を持って生きられるよう願って活動してきました。
当時の高齢者施設や病院では閉じ込めたり寝かせっきりの介護が当たり前。そんな時代にきららの家を訪れた人たちは観音開きに開かれた玄関の扉に誰もが驚いたものです。毎日の戸外の散歩で歩く力を維持し、それぞれの利用者の力や関心に合わせた仕事や活動を作り出してきました。何よりも利用者同士の助け合いや関わりを大切にしてきました。介護が必要な人も畑に立ち作物を作る。楽器を演奏したり、料理やお菓子を作る。どれも自分が楽しいとともに傍の人の喜ぶ様子がうれしいから。社会の中に居場所があり、仲間たちから認められ「ありがとう」「すごいね」と褒められること。それがきららの「介護」としてその人の生きがいや尊厳を守ってきました。
新施設は18人定員のグループホームを併設する看多機ホームです。長時間でも短時間でも利用可能な通いの場で、お泊りもできます。自宅へヘルパーや看護師が訪問できます。病院から自宅に安心して帰れ、また、自宅で最後まで自分らしく暮らすことが可能です。
ますます医療費や介護費用の膨らむ中、高齢者自身や家族の安心を守るとともに地域や社会の課題解決の一翼を担ってまいります。
ご寄付のお願い
きらら一同
振込先 郵便口座 00970-8-164293
社会福祉法人きらら美桜紅葉舎
よくできているなあと思う漢字の一つに「息」という字があります。イライラしたり怒っている時は短く浅い呼吸。穏やかにリラックスしている時は長く深い呼吸。まさに「息は自らの心の状態」を表しているように思います。
自分がしている呼吸に気づけたら、心や感情をコントロールすることができます。例えば、緊張している時の呼吸は浅くなっていますが、吐く息を長くすれば、少し落ち着いてきます。また、人前で話す時に緊張していると早口になってきますが、ゆっくり話すようにすると緊張がゆるんできます。「息を整えると自らの心が整う」。なかなか難しいのですが、自分が今どんな息をしているのか見つめることから始めていければと思います。
それと「長い息」は、「長生き」に通じると聞いたことがあります。長生きしたいと思える世の中に、そして地球環境であるように自分ができることは何か? 戦争・原発(核)に反対の意思表示をする。木を植える活動をする。買い物をする時には、環境保全に取り組んでいる農家や、会社のものを選んでいきたい。きっと、まだ何かあると思うので考えてみます。
(奈良産直・松本恭明)
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