
2020年代の幕開けに
社会の課題とこれからのよつ葉
関西よつ葉連絡会 田中昭彦
1月19日に関西よつ葉連絡会の総会があり、産直センター、食品工場、農場、企画・物流で働く全職員が一堂に集まりました。現在の社会情勢、「よつ葉」の将来に向けた課題などについて共に考え共有する場になったのではないでしょうか。これからもみんなで心を合わせて、前を向いて共に進んでいきたいと思っています。
会員のみなさん、全国の生産者のみなさん、今年も「よつ葉」をよろしくお願いします。
●深刻化する気候変動
2018年の西日本豪雨、2019年の巨大化した台風・豪雨など、年々ひどくなっていく気候変動による災害が単なる自然災害ではなく、明らかに地球温暖化によるものだという報道が列島をかけめぐったことは、まだ記憶に新しいところです。何十年も前から農産品の「欠品や翌週配達」の原因について、配達スタッフから「異常気象や気候変動」という言葉を聞いた方も少なくないと思います。「気候変動」による農業や漁業への深刻な影響は何十年も前から叫ばれていたことなのに状況は悪化するばかり。
2019年の「よつばの学校」全職員講座では、藤原辰史さんに「食べること 考えること」というテーマで講演していただきましたが、「人間」も「食べもの」も全てのものが「物質代謝」の中にあることを改めて考えさせられました。そしてその「生命の循環や生態系」を歪め変質させているものこそ現代の経済システム、「富」の独占と格差・貧困、環境破壊を地上に蔓延させる「欲望の資本主義」だと考えています。このままでは、地球規模の極大化した災害によって世界的な食糧難が起きる可能性も指摘されています。
●姿勢問われる日本政府
スウェーデンの環境活動家グレタさんがメディアに大きく取り上げられる中、若い人たちを中心に気候変動対策を政府や大国に訴える活動が世界中で広がってきています。しかし、株価と支持率と次の選挙だけを気にしている大国や日本の政治家が何も問題解決できないことは明らかです。いや、解決できないどころか、TPPや日米FTA、日欧EPAなど、農業や漁業、畜産、酪農など、私たちの生存に不可欠な「食べもの」の国内生産を犠牲にして、目先の利害を追求しているのが実情です。
日本は一昨年に「種子法」を廃止し、さらなる法改正を進め営利企業に「種子」の権利を売り渡そうという動きがあります。国連では、日本は「家族農業の10年」宣言には共同提案国に名を連ねながら、「農民の権利宣言」の成立段階ではあからさまに否定する側に立ちました。日本政府の対応は、家族農業を重視するかのようなポーズをとりつつ、実際にはその基盤となる「権利」に反対するというもので、かなり悪質だと思われているようです。アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどでは、「種子」を独占しようとする「モンサント法」の廃絶、気候変動や環境破壊に反対し農民の権利を守るための「農民運動」が広がってきています。
●世界とつながり足元から
2020年総会では、こうした世界や国内の情勢を踏まえ、これからの「よつ葉」がどういう方向に進んでいくべきかを具体的な課題を通して話し合いました。その中で、次を引き受けていく「人材の育成」が今期も重要な課題のひとつであることをみんなで確認しました。
「よつばの学校」や「研修部会」の取り組みは、この紙面でも紹介していますが、その他、毎年「(合同の)新人研修」も実施、この3年間で30名くらいの新入職員の研修をおこないました。「新人研修」の良い点は、各食品工場・能勢農場・北摂協同農場・よつば農産・物流センターの現場で見学・体験をしてもらえること、各現場責任者から直に説明が聞けるところです。能勢農場に一泊しますから、夜は農場のみんなたちと交流会もします。
そして、研修の最後に「よつ葉の話」をします。「よつ葉憲章」には、「食は自然の恵み・人も自然の一部という価値観に重きを置き、自然との関わりを大切にする」ことや「バラバラにされた生産・流通・消費のつながりをとりもどし」という言葉があります。よつ葉の生産・加工・流通・消費の各事業所は、それぞれ独立した経営です。中央に本部があるわけではなく、それぞれの会社が本部です。全体的な取り組みは、基本的に各社の協同(合同)事業として進められるという形です。お互いの主張や違いを対等の立場でぶつけ合い、「生産・加工・流通・消費」の間にある「矛盾」を「よつ葉」という団体(地域)の中で具体的に解決していくことを目指しているからです。
もちろん、私たちの小さな力だけでいま世界で起きている多くの問題を解決できるわけではありません。しかし、これからも「現状を変えていこうという世界中の人々(運動)」とつながっていきながら、生産者・消費者会員・よつ葉職員の連携した力(産直運動)で足元から(この地域で)日々の努力を積み上げていきたいと考えています。
災害支援カンパへのご協力ありがとうございました
昨年実施した台風15号と19号で被災された生産者への支援カンパの報告です。『今週のお知らせ』410号と460号、よつ葉のホームページでの呼びかけに対して12月末までに総額1,554,172円のご協力をいただきました。これを被害にあわれた14生産者に各100,000円お届けさせていただきました。
お届け先は以下の通りです。青森県:津軽産直・新農研、茨城県:水戸冷凍食品、千葉県:三里塚ワンパック野菜・マルタの千葉事務所と農家3軒、群馬県:野菜くらぶ、埼玉県:山忠わさび、長野県:夢来塾市川さん・ひらさわ農園・赤石果樹出荷組合、佐賀県:へちまや群生舎。
なお、カンパ残金につきましては今後の緊急災害支援に充てさせていただきます。
2020年1月20日 関西よつ葉連絡会