研修部会 2019年の取り組みを振り返って
現地で学ぶ 社会の課題
よつ葉の職員によって運営されている研修部会では、今年も多くの研修に取り組んできました。その中から二つの現地研修を紹介します。関電の原発が集中する若狭での研修を希望する声は、福島原発事故後すぐに出ていたのですが、ようやく実現しました。無茶々園からは昨年、佐藤和文さんに「よつばの学校」の講師として来ていただきました。お話を聞いて地域での取り組みに共感した職員が多かったため、現地に行ってさらに詳しく実情を知る機会をつくることになりました。日々の業務に追われるなかでの現地研修は、参加者にはハードな取り組みなのですが、研修部会の今年のテーマ「よつ葉に関連することを中心に様々なことに関心を持ち、自分なりに考え意見を持ち、それを伝えられる力を身につけること」に近づくことができたでしょうか。参加者による報告です。
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若狭の原発現地研修ツアー
手の届くところから省エネ社会へ
研修部会長/淀川産直・田野浩幸
9月21日(土)に若狭沿岸部を訪れ、高浜原発を間近で見学し、長年原発を止めようと活動されている方たちにお話を伺いました。
まず、高浜原発に向かう車中で、木原壯林さん(若狭の原発を考える会)に原発を巡る状況や、科学者の立場から危険性の説明をしていただきました。
福島第一原発の事故後、危険度が増す老朽原発の運転延長までもくろむ関西電力。ただ、特定重大事故等対処施設(特重施設〈いわゆる対テロ施設〉)工事の遅れにより、稼働中であろうが期限を迎えれば順次停止するこの機会を、全ての原発の廃炉へつなげようとさまざまな活動を計画されています。
高浜原発前での、東山幸弘さん(ふるさとを守る高浜・おおいの会〈高浜町の農家〉)のお話では、事故に備え避難用に新設したトンネルの出口が、高浜原発の前という本末転倒な有様や、山を切り崩し造る特重施設建設では、現地の人を含む何千人もの人が働き、地域の原発に対する依存性が高められ、事故のリスクと共存せざるを得ない現実を教えていただきました。
その後、小浜市にある明通寺で国宝の本堂などを拝観し、住職の中嶌哲演さん(原発設置反対小浜市民の会)に若狭の原発の状況や反原発市民運動についてお話しいただきました。
需要が数万kWhほどの若狭に、京阪神向けの原発が11基(総発電量977万kWh)もある。原発は安全であり、これからもその電力を享受し続けようというのなら、大阪湾にでも建設し、都市部で核のゴミを保管すれば、無責任や無関心にならず、多くの人による監視もできるのではないか。また、電力会社の切り替えは、原発に反対する意思表示になるとも話されていました。
大事なのは、エネルギー消費型社会の限界を知り、省エネルギー社会への移行を目指すこと。まず手の届く範囲から変えていきたいと思います。

高浜原発を見渡せる展望台で。
左から東山さん、田野さん、木原さん。

明通寺で。右が中嶌さん。

愛媛県西予市明浜町を訪問
多様な事業がつながり 地域づくり
北摂協同農場・安原貴美代
昨年のよつばの学校でお話をお聞きした無茶々園の農業・漁業・真珠の養殖まで広範囲な事業に取り組む姿勢、意義、内容に興味があり今回参加いたしました。
私が無茶々園を知ったのは30年以上も前で、柑橘の生産と、一つひとつ手で皮を剥いた、苦み、えぐみのないみかんジュースを出荷しているグループという認識でした。それが、ちりめんや、柑橘などの皮を使った化粧品、乾燥野菜、福祉事業まで幅広く取り組まれていることに驚きました。
それらの事業にはつながりがあり、住まいから10歩上がれば柑橘の段々畑。10歩進めば海に着く。そんな接近している山・住居・海。農薬を山で散布すればすぐ海に影響が出ます。地域全体を守り、農業・漁業を集落全体が連携をし、環境問題に力を注ぎながら生産活動に励んでいます。
高齢者の介護をフォローすることで働き手はしっかり仕事に専念できる。そんな必要性から介護福祉の会社が立ち上げられたとのこと。農業団体が作る福祉。ホームヘルパー講座も開講し、福祉の人材育成から2013年にスタートしたそうです。
よつ葉の取り組み、考え方と類似しているように感じました。そんな親近感から、しっかりお話が聞けました。
各生産者別に柑橘を出荷していたり、通常は廃棄される柑橘の皮をジャムや化粧品、入浴剤に利用し、生産物の単価を上げる努力そしていること。地場で採れた食材で農家の女手が惣菜をつくり、各会社に弁当を届け、福祉施設の昼食のおかずとして「てんぽや」が成り立っていること。働き手がどんどん増えるので3カ所もの有料老人ホーム・デイサービスセンターが設立・運営されていること。ベトナムやフィリピンから技能実習生を受け入れ、国境を越えて有機農業を拡げる活動をしていること。
いろいろなことが活動的・意欲的・楽しんでいる感をしっかり受け止めた1泊2日の研修でした。

明浜の海と段々畑。

柑橘の畑でお話を聞く。中央右側が安原さん。
(10月5日~6日)
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※詳しくは490号で配布したチラシかこちらから。