食べものの向こうに見えるもの
塩川恭子(「食の学校」主宰、「よつばの学校」公開講座コーディネーター)
お皿の上にポンと置かれた一粒の大豆。あなたにはそこから何が見えますか。節分の炒り豆、総菜の五目豆、豆腐に納豆、味噌、醤油? 豆の品種を知りたいかも。もうちょっと目を凝らしてみてほしい。大豆畑が見えますか? 周囲の緑、草や土の香り、そこに吹く風さえ感じられるはずだ。その畑で豆は何を食べて育ったか。季節外れの寒さや熱波、病気や害虫にも怯えながらも収穫を迎えられた大豆はエライ。愛情深く育ててくれた生産者の努力には頭が下がる。おいしい味噌や醤油に醸してくれた蔵に感謝。それを食卓に届けてくれた人たちにもありがとう。
つくる人の想いと努力を食する人へ。
食する人の想いと感謝をつくる人へ。
一粒の大豆がつむぐ物語を共有し、それをかたちにしたい。そして次の世代に伝えていく。食の学校に集い、学ぶ人たちの想いである。
食の学校はいわゆる「学校」ではない。
教師から一方的に教えを請うのではなく、皆で知恵や知識を出し合い、学びあう場である。
開校から足かけ24年。「おいしくて安全な食べものを食卓に。人にも環境にも優しく」と。今では耳ダコ!?のようなキャッチを掲げて、浮きつ沈みつ(常に沈没の危機大であった)、賛同してくれる生産者、メーカー、流通、消費者、研究機関などを中心に、小規模ながら全国にわたるネットワークになった。月一度程度に塾を開校。テーマは食以外にも多岐にわたる。メンバーの多くはその分野では既に教える立場の方々だから講師にはこと欠かない。特に重きを置いてきたのは「百聞は一見にしかず」で産地研修。機会あるごとに現場を見、語らい、体験すること。一度ならず何度でも。産地へ行けなくても、できるだけ生(なま)の人の話を聞く機会を多く持つこと。特に企画やバイヤー関係の方たちに強くお願いしたい。
●ものづくりの「基準はまごころ」で
オーガニックの世界基準、日本の特別JAS法などなど、「安全、安心」を求める人が必ず欲しがる「認証基準」。あなたのもの選びの基準は何ですかとよく聞かれた。「ひと」でしかありえないと答える。
農薬をつくったのも、添加物をつくったのも、それを使うのも「ひと」である。その人の良心という物差しだけだ。
学校の開校時からの仲間である安部司さん。多くの「売れっ子添加物」の生みの親であり、「添加物の鉄人」ともてはやされた彼が、一転、添加物と縁を切って無添加食品の伝道師(自称)となった話は既にご存じであろう。「今までは安価で見かけよく、添加物でうまいと錯覚させる食べものもどきをつくってきた。『食べる人』が見えてなかった。
最初に会ったときにしみじみと語っていた安部さん。そして食べものづくりの基準をまごころ基準とした。しかし彼の想いとは裏腹にいまだに業界で広く使われている添加物には安部司発明のものが多い。残念ながら、それが現実である。
「よつばの学校」公開講座-とりもと・小幡勉さん
をお招きして(1月20日)
塩川恭子さん、カキ養殖家の畠山重篤さんと
Copyright © 関西よつ葉連絡会 2005 All Rights Reserved.