日本ばかりが異常気象なのではなく、世界各地から報告が届いています。ギリシャで熱波と干ばつで山火事が起きて死者91人、行方不明者25人とか、同じ地中海沿岸のスペイン・ポルトガルでは48度という記録的酷暑とか。
地中海式気候と呼ばれて温暖で暮らしやすいところだから古くから文明が栄えていたのに今ではこんなことになっています。また、カナダのケベック州でも暑さにより90人以上も死んだそうで、おそらくエアコンなど必要としない地方ですから、家にないのだと思います。そしてスウェーデンから北極圏にかけての地域でも熱波と乾燥で各地で山火事が発生したというから驚きます。
北極海はこれまでは氷におおわれていて、太陽光を反射して熱をはねかえしていたのですが、温暖化で氷がどんどん溶けています。そうすると海水が太陽熱を吸収して暖かくなり、ますます氷が溶け、ますます海水が温かくなるというように、温暖化が急速にすすんでいます。南極でも同じです。
ペンシルバニア州立大学のマイケル・マン教授は地球的規模での異常気象の原因に極地方の急速な温暖化とそれによって日本も含む中緯度地方の偏西風(ジェット気流)が小さくなっていることをあげています。極地と中緯度地方に温度差があると空気の循環が起き、これに地球の自転がからまって強い西風が吹きます。西から東へと天気が変わっていくのはこのためです。ところがそれが弱まれば、高気圧が居座って猛暑と干ばつになり、低気圧が居座って豪雨が何日も続くことになります。
最近の日本の数々の異常気象をみると、いずれもこの説明で合点がいきます。何より、7月に西日本を東から西へと抜けていった台風12号がマン教授の説を裏づけたのではないでしょうか。あの時、天気予報士が「従来の考えや経験は役に立ちません」と訴えていたのが忘れられません。
「地球にやさしい」などという言葉はまだ傲慢だと思います。地球の長い歴史の中には全部が凍っていた時代もあったように、さまざまな環境を経てきました。私たちに必要なのは「人間にやさしい」環境です。人間の傲慢な思いあがりによって、地球はだんだんやさしさをなくし、まるで人間をこらしめるように牙をむきだしてきています。サマータイムの導入などという小手先の対処法は何の役にも立ちません。
山岳部ガッタラン村を訪ねる度、「家の子を一人引取ってもらえないか」とあちらこちら聞かれるので、喜んで一人引き受けることにしました。チベット系タマン人7歳の女の子です。実名でなくヒンドゥー教徒に多い名前でシタと呼んでと言ってたのが、最近はプタリ(ちょうちょ)と呼んでとのことです。
プタリは本来2年生なのですが1年生のクラスで授業を受けています。家には全力疾走で帰ってきて、近くにお遣いも全力疾走です。だけど時々、気まぐれで学校を休むと言います。山岳部では谷底まで続く段々畑の仮住まいで家畜と点々と移動しながら寝泊りする機会が多く、そういう時はよく学校を休んでいたみたいです。読書きが心配なので放課後、しばらくご近所さんに教えてもらうことにしました。また帰宅すると、草刈りなどについて来たがります。山岳部では放課後子どもらは、大人とジャングルに薪拾い草刈りでした。
4か月が過ぎた頃。ガッタラン村集落内の親戚のケータイで、プタリの母親から初めて連絡がありました。大興奮のプタリですが、電話で母親の問いに答えることができません。久しぶりのタマン語が出て来ないのです。それでネパール語で話すことにしたプタリ。緊張していたのがそのうち調子づいて来ました。「お母さんこっちに来る時はヤギと鶏も1羽、お兄ちゃんも連れてきて」。実際には2日かかるので簡単には来れません。母のケータイが故障中なので「今度ケータイ送るから」とか言っています。「お姉ちゃん試験どうだった? お父さんは?」と両親と兄弟姉妹が入れ替わり電話に出て、ずいぶん長電話が続きました。…こっちのママ(僕の妻)もガッタランのママ(実母)もマンパルチャ(好きよ)と言うプタリは、10人家族6番目の子なのです。
家族の枠を超えて子どもを譲ったり、もらったりするここでの暮らしから、経済が医療が制度が子どもを育てるのではなく、ヒトが子どもを育てる、という当たりまえのことを学びます。
ガッタラン村の子どもらにカメラを向ける
白詰相談所の立ち上げ時、『よつばつうしん』の編集会議では新しい読者の開拓が叫ばれており、よつ葉全体でも30、40代の会員さんへの魅力のアピールというようなことも唱えられていた時期でもありました。
そこで、メジャーどころではない手法で。虚構性も交えて少し他の項目と違う切り口で。紙媒体の少し間を空けて解釈できる良さを活かして。活字を愛してやまないという少数派に向けて。自己礼讃広告にならないように。ある程度、型が決まれば書き手は多様に。書き手の発掘も。そして何より『つうしん』内の他稿へといざなう囮として。そんなことをコンセプトに「相談所」という体で始めてみました。
いざ始めてみますと、その虚構性が仇となり企画自体が迷走してしまいました。また紙面上で質問を公募したことにより、より優れたご回答が集まりましたので、そちらの掲載を優先すべく、「相談所」は終了させていただきます。
今後『よつばつうしん』には掲載されませんが、似通った印刷物は池田産直にて独自に刊行されるかとおもいますので、購読をご希望の方はご連絡ください。
白詰相談所のご愛読、ありがとうございました。
(池田産直・内海猛之)
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