地域で循環するものづくり
八木澤商店 岩手県陸前高田市:奇跡の醤、和らぎ味噌など
八木澤商店は岩手県陸前高田市の醤油屋でございます。地域の中で循環できる社会を創ることが持続可能な未来を創りだす大切な一歩だという思いから、できるかぎり地元の顔が見える関係性の中で、ものづくりを心掛けております。
さて、醤油の原料は大豆、小麦で味噌は同じく大豆と米です。この大豆はシュウリュウという品種を使っています。タンパク質の量が多く、醤油や味噌の醸造に適しています。それと収穫量が多い品種なので、生産者にとっても良い大豆といえます。小麦もゆきちからという品種で醤油の醸造に適しています。
これらの地場穀物を長い物では2年間、短い物でも8か月間かけて発酵・熟成させていきます。その間に微生物の働きによって醤油の中に300種類の香味成分が醸成されます。これが、いろいろな素材を引き立たせる大切な成分です。また、醤油の搾りかすは有効な飼料や、土壌改良の肥料としても地域の中で循環しています。醤油は今や日本料理だけでなく、世界中の料理にかくし味として使われています。使い方や合わせる素材によって変化する香りや味をご堪能ください。
最後に台風や地震で被害にあわれた皆さまに心よりお見舞いを申し上げます。こんな時こそ「共に支え合う」精神で、それぞれが歯を食いしばって明日の希望に変えていく勇気が被災地には、必要だと思います。
八木澤商店もたくさんの人の支えがあって今があります。微力ではありますが、今後、皆さまのお役にたてるように精進してまいります。
(河野通洋)
木の桶と重石を使った圧搾作業
「折爪三元豚 佐助」の故郷
久慈ファーム 岩手県二戸市:国産生ハム
岩手県の北部。二戸市、軽米町、九戸村にまたがる折爪岳は、動植物がいきいきと暮らす自然の宝庫です。その山ふところに、「折爪三元豚 佐助」の故郷、久慈ファームがあります。
久慈ファームは祖父・佐助が事業として始め、父・周平、そして現社長の剛志へと代々受け継がれ、祖父の名前を取り「折爪三元豚 佐助」のブランド豚が誕生しました。
私たちは自社で飼育から加工・販売まで一貫して行っております。豚舎は、湿度・温度を24時間最適管理され、分娩・離乳・肥育など豚の成長に合わせて部屋を移動。豚が移動した後の部屋は、洗浄・消毒を行い清潔にしてから次の豚を迎える「オールインオールアウト」方式です。
佐助豚は病気を防ぐための薬に頼らず、徹底された管理と、高い飼育技術と、何より豚へのきめ細やかな愛情をもって飼育されています。
品種はランドレースと大ヨークシャーから生まれたメスとデュロックのオスとを掛け合わせた「三元豚」。肉質の特徴は、なんと言っても脂の旨み! 飼料に植物が炭化したものを加えることにより、臭みのない上質な肉質に仕上げました。脂の溶け出す温度が低く、冷めたお肉でも口触りが良く、口に入れた途端スーッと溶け出します。
いのちを頂くことに感謝し、一貫生産にこだわっている生産者だからこそお届けできる「佐助豚」をぜひご賞味ください。
(久慈剛志)
久慈さんと子豚
麹を通して食文化を支える
高善商店 岩手県奥州市:甘酒
江刺の地で麹を造り続けて1世紀余り。岩手県産のお米など地元農産物を原材料に、米麹や甘酒、みそなどの製造販売をしております、高善商店です。
高善の麹は明治中期頃に先代によって建てられた赤レンガの室(むろ)で製造しています。主原料の米を蒸かすところから始まり、作業場は蒸気に包まれ視界はほぼゼロ。まさに「暑い!」の一言です。
蒸し米を冷ますため、Tシャツ姿の男衆が大型の釜から蒸し米をかきだし、彼らが山盛りにした蒸し米を平らにし、人肌に冷ました後に麹菌を均等に混ぜ合わせます。それはまさに高温多湿との格闘です。
さらに麹造りは温度管理が重要。麹の内部が高温にならないよう、定期的にチェックし、長年の勘を頼りに手間を惜しまず、徹底した温度管理が良質な麹を生み出します。麹床に一日置いた後、一枚、一枚、丁寧に麹板に盛り、さらに麹室で2日寝かせます。
やがて麹は「糀」と記すように、蒸し米に麹の花を咲かせます。常夏の麹室に、無数の麹板が折り重なる光景は圧巻の一言。代々受け継がれている製法で実直に試行錯誤を繰り返しながら毎回の工程を大切に、丁寧に、取り組んでおります。この伝統の麹を使った甘酒は当社こだわりの逸品ですので、機会がありましたらご賞味いただければと思います。
これからも安全・安心な商品づくりを続けるとともに、〝麹〟を通して日本古来の食文化を皆さまに味わっていただきたいと願うばかりです。
(高橋眞平)
蒸し米に麹を均等に混ぜていく
まだまだ若輩者ですが
赤石果樹出荷組合 長野県:りんご・梨
「昔はもっと力があったのに今じゃあ、コンテナが重くてやっとだ」。「肩が上がらんくて、思うように仕事ができん」と、日常会話になっている赤石果樹出荷組合のじいちゃん、ばあちゃん世代(70代~80代)。それでも、現在も現役で梨栽培をしてくれています。次世代の私たちは、りんご作りをしながら、そろそろ自分たちが梨も引き継いでいかなくては……と思わずにはいられない時期になってきています。
長野県の南にある松川町。中央アルプスと南アルプスの間に流れる天竜川を挟んで広がる河岸段丘。訪れる方々は、景色の良さに感動するようです。ここで育っている私たちには当たり前になっている景色、あらためていい環境であることを思い知らせてくれます。
ここ最近は、異常気象による猛暑と干ばつで果樹に病気が出たり、台風がいつも以上に早く、収穫間近の果物に影響を与えたり、温暖化で収穫が早まったり、いろいろと問題はあります。それでも果樹をしていきたいと思えるのは、自然の恩恵を受けられる仕事であり、家族で(子どもも巻き込んで)ひとつの事ができる仕事であり、定年がなく社会貢献できる。そして、消費者の方と直接会える機会で元気をもらえるからです。果物を通して知りあえる方々に感謝しています。
これからの農業の在り方は、今まで通りの道筋を辿るだけでなく、今の社会に合ったニーズも取り入れていかなくてはならない時代だと思います。じいちゃん、ばあちゃんには、もう少し力を貸してもらいつつ、模索しながら未来の明るい農業を目指していきたいと思います。
(宮沢由美子)
前列左端が由美子さん
レンコン栽培にこだわりをもって
肥後れんこんの里 熊本県:れんこん
私が住んでいる地区は、海を埋め立てて作られた干拓地で米がよくできず、明治42年(今から109年ほど前)そこで適する作物はないかと探してこられた作物の一つとしてレンコンが入ってきました。我が家はその当時からレンコン栽培を始めており、私で4代目となります。
両親は長年無農薬無化学肥料栽培にこだわってレンコンを栽培してきており、生き生きと農業をしている姿を見て、私は農業を継ぐことに抵抗はありませんでした。
また、農業を始めてからも、栽培したものに対する会員の皆さまの声が直接聞こえることで、やりがいも感じることができたことを思い出します。
農業を始めてから24年になりましたが、安全でおいしいレンコンを届けることはもちろんのこと、より良いレンコンを栽培するために日々努力しております。そうは言っても自然相手の栽培ですので、台風や長雨、干ばつなどの自然災害との戦いでもあり、これが最高の出来だと思えるレンコンを栽培できたかどうかを自問自答しながら、毎年毎年挑戦しております。
皆さまに喜んでもらえるレンコンを届けることができるように努力していきますので、これからもよろしくお願いします。
(作本貴典)
作本さんご一家
後列中央が貴典さん
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
山名酒造 山名 純吾
*「よつばの学校」公開講座に山名純吾さんをお招きします。
11/18(日)14:00~16:00 ハービスプラザ5F会議室
お問い合わせ:ひこばえ(072-638-2915)
この呪文のような繰り返しのメロディをつぶやくように歌いたい季節がきました。
不思議な物悲しい歌詞には解釈がつきものですが、私の勝手な思いはこうです。
古い酒蔵で長年暮らしていると、なんとなく蔵のなかに住んでいる小さきものの存在を感じる事が時々あります。それは神様というほどの神聖で高尚なものではないのですが、蔵の中に静かに隠れていて、山からひんやりとした秋風が吹いてくるころになると、梯子の上や、酛場の柱の陰をうろうろして、時々道具の位置を変えてみたり、お酒の味見をしているような気がします。そして蔵人が走り回る昼間はどこかに潜んでいるのに、皆が寝静まるとでてきて、人の智慧や努力が及ばないところで、発酵中のお酒に何かを加えているのではないかと。
人智が及ばぬといえば、AI(人工知能)が脚光を浴びています。もう普通の人間では太刀打ちできない存在となり、近い将来は人間の領域を越えて神の次元に到達するときが近づいているのでしょうか? 昨年大手ビールメーカーが醸造にAIの導入を決めたと報道されました。こんな香りでこんな味のビールを造りたいとコンピューターにインプットすると、製造工程を管理して希望のビールに仕上げるシステムだといいます。
私はこれまで八人の杜氏(酒造りの親方)と付き合ってきましたが、良い酒を造る杜氏ほど神事に熱心です。仕事始めと終わりに朝晩欠かすことなく神棚に祈りを捧げます。その感覚は私が蔵にすんでいる小さきものの存在を信じるのと通じるに違いありません。
私たちは限りある命を生きて死にます。この普遍にして不変の生き物のことわりがあるからこそ、自分たちではどうしようもできない大きな力を、時には怖れ、時には頼るのだと思います。そして私は酒造りを目前にして、奥丹波の蔵に今年も不思議な小さきものがあらわれますようにと祈る今日この頃です。
神棚に祈る杜氏
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