下条さんの講演会は、「塩というのは一番身近にあって重要なものなのに、一番意識されていない」という言葉から始まりました。下条さんはベトナムのカンホアで単に塩を作っているだけではなく、塩を識りつくした学者のようで、私たちに話したいことが山ほどあったようです。
それで、どこから話そうかと前置きし、何が聞きたいか質問を募りました。会場は食に関心のある方ばかりなのでたくさんの質問が出ました。そして質問に沿ってレジュメや資料を駆使して分かりやすく話してくださいました。
原料は大別すると海水、湖塩、岩塩であること。製法も実にさまざまあることと、塩の値段との相関について。塩味を決めるミネラルについて。海水を濃縮して起こること。
中でも一番興味深かったのは海水の話でした。『海水の組成表』にはナトリウムNa、塩素Cl、マグネシウムMg、カルシウムCa、カリウムKを筆頭に83もの元素名が挙げられていて大変驚きました。
それから、海水と羊水のミネラル含有率を比較したら、組成は全然違っているという事実。私たちは情報や宣伝に惑わされないよう、冷静に本質を知らなければならないと思いました。
話を聞きながら各人に配られた塩のサンプル(カンホアの塩3種類とシママース、岩塩、食塩)をトマト、きゅうりにかけて味くらべもできました。頭をフル回転させながらの味覚テストは大変でしたが、それぞれの違いは明確でした。こういう体験ができてとても良かったです。
(淀川会員・久下美津子)
質問に答える下条さん。ハービスPLAZAにて。
14種類のトマトを試食しました。それぞれ、甘み・酸味・コク・かたさが違って、とても興味深かったです。
トマト大好きで生きてきましたが、このトマトは「おいしい、好き」このトマトは「おいしくない」だけじゃなくて、「なぜこんな甘くなるのかな?」とか、「どうやってつくっているのかな?」と考えたことは初めてかもしれません。
食べ比べをして、用紙に○△×を記入し投票するのですが、自分が一番おいしいなと感じたトマトは4位でした。口に入れた時は甘みを感じて、でも酸味もあってバランスが良いなと思いました。
生産者の方のお話も聞けて良かったです。我が子を想うように、愛情かけて育てられているんだなと伝わってきました。
夏野菜カレーもとてもおいしかった! おかわりしました。ミニトマトの収穫も体験させていただき、楽しかったです。素敵な企画をありがとうございました。また参加したいです。
豪雨により、トマト農家さんも大きな被害にあったと聞きました。お見舞い申し上げます。
(東大阪会員 H・Y)
14人の農家さんがエントリー。真剣に食べ比べをする参加者。
網野史学に学ぶ
『日本の歴史をよみなおす(全)』
ちくま学芸文庫 2005年 1296円(税込)、
『歴史を考えるヒント』
新潮文庫 2012年 497円(税込)、
『日本社会の歴史(上)(中)(下)』
岩波新書 1997年 各799円~842円(税込)、など
評者:鈴木伸明
歴史のことを考えるのが好きで、さまざまな本を読んできました。一旦、読み終えたら、ほとんど、二度と読むことはないのですが、折に触れて読み返してきたのは網野善彦氏の著書です。
歴史を考えるのは、過去を学び、今を認識し、これからを考える一助とするためです。
良い本に出合えるとほんとに楽しい気分になります。
網野氏の著書で、これを読めばすべてがわかる、といったようなものはありませんが、自らの歴史観を磨き、考え方をつくる上で、大いに示唆を受けます。いわゆる常識なるものを疑う良い機会を与えてくれます。「官製の歴史」ほど、つまらなく、でたらめで、意図的に作られたものはないと認識するのに時間はかかりません。
歴史を考える面白みは、綿々と続いてきた人々の暮らしに対する慈しみ、人々の暮らしへの深い想像力にあります。そんなふうに頭をやわらく鍛えれば、単に歴史を考えるのみならず、さまざまな分野の出来事を結び付けて考えることにつながっていきます。
本を読まない人が増えているといいますが、本当ですかね? つまらない本が多すぎるのかもしれません。本との良い出会いを一度体験すれば、本との向き合い方も変わってくると思います。
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