熊本の地で乾燥野菜を作って40年
吉良食品 熊本県菊池郡:乾燥ごぼう、乾燥人参
一昨年4月の熊本地震の折には、心こもるご支援大変ありがとうございました。改めてこの場をお借りして御礼を申し上げます。いまだ不安な気持ちはありますが、毎日の作業に全社一丸となって頑張っています。
阿蘇の麓、大津町で乾燥機を使った熱風乾燥野菜の製造を始めて40年になります。大津町は一年中の露地野菜栽培が可能で、数多くの野菜が収穫できます。創業当時は、大手食品会社からの依頼で主にねぎ、キャベツを作っていました。時代の流れで、国内の製品から徐々に海外品に移っていき、乾燥の仕事は少なくなっていきました。創業者である現会長は苦労の連続でしたが、お客さまのご支援もあり、地元の露地野菜にこだわり熱風乾燥にこだわり現在に至っております。
野菜の生産者の皆さんにも長年お付き合いいただき、いろいろな面で助けていただきました。しかし、皆さん高齢になり以前のような野菜の供給が難しくなっているのと、後継者不足、気候の変動、先般の地震での離農も伴って、原料となる野菜の確保が大変厳しい状況にあります。それを打開するため、自社での生産部を立ち上げて、播種から収穫までを大きく進めているところであります。
生産者の方々とも相談をしながら、収穫は自社で行い、管理をお願いする。また畑をお借りして野菜を作るなど、さまざまな形を模索しながら野菜の確保に努めております。これからも皆さまに喜ばれる商品づくりに日々精進してまいります。
(岩下慎一)
自社農園でごぼうの収穫
体が喜ぶスイーツ
漢方サロン&薬膳カフェ フィグ 北海道帯広市:薬膳スイーツ
私は、小さい頃から薬に囲まれ、さまざまな相談に応じる親の背中を見て育ってきました。その中で、病気ではない体調不良、不妊、更年期障害など、傍で辛さや悲しみを目の当たりにしてきました。
その時に感じていた、敷居が高く来店しづらい漢方薬局のイメージを変える、気軽に相談できる環境を何かつくりだせないか…という思い。そして自分自身が、頭痛や自律神経の不調を抱え西洋薬では対応できず、漢方の服用をはじめ改善できたことが、漢方薬販売と薬膳カフェを併設した漢方サロンの設立につながっていると思います。
昨今は晩婚化による不妊治療中のご夫婦、食事のバランスが悪く栄養が偏りがち、さまざまな環境でのストレスを抱える女性が多い時代背景もあってか、漢方・薬膳に対して興味を抱く方が増えてきています。また、60代以降のアンチエイジング志向の女性の中で、脳への活性化につながる、よく噛むことが注目されています。
そんな中で、厳選した道産の米粉を使用することと独自に組み合わせた薬膳食材でケーキができないかと構想を練り始めました。そしてできあがったのが「薬膳パウンドケーキショコラ」です。薬膳をたっぷりと使った体も喜ぶスイーツ。お菓子を食べたいけれど、カロリーが気になる方や糖質制限をされている方にオススメです。
これからも、笑顔で毎日を送っていただくためのお手伝いを通じて、女性の願いを叶えられるようなお店を目指して頑張っていきます。帯広にお越しの際はぜひ、〝漢方サロン〟にお立ち寄りください。
(前田恵美子)
パウンドケーキを試食販売したときのようす
春の訪れ告げるホタルイカ
浜勝商店 鳥取県岩見郡:ホタルイカ、ハタハタなど
立春を過ぎて寒さがやわらぐ頃、鳥取県では松葉ガニの漁の終わりとともに、ハタハタやホタルイカの漁が本格的に始まります。風の強い日は欠航になりますが、ほとんど毎日出航して、日に日に漁獲量が増加して、桜の咲く3月下旬ごろには腹に卵を抱え身がふっくらとしたホタルイカが最盛期を向かえ、漁は5月下旬ごろまで続きます。
全国的には、ホタルイカは富山県のものが有名ですが、近年では鳥取県および兵庫県などの山陰地方のほうが多く水揚げされています。富山県でのホタルイカ漁は夜間、産卵のために海面近くまで浮上してきたホタルイカを定置網で漁獲するのに対し、鳥取県などの山陰では沖合い底曳き船で朝早く出航して、昼間に水深200mより深くに生息しているホタルイカを漁獲して、翌早朝、競りにかけます。水揚げされた多くは鮮度の良いその日中にボイルするなどの加工をされ、全国各地の市場へと出荷されていきます。
地元ではホタルイカのいろいろな食べ方があり、ボイル、刺身、しょうゆ漬け、しゃぶしゃぶ、てんぷらなどにして楽しまれています。また、近年「ホタルイカが脂肪肝の改善効果あり?」のようなニュースが発表されましたが、注目すべきは栄養価の高さにあり、他のイカ類と比べてもタウリンが多く含まれ、動物性蛋白質の他にビタミンE、A、B12、銅などが豊富に含まれているそうです。地元でも春の訪れを告げてくれるホタルイカ。獲れたての味をぜひご賞味ください。
(濱田和司)
3月下旬から5月頃まで最盛期のホタルイカ
温暖な天草でミニトマト
佐伊津有機農法研究会 熊本県:ミニトマト、きゅうり、ジューシーオレンジ
私は熊本県の西に位置する、青い海に囲まれた「天草」の温暖な気候を利用し、ミニトマトを栽培しています。
父の代からミニトマトを栽培しており、幼少の頃から手伝いをしていました。地元の高校を卒業後、農業大学校で農業の基礎などを学んでいましたが、大学2年の時に父が亡くなり、農業を継ぐために大学を中退して天草に帰りました。
3年ほど前から佐伊津有機農法研究会へ入会し、よつ葉さんともお付き合いが始まり、今は、姉と私たち夫婦3人で頑張っています。
また、昨年には子どもが生まれ、これからますます頑張っていかなければならないと思っているところです。
自分が作ったミニトマトを「子どもがパクパク食べてくれる」のを見ていると、とても幸せな気持ちになります。
今年は台風や水害、天草でも積雪があり、気象災害も多くとても栽培しにくく、その影響で病気が予想以上に発生し、やや生育が遅れましたが、試行錯誤をしながら何とか樹勢を持ち直しました。今年も予定通りお届けすることができ安心しています。
これからも安心安全はもちろん、「おいしいミニトマト」ができるよう水管理、肥培管理を行い出荷していきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。
(益田龍一)
益田さん
食べることって大事
長崎有機農業研究会 長崎県:玉ねぎ、じゃがいも、トマト
平昌オリンピックが閉幕し、ずいぶん春らしい陽気になってきました。開幕当初、政治的なこともあり、何となく盛り上がりに欠けていた印象でしたが、日本人選手が活躍するにつれ大いに盛り上がり、終ってみれば過去最多のメダル数となり、日本中が感動の渦に包まれました。
活躍の裏には、日々の血のにじむような練習、努力があったものと思います。それとともに、日々の食事に栄養価も含め大変気を遣っている選手がいました。毎日、口にするものが自分の体を作っていくということです。
私たち、長崎有機農業研究会も、今年で発足35年を迎えました。急激な経済成長の影でいろいろな歪みが出てくる中で、食のあり方、食の流通のあり方に疑問をもった当時の若者25名で発足しました。その当時の若者も古希を迎えようとしています。
そして、今、その二世へとバトンタッチされようとしています。これまでの有機農業は経験と勘、そして忍耐に頼ってきましたが、今、若い人を中心に土壌分析など科学的なことも取り入れ、日々、研鑽努力しています。
それにしても、近年、予想を超える異常気象に見舞われています。今年も、北陸地方を中心に記録的な大雪に見舞われました。長崎も北陸ほどではありませんが、二週続けて積雪がありました。昨年11月からずっと気温が低く、ブロッコリーや葉物の生育が遅れ、よつ葉の皆さんにも大変ご迷惑をおかけしたことと思います。これから玉葱、じゃがいもなど、春物の出荷になりますが、やはり、これまでの低温で、生育はやや遅れ気味です。これから春の陽気が続いて順調な生育・出荷ができることを願っております。
それにしても、食べることって大事だよね~。そだね~。
(長尾泰博)
長尾さん
小麦品種「つるきち」を残したい
望月製麺所 泉田 覚
小麦品種「つるきち」との出会いは、2016年7月におこなわれた“北海道小麦キャンプ in オホーツク”で北見農業試験場の方から説明を聞いたことがきっかけです。
「つるきち」(「北見85号」)は、2012年に優良品種となった北海道で初めてのラーメン専用小麦品種です。超強力粉の「ゆめちから」と中力粉の「きたほなみ」の良いところを合わせもち、ラーメンにした時の「つるつる」感と力強さが最大の特徴で、食べた人に「吉」があることを願って命名されました。
この時の説明はインパクトがありました。翌2017年の春になってサンプルを入手し、試作してみたところ、これが味、食感、香りが本当に良く、力がある麺でした。
これはいけると思い、製粉会社に欲しいというと、1社は小麦粉生産量が少なく手に入らないとの回答、もう1社は25kgで1500袋が最低ロツト。これだと私たちのような小さな工場では使い切るまでに小麦粉が劣化してしまうと断念。やっともう1社が1tでも製粉できるというので、お願いして全量買いすることにしました。
当初は、私たちの直営のラーメン店などで使いながら品質の調整をし、商品化も進んで、「つるきち」の麺を広げたいと次のステップを考えていた矢先、製粉会社から連絡があり、「つるきち」の種子を生産していた農協が生産を中止するのであと2年でなくなるというのです。それまでは小麦生産をしている農家が生産物の一部を種子にしていると思っていたので驚きでした。それからいろいろ調べてみると、生産しても消費する量が少ないから「つるきち」の生産がなくなるのではないらしいことがわかってきました。
農家の小麦生産による収入は品代と直接支払い(交付金)の合計です。品代は製粉会社の入札額と農産物検査により決まります。農産物検査の基準は色や粒張りなどの外観で1等、2等、規格外が決まります。直接支払い額は、1等および2等の生産物を対象にタンパク含有量、灰分量などによって、良質のものが高額になるようにランクつけされるようになっています。つまり、規格外になると直接支払いの対象にならず、かつ品代も安くなってしまいます。そして「つるきち」は、生産物の外観品質で規格外になる確率が他の品種よりも高く、農家にとって所得になりにくく、リスクが大きいらしいのです。
さらに、米、麦および大豆の種子生産の根拠となってきた主要農産物種子法(種子法)が廃止になるため、これらの種子の生産については、システムが大きく変わる可能性があります。
種子法とは、一言でいうと、都道府県が大豆、麦、米の優良な品種を選定し、種子生産を責任もって実施するという法律です。これが廃止になるとどうなるか? 民間企業が取り組むと利益を確保する必要があり、農家が購入する種子は高額になるのか? 民間企業の種子開発をした種子が独占するようになるのか? 都道府県で品種開発はしなくなるのか? 直接支払いのような交付金はどうなるのか? 「つるきち」のような生産が限定される品種が生き延びる機会はあるのか?
今のところ、将来どうなるか分からないことばかり。それでも何はともあれ「つるきち」をなんとか残せるよういろいろ模索しながら挑戦していきたいと思っています。
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