43年前に結婚してカミさんから「ビールを飲むのならこれにしなさい」と言われ、ヱビスビールとの長いつき合いが始まりました。当時のわが国の市販品で唯ひとつの、麦芽とホップだけで作られた本物のビールでした。まだ瓶ビールしかなく近所の酒屋さんにケース単位で取り寄せてもらうというレアものだから、非常に限られたおつき合いです。缶ビールが出まわるようになっても自販機で目にすることはなく、コンビニが登場してようやく、それでもいくつかのコンビニをめぐることで何とか巡り合うことができるようになりました。なかでもセブン-イレブンにはヱビスのロング缶(500ml)が置いてある確率が高いため、いつのまにかセブン-イレブンファンになっています。
おでんのじゃがいもと大根は味がしっかりしみた方がおいしいのですが、これが行き過ぎると形がくずれてしまいますし、おだしもにごってしまいます。ところが、セブン-イレブンのおでんのじゃがいもと大根はおだしに入れたばかりの白いうちからしっかりと味がしみています。ただし固いです。煮えていないのにこんなことができるのはおそらく、ゆでた後で細い針がいっぱいついた注射器のような機械でおだしを注入しているからだと思います。ハム会社でハムを作る時に使われている機械です。ゆで玉子もそうです。ゆでたばかりの状態なのに味がしみています。コンビニにとってはいつまでも形が崩れず、おだしもにごらない方が売りやすいわけです。
何年か前に朝日新聞にセブン-イレブンが直営の惣菜工場を全国に何カ所かもっているという記事が載りました。先見の明に恐れいりましたが、担当者の「野菜は固くて味がないものの方が使いやすい。味はこちらで好きなように作ります」というのに驚いたのを覚えています。
麺たっぷりのソース焼きそばもおいしい。コンビニでは売れ筋の商品しか生き残れませんが、この焼きそばはロングセラーのヒット商品です。初めは麺も普通の量でした。それがいつのまにか麺たっぷりタイプになりましたが、そのかわり豚肉もキャベツもほとんど入らなくなりました。麺ばっかりソース焼きそばです。それでも味は変わらずおいしい。本来、豚肉やキャベツからうま味(アミノ酸)がしみ出してきてそれが麺にからんでおいしい焼きそばになるのですが、豚肉もキャベツもなしで同じ味を作りだす。おそらくアミノ酸の使い方が非常にうまいのだと思います。決してうまい話ではありません。
平地へ移住した妻ら少数民族プンマガルの故郷、山岳部カファルダンダ村に通い続けています。
深い谷筋を分け入り、崖沿いを登りつめた所にある村へ、心弾ませ向かう道中。共同の水場で一休みしていると、放し飼いの水牛がやって来ました。水場には、通りがかりの家畜も水が飲めるよう、水溜めが備えてあるからです。また、路傍には湧水があり、その上に古い祠が見えます、水神様です。今は濁水ですが、先人の意思が伝わって来ます。
きつい上りには、妻の祖母の追悼に、義父らが割石を運んで作った、素朴な休憩場があります。通る時は草花を摘み、ご先祖様にナマステと手を合わします。山道には、石畳の道やヒマラヤ桜の木陰に、石積みの休憩場がいくつもあります。こうした道行く村人を思いやる道・場所は、ここに住む人らが、故人を偲んで寄進したものです。地元の人は、その一つひとつが誰の想いで造られたのかをよく知っています。
尾根筋にさしかかると、学校があります。寒季は教室を出て日向に座り、あちらこちらで授業です。お元気ですか?と声かけてくださった一人の先生。その横には、布を敷詰めた竹編の穀物カゴに、赤ん坊が寝ていました。先生は1年生に算数を教えながら、子守をして、授乳もするのです。
その日、泊めてもらうのは、チェマ(妻の叔母)の家。チェマは14匹のヤギを飼い、家の中は、寝る場所を確保するのがやっとなくらい。床にかぼちゃが20個転がっていて、6つある背負いカゴには、隼人瓜と新芽が伸びた(播種期を意味する)ジャガイモ。天井には、トウモロコシが吊るされてあります。
片隅に、ワラで編んだ新しいムシロもあります。聞けば、下手の米が獲れる地域のジャガイモと交換したとのこと。夕食が済むと、チェマは石臼でトウモロコシを引き、かぼちゃを割いては、薪をくべて煮込みます。明日のヤギの餌です。
水・牛・神・木・石・人…ひっそりとした山中の、生きたモノに囲まれた景観からは、一生懸命の近代化ではなく、一生懸命に生きることを学びます。
山道で水牛に会う
大好きだった映画館、京都みなみ会館が3月末に閉館すると聞き、寂しい春です。ここ数年はなかなか足を運べなかったけど、それでも昨年秋、家族で一緒にレジデンツの「めだまろん」を観に行った。それが最後になってしまうのかな。
昔はちょくちょく行ったなぁ。年に一度は市川雷蔵特集があったし、市川崑の怖いけどカッコいい「黒い十人の女」は、今だったら大炎上!?(笑)ポップコーンナイト(ポップコーン代が入場料で、オールナイトの覆面上映)の時は、2本目のフランス映画で寝てしまった。戦前のチャンバラ映画を観た時は、ラストの坂東妻三郎の大見得に観客の拍手喝采。若い女の子が結構居て、「カッコいい!」なんて黄色い声が。
あのシートとカーテンの匂い、アナログな場内アナウンスと開演前のブザー音。シネコンでは味わえない、独自の上映にいつもワクワクしてました。
現在、移転先を調整中だとか。早期の再開を願います。そして、その暁には、言音一致の純音楽家、エンケンこと遠藤賢司、監督・脚本・主演の、かの大名作「不滅の男エンケン対日本武道館」を爆音で観たい!
(京滋産直・光久健太郎)
Copyright © 関西よつ葉連絡会 2005 All Rights Reserved.