よつ葉のPBとは何か
始原に立ち戻り、変革の方針を
津田 道夫(能勢食肉センター)
PB(プライベート・ブランド)を広辞苑で引くと、以下のような記述があります。「スーパーマーケットや百貨店などの大手小売業者が自ら企画生産して低価格で売り出す独自のブランド製品。流通業者商標」。つまり流通が主導してメーカーに製造させ、販売を独占的に引き受けることで価格を抑え、特徴ある商品をつくり出す仕組みというわけです。製造メーカー側が商品開発し、全国の流通業者に卸すNB(ナショナルブランド)と対比される位置付けだと言えます。では「よつ葉のPB」はどうでしょうか。その違いを、起源に遡って考えてみたいと思います。
生産側の主導で連携始まる
元祖「よつ葉のPB」と言えば、誰しもが「能勢農場の食肉」を思い浮かべると思います。現在、能勢農場が飼育し、能勢食肉センターが加工しているのは「牛肉」のみで、豚肉は天理市にある奥口ピッグファームと南丹市にある日吉ピッグファームで飼育された豚を能勢食肉センターが加工しています。しかし、能勢農場とよつ葉の連携が始まった1980年代当初は、能勢農場で牛、豚両方の飼育を行っており、食肉加工も能勢農場が担っていました。よつ葉がその全ての販売を担っていたことは言うまでもありません。そして、この連携を主導していたのは、もっぱら生産側である能勢農場だったようです。
生産側と流通側は、短期的利害という面では常に対立する関係です。最近、世間を騒がせている日産自動車の不正検査の実態や、神戸製鋼所の品質データの偽装問題などは、その利害対立の中で生産側が考え出した自己防衛策だったのではないでしょうか。もちろん許されないことですが、ぼくには、こんな事例はいたる所に日常化していて、事件化した今回の2社の例はほんの氷山の一角としか思えないわけです。そんな利害が相反する生産側と流通側が、協同して、消費者の側に向き合う中で、PB商品が生まれたとも言えるでしょう。しかし、広辞苑の記述にもあるように、通常、流通側が主導するPB商品化がよつ葉のPBは生産側の主導で始まったことはどんな背景、意味を持つものなのでしょう。
生産・流通で価値観を共有
重要な点は、生産側の現場が農業、畜産という自然相手の第1次産業から始まったという点です。そしてもう1つのさらに重要な点は、生産側である能勢農場と、流通側であるよつ葉が、高度成長後の日本社会への批判的視点を共有し、その変革をめざすという同志的関係を基礎として、連携していたというところだと考えています。食べものという自然を生み出す農業や畜産の現場を、より自然に近いものに変えていこうとする考え方では、能勢農場とよつ葉は同じ価値観を共有していた。その基礎があったからこそ、経済的利害で対立する関係の中で論議をし、ある時には激しく相互批判をしながらも、価格面や時としては品質面での不十分ささえ、改善への努力を信頼して折り合いをつけて来れたのではないでしょうか。
その後、「能勢の里からハム工場」「パラダイス&ランチ」「いっちゃん豆腐」「大北食品惣菜工場」とよつ葉のPB生産工場は加工度のより高い食品生産の領域へと拡がっていきました。よつ葉という流通側の受け皿を基礎として、各々の加工食品の、市場流通に対応するための不自然な添加物、生産過程を、少しでも食べものとしての自然に近いものに変えていこうとする、生産側の意欲に支えられた結果でした。
会員の支えに向き合って
それから30年近くが過ぎました。「よつ葉のPB」を創り出し、現場を支えてきた人たちは、その多くが退いています。生産側と流通側の利害対立が生み出す緊張感とお互いの切磋琢磨が薄れ、仲間意識が馴れ合いに変わってしまうに十分な時間が流れたと言えます。
その間、市場流通は容赦のない価格競争、品質競争を繰り拡げてきました。その歪みは生産現場の自然と人間をますます破壊し続けています。流通現場で働く人間の命を脅かし続けています。
そうした生産、流通の現場の実態に批判的に対抗していくためには、今一度、始原に立ち戻って「よつ葉のPB」とは何であるのかを各々の現場を担っている人たちが考え、現状変革の方針を打ち出していく以外に道はありません。
「よつ葉のPB生産」は、50年近くにわたって、よつ葉の事業活動を支えてもらってきたよつ葉の会員の皆さんにとって、よつ葉が届けようと夢見、試みてきた、食べものの原点を示すものだと思います。届いたPB生産の食べものの向こうに、生産の現場を、そしてそこを担って、日々汗を流している人の顔を思い浮かべてもらえる。生産・流通・消費を人と人とのつながりでむすびたいというよつ葉の理念を実感してもらえる食べものであると思います。
だからこそ、支え続けてくれている会員の存在にきちっと向き合って、生産現場から変革を続けていく、よつ葉のPB生産をめざしたいと思うのです。

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