自給率の危機と押し寄せる食品汚染
柳澤 尚(兵庫食健連)
今、日本の食料自給率は38%。62%を海外に依存しています。私たちの身体の構成材料の62%は外国頼みなのです。
国際的な原産国表示ルールに従えば、私たちの身体は国産とは言えません。明らかに外国産です。日本の食料自給率は何故こんなに下がってしまったのでしょうか。
それは、食べものの中で最も大切な穀物を海外に依存しているからです。
●穀物はアメリカ依存
日本は農産物の輸入量が実質世界一です。人口比でみると、世界人口:76億人に対して日本人口は1億2700万人。約1.7%です。
ところが、農産物は世界の総輸入量の10%を日本が輸入しています。とりわけ、小麦、大豆、トウモロコシなど主要な穀物をアメリカに依存し世界有数の輸入国になっています。
●小麦:自給率は12%
9割近くを輸入に頼っています。アメリカ、カナダ、オーストラリアからの輸入です。
パンの原料となる強力粉用の硬質小麦はアメリカ頼みです。
通常、農産物はリファーコンテナーで温度管理されて輸送されます。小麦は、アメリカのような遠いところから大量に運ばれてくるので、輸送コストを抑えるため、常温で運ばれてきます。
アメリカのニューオリンズの港を出港し、パナマ運河を抜けて、太平洋を横断し日本にやってきます。暑い所を経由し、湿度の高い海上を船で常温のまま運ばれてきます。
対策をしなければ、当然虫がわいたり、カビが生えたりします。それを防ぐため収穫後、船積前に殺虫剤がかけられます。マラチオン、クロルピリホスメチルといった有機リン系の農薬です。ポストハーベストと呼ばれています。
収穫後の農薬使用は、日本では規制されています。アメリカでは規制がありません。無理な長距離輸送に伴うリスクです。その輸入小麦が学校給食やファストフード、食パンに使用されています。子どもたちの健康に及ぼす影響が心配です。
●トウモロコシ:全面的にアメリカ依存
年間1600万トン。主食であるお米の年間消費量780万トンの倍の量です。うち1200万トンは家畜の飼料用。400万トンが直接食用に使用されています。
コーンスターチ(トウモロコシ澱粉)に加工されて、子どもたちが大好きな清涼飲料水や大人用のビールの味付けなどに使われています。この輸入トウモロコシ、輸入の際に港で検査すると、たびたびカビ毒アフラトキシンが検出されています。発がん性が極めて強いカビ毒です。もちろん、アフラトキシンが確認されると輸入は止められます。しかし飼料用はほとんど検査の対象になりません。
また、アメリカ産トウモロコシは連作障害を避けるために遺伝子組み換え作物に切り替えられています。害虫抵抗性(殺虫性)のものが多くを占めています。
根切り虫などの害虫がそのトウモロコシを舐めると舐めた虫が死んでしまいます。トウモロコシ自身が虫を殺す毒素を持ってしまっているのです。アメリカではこの殺虫性の作物がなんと農薬として登録されています。驚くべきことです。
●大豆:自給率は7%
日本人の食生活に欠かせない大豆も93%まで海外に依存しています。そのほとんどが、アメリカ産遺伝子組み換え大豆です。
輸入大豆の90%は油用。食用油を抽出した残りの大豆粕(加工脱脂大豆)は、飼料かしょう油の原料に回されます。いずれも「遺伝子組み換え大豆使用の表示義務」の対象から外されています。
アメリカの遺伝子組み換え大豆は、除草剤耐性のものが多くを占めています。特定の農薬(モンサント社のラウンドアップ)に強い耐性を持たせた大豆です。すべてを枯らす除草剤を撒いても、この大豆は強い抵抗力を持っているため枯れることはありません。
日本政府は「従来の大豆と何ら変わりはない」との見解で安全確認が不十分なまま輸入が認められています。アルゼンチンでは、この除草剤が大量に撒かれた地域で白血病、皮膚の潰瘍、肝臓ガン、出産異常などが発生し社会問題になっています。
穀物のアメリカ依存の結果、日本の穀物自給率は28%にまで下がってしまいました。砂漠の国なみです。
この穀物自給率の低さが“食料自給率38%”の原因です。食卓の安全を守るために政府がとるべき道は食料自給率を向上させることです。それぞれの地域の風土に合った農作物の増産に努めることです。
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