「横浜ウッド」で発信開始
TOMATO畑 横浜市:木製食器
TOMATO畑と申します。当社の前代表は、旧労働省認定の小田原漆器箱根細工技能師です。歴史は300年を超えますが、伝統だから残すべきとは考えていません。安全性、その1つの尺度でも、今必要としていただける技術と確信しています。私たちの力で、皆さまの食卓をより健やかにすることができたら、この技術は時代を越えて愛されるはずです。使う人を想うからこそ、技術は進歩し、各時代でご愛用いただけたからこそ伝統になった。私たちはそう考えています。
例えば、あらゆる用途の木材に使用される防腐効果のあるホルムアルデヒド、漂白効果のある二酸化硫黄など、一見して判別が難しい化学処理工程を一切排し、安全な伝統的技法を用いるだけではなく、現在の最新技術で溶出物質を分析しています。溶出検査などの詳細は本年度の最新結果をぜひご覧ください。最新の物理検証において、有害性皆無であることを証明しています。安全性を見える形で公開することこそ、私たちの誇りです。
さらに、私たちは偏見に惑わされず、物理的安全性を追及してきました。成長促進の木や農薬散布の可能性がある果樹木ではなく、一切の化学処置がない原生(野生)の木が入手できる国際協力をいただけた関係から、あえて中国で製作してきました。ひとえに野生の木と伝統的耐水処理に使用する瓦土(かわらど)、漆も野生の物を入手できるからです。国内でも製作を再開していますが、放置林と言われる野生材を使用しています。
しかし、約2年以上にわたり、主たる原料の野生木材の入手難などから大幅な製作減産をしていました。このたび諸々の体制復旧に伴い、心機一転、横浜ウッドという名称で製作を再開することができました。製作再開に際し、後続職人の育成に注力していく計画を進めています。伝統を安全という尺度でも、次の300年に残したい。ご縁があって現在の拠点が横浜市にありますので、横浜ウッドという名前で今後発信していくことになりました。
自らの家族が使える安全性を普及価格に近づけて、毎日気兼ねなく使えるように製作する。それが私たちの目的です。
(田中秀樹)
前代表と田中さん
昔あったKIOKU(キオク)を大切に…
へちまや群生舎 佐賀県武雄市:へちま水
古くから日本では、「へちま水」は日焼けなどの抗炎症作用、皮膚細胞の再生を促してくれるサポニンを多く含むことから美肌水として、または咳止めや塗り薬として私たちの生活の中で親しまれてきました。
私が小さい頃は夏の時期になると、家の軒先や庭先でヘチマを育てて自宅でへちま水を採っている家庭が多かったのですが、住宅環境の変化などによりヘチマを育てる家庭は少なくなっていきました。
そんな昔ながらのへちま水をずっと大切にしていきたいと思い、自然農、完全無農薬でヘチマを育てるところから、生産・販売しだして今年で14年目。燦々と照り注ぐ太陽をたっぷりと浴びて、ヘチマは今年も元気いっぱい成長しています。
8月上旬はヘチマの黄色い花が畑いっぱいに咲いて、地域の方や通りすがりの方から「毎年、この時期はヘチマの花を見ると元気が出る!」「ヘチマの花は初めて見た」とたくさん声をかけていただきました。そして、下旬からはへちま水の採取が始まり、ひとつひとつ、昔ながらの手作業での収穫は本当に大変ではありますが、一滴一滴を大切に採取していきます。そして、これからも皆さまに自然のやさしさをお届けできるよう、日々がんばっていきます。
(相良明宏・苓子)
『life』380号p.31もご覧ください。
今年採取された新物のヘチマ水は10月頃のご案内になります。
元祖・伊勢ひじき
北村物産 三重県:ひじき
当社は海藻業界では自他ともに認める『伊勢ひじきの元祖』であり、創業寛政年間(約200年以上)より変わらぬ『良品は客を招く』の社是を守り続けています。
創業した頃から現在に至るまで“食”を取り巻く環境は良くも悪くも変化し続けてきました。もちろん当社のひじき工場も衛生的(HACCP手法認定施設)に、製品は実証的(トレサビ管理)に変化させ、求められる以上の安全安心を提供するための努力をしてまいりました。
しかし、脈々と受け継がれる「目利き」や「伝統製法」の基礎は変えることなく継続することで、厳選された風味豊かな伊勢ひじきを全国に発信することができ、永く多くの皆さまよりご好評をいただいております。
海藻が生育するのに最適な岩場(磯)で遠浅という伊勢志摩地方の近海が育んだ、太くて実詰まりの良い、ミネラルや食物繊維を豊富に含んだ伊勢ひじき。昨今は水温の上昇で収量がまちまちな現状もありますが、日本の多くの方々に食べていただけるよう、これからも海藻を通じて健康維持と食文化伝承の一翼を担っているという自信と責任を持って提供し続けていきます。
(木下友誌)
農業の難しさ痛感した年に
おきたま興農舎 山形県:枝豆、おかひじき、米
就農して約15年。今年ほど農業の難しさを痛感したことはない。
低温、乾燥、遅い夏、台風。気温に地温に、水分に、水温に、今まで経験してきたこととてらしあわせて、なんとか作物に向き合おうとするも、やっぱりまだまだ。もっとできたはずではと思う後悔と、お天道さまにはかなわないという現実と。
だけど、「美味さが安全」がおきたま興農舎のモットーだ。みなさんに、おいしいお米や野菜を届けたい! そしてそれは体だけでなく心にも届くはず。皆さんの手に届くまであきらめてはいけない。父の号令の下、週末農家の夫(興農舎勤務)とともに、暑い日ざしがジリジリと照りつける中、稲が丈夫になるようにと、枝豆出荷が休みの間に微生物資材を散布(ちなみに朝晩は、枝豆畑の草取り)。この一手間が、どうか秋の稔りに通じますように。おいしさにつながりますように。
約15年、結婚して二児の母となり、農業との向き合い方もちょっとずつ変わってきたように思う今日この頃。頭でっかちに農業を始めた頃よりずっと今は農業が楽しく、そして、ずっと難しい。それから、農業が、どれだけ地域に根ざしているのかを肌で感じるようになった分、どれだけ危機的状況なのかも痛感し、正直近い将来が怖い。でも案じてばかりもいられない。
今日もまた、ふたまわりも、みまわりも違う集落の先輩農家さんたちと、枝豆の収穫・出荷作業をともにしている(十数年来変わらない)。今年もみんなで一つ歳を重ねても、ともに働けることがうれしい。
そして、おいしい作物が収穫できる土がそこにあることにただただ感謝し、私もつなげられるようにと思うのです。
(小林和香子)
「大豆くらぶ」の取り組みを通じて
別院協同農場 京都府:摂丹百姓つなぎの会
私が「大豆くらぶ」の取り組みに参加をし始めてから3年目となりました。
取り組みを始めた1年目は、家の前の1反弱程度の畑を使って試しがてら大豆をまいてみました。知り合いから農薬を使わなくても大豆は簡単にできると聞いていたので難しく考えていなかったのですが、気がつけば雑草がぼうぼうと生えてしまい、これは大変とある程度の除草を行いましたが、次から次へと草が生え、結局は収穫に苦労しました。しかし初めての割には100㎏以上と、思った以上に収穫できました。昔からその田畑で初めて育てる野菜などは土地がビックリしてよく育つといいます。
2年目は鹿などによる獣害の被害に遭い収穫がありませんでした。そして今年が3年目です。どうなるかはわかりませんが今のところは順調です。
大豆くらぶの取り組み全体からすると、自分が作った大豆はほんの少ししかありませんが、醤油や味噌の原料になっているのだと思うと頑張り甲斐があります。
3年目は2反程度で栽培します。私が作った大豆が皆さまの食卓に上がりますように。
(平田文男)
おバカな生物
ひらさわ農園 平澤充人
「このままで、この先この国は大丈夫なのかなぁ」と思うことが多くなった。
わが国の借金は国民1人あたり800万円もある。増税、福祉やインフラの縮小、強烈なインフレなどなど、いずれどこかで生活に苦しみながら払うときがやってくるだろう。
政治が幼稚になった。国民のためでなく、個人の思い入れや「おともだち」のために政治が動く。それを恬淡として恥じない国のトップ。でもそれを選んだのは俺たち国民だからなぁ。
高齢化が進む。私の住む集落は戸数20戸。みんな農家である。この中で農業の後継者がいるのは5戸。他の家は、あと10年か20年すると農家をやめたり、勤めながら農家を続ける、という形になりそうである。それに伴って荒れた田畑が目につくようになった。我が国の食料自給率は30%台。ここまで低くなってしまうと、農村に住むものとしては、もう挽回は不可能だなと思う。最近、AIやロボット技術の発達が著しい。無人で田植えをする機械、色づいたトマトを識別しながら収穫するロボットもテスト段階であるらしい。それらを生産維持や農村の活性化のために早く実用化してもらいたいものだが……。
気候変動が激しい。晩霜、雹、炎暑、大雨、台風、などの自然災害が増えた。私の町は果物の里なのだが、寒冷地向きのリンゴは標高500m地帯では、もう適地ではなくなった。我が家は700m地帯にあるが、年ごとに進む温暖化では、この先も作り続けられるかどうか。これら天候不順の弊害は我が家だけでなく全国の農家が感じていることであろう。不作、災害などで食糧危機がいつ来てもおかしくはないのだ。
原発、治安などなど「この先は大丈夫か」と心配することはまだあるが、まずは地球異変、温暖化をなんとかしないといけない。エネルギー多消費型を見直し、多少の不便は我慢する。そういう暮らしに変えなければ、このままではやがて人類も滅びることになる。自分が生存する環境を自分で壊している人類は地球上で最もおバカな生物なのである。
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