よつ葉の職員で運営している研修部会では、この間、内部被ばくの問題や原発事故後6年になる福島の現状を学んできました。また、よつば関西保養キャンプ実行委員会は、今年も8月第1週に東北の子どもたちを能勢に招く準備をすすめています。このたび両者は、原発事故が地域で暮らす人々に何をもたらしたのか、より深く理解する機会とするために合同で福島現地訪問・交流会を実施しました。参加者からの報告です。(6面に関連記事)
共にできること見いだし行動へ
よつ葉は、お届けしている食べものを通して社会のさまざまな問題を考えています。そうした、よつ葉で働く職員の学びの場として研修部会があります。研修部会では、以前から原発がいかに地域の人間関係を分断させているか。そして原発によって生み出される電気、核のゴミも自分たちの暮らしに深く関わっていることなど学んできました。
今年に入ってからは、鎌仲ひとみ監督の映画を観たり、福島県葛尾村で暮らす一ノ瀬さんのお話を聴く機会を設けました。福島第一原発事故後の健康被害、進められる帰還政策、自主避難者へのいじめ、被災地で暮らす人の苦悩などさまざまな問題について考えてきました。ですが、やはり映像を観て聞いているだけでは分からないことがある。自分たちも実際に福島に訪問してみて、自分の目で観て肌で感じてみたいと思いました。原発事故が、その地域で暮らす人たちに何をもたらしたのか、より深く考える機会にするために。そして、そのことを会員のみなさんにも自分たちの職場でも伝えていくためにも行ってみたいと思いました。
今回、研修部会からよつ葉各所に呼びかけて12名の職員で行って来ました。今後、福島を訪問して交流した人との出会いを大切にして、共に何かできることを見いだして行動していけたらと思います。
(研修部会長/奈良産直・松本恭明)
それぞれの場で頑張っている人たち
宿泊でお世話になった都路測定室の深田さん宅の二階には、主のない勉強机がふたつ。トイレには家族の幸せそうな写真。原発事故のあと、長野に避難した有機農家の家を借りているそうです。たぶんもう戻ってくることはないでしょう。
深田さんは土壌の放射能を測定されていますが、地元では測るなとクギを刺されています。放射能はタブーなのです。今でも場所によっては放射線管理区域以上の汚染度なのですが。
葛尾村議員の松本さんによると、避難指示解除から1年ですが、村に戻ったのは1割にも満たないとのこと。松本さん自身の家族も避難先で新しい生活を始めたり、今もバラバラの状態で、もう一緒に暮らすことはないだろうと言います。
殺処分という指示を拒否して警戒区域で牛を飼い続けている「希望の牧場」の吉沢さん。今も浪江町の多くは帰還困難区域で、家に帰れる見込みはない。400人が震災の関連死で亡くなり、切腹した人もいるということです。町の人たちの絆はもう終わっている、絶望の町だ。それでも牛を飼い続けることで、なんとかして希望を見つけたいのだと語ります。
移動しづらいお年寄りのことを考えて、あえて飯舘村にとどまる道を選んだ「いいたてホーム」の三瓶さん。事故後、消費者との取り引きは激減したが、なんとか持ちこたえ、新規就農の若者たちの世話も引き受ける二本松の有機農家の佐藤さん。除染作業員や被災者の支援を続ける牧野さんと、平田さん。葛尾村に移住して人びとを結び合わせている一ノ瀬さん。
震災と原発事故から6年が過ぎ、当初の衝撃は通り過ぎたかのようですが、それぞれの暮らしや仕事、生き方の中にその影響はより深く及んでいるように思いました。そして、あなたはどうするのかと問われ続けた福島訪問でもありました。
(地域・アソシエーション研究所・下前幸一)
よつ葉職員を受け入れて
3・11から6年4カ月が経ちました。この春には、川俣町山木屋地区、飯舘村・浪江町・富岡町の「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」の避難指示が解除になっています。いま地元のマスコミも、「故郷に帰還しよう」「さあ復興だ」というムード一色で彩られた報道をしています。
しかし、震災・津波が残した傷はいまだに大きいです。そして何よりも福島第一原発事故による放射性物質の放出による人・環境への深刻な影響は、皆さんご存知の通りです。
私が福島に移住して1年が過ぎたところですが、一見、平穏に向けて落ち着いていくかに見える日常の裏で、原発事故の落とした影響の巨大さを感じます。福島の人びとの暮らしと将来、エネルギー問題、都市と地方の問題、農業・食の問題、子どもたちのこと…。
今回、よつ葉の皆さんが福島を見て回るお手伝いをさせてもらいました。どこまで役に立てたか分かりませんが、福島で生きる人びとの姿を知ってもらえたとしたら、嬉しい限りです。
福島はこれからも国策に翻弄されながら大きく揺れ動いていくことでしょう。皆さん、これからも福島とつながり合っていけるように、どうぞ関心を持ち続けてください。私もここ福島の地から、皆さんとのかけ橋になりたいと思っています。
(葛尾村・一ノ瀬輝博)

福島現地訪問・交流会日程
7月1日(土):
①希望の牧場・ふくしま(浪江町/南相馬市)の吉沢正巳さん、②佐藤佐市さん(二本松市の有機農家)、③いいたてホーム(飯舘村)の施設長・三瓶政美さん、④葛尾村の松本操さん(元「斉藤里内仮設住宅」の自治会長で現葛尾村議)、⑤都路市民測定所の深田和秀さん(田村市)、の5カ所。
7月2日(日):
いわき市在住の牧野さん・平田さんに案内いただいて、福島第一原発のある「浜通り」(福島県の阿武隈高地と太平洋に挟まれた地域)周辺をまわる。
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