(その31)他の人を大切にする力
「みんなの学校」の元校長先生・木村泰子さんは「見えない学力」を大切にされています。「人を大切にする力、自分の考えを持つ力、自分を表現する力、チャレンジする力の4つです」。まだ言葉を獲得していない知的障害の子が講堂でみんなの前に出て体を揺らして自分の考えを伝えようとするのもすごいことなら、その子が何を伝えようとしているのかを想像してみんなが誰ひとり動かず声も出さない。そしてその子が伝え終ると拍手が鳴り響く。このシーンを思い浮かべるだけで感動します。
木村さんはこのインタビュー記事のなかで注意深く「知的障害と診断された子」とか「発達障害と診断された子」と言っています。
知的障害とか発達障害と決めてかかることは、その子を枠の中に閉じこめ、その子との間にカベを作ることになるからではないでしょうか。子どもたちの間にはそんな枠もカベもありません。見えない4つの力を上手にのばしてあげれば、言葉をしゃべれない子でも自分の考えを表現できるし、まわりも十分に理解し、受け入れます。ここには枠もカベもありません。言葉をしゃべれてもまわりの人が聞く耳を持たなければ、つまり人を大切にする力がなければ、どんな言葉も耳に入りません。
「みんなの学校」には全校児童260人のうち、支援の必要な子が50人もいます。よその校区からも転入してくるからです。でも特別支援学級はありません。それは「支援が必要な子を排除すれば、その子自身の学びのチャンスを奪うと同時に、周りの子のかけがえのない学びを奪うことになります」。
相模原でたくさんの障害者を殺した犯人は現代の「排除の社会」の鬼子でしょう。彼自身が役立たずとかできそこないとか言われて傷ついた結果、もっと「役立たず」で「できそこない」の人たちを排除することで、役に立って、認められたかったのではないでしょうか。社会にもっと包容する力があれば彼はあんなことをしなかったでしょう。
雨宮処凛さんはこんな社会を「自己責任社会」と名づけました。そして「私たちは『生産性があるか否か』によって命そのものを値踏みされている」と。他人の意見に全く耳を傾けない安倍さんもイヤですが、そんな安倍さんを支持する人たちがたくさんいることの方が、もっと暗い気持ちにさせます。それでも雨宮さんは自分を責めがちな立場の人々がもっと声を上げようと呼びかけています。
事務局の女子2人で早起きして(もう1人はかなり早くから行ってましたが)能勢農場のイチゴ畑に行ってきました。イチゴ狩りシーズンが終わったあとの残りものの超小粒イチゴですが食べてみるととても甘くておいしかったです。
その後、能勢農場の寺本さんともう1人の女子が、赤牛を放牧野へ移動させるところを撮影していたのですが、無事終わったと思った瞬間、1頭の赤牛が私に突進してきたのです。私はびっくりして「何でっ!?」と叫んでしまいました。あとで農場の女の子から「出産してから気が荒くなったようで、子どもを守る気持ちが強いんじゃないかな」と教えてもらいました。同じ生きものとして牛も人間も母は強しだなと思います。
この春、大学生になり、すっかり手がかからなくなった長女のことは見守るしかないものの、大学の学費が高すぎるっ!!と私もどこかに突進したい気分です。うちの次女もそうですが、いろんな事情で進路を悩む子、進学をあきらめる子がたくさんいると思います。どの子もみんなが自由に自分の進みたい道を選べるようにしてほしいです。
(連絡会事務局・山田まゆみ)
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