〈2017年1月号(No.070) -1〉
新年特集号
培ってきた力を信じ前へ
未来のために種まく年に
あけましておめでとうございます。と言ってみても少しも「おめでたい」感がないと書き続けて何年になるでしょうか。政治・社会情勢についても気候変動についても、私たちはすでに転換期の只中にいると、腹をくくるしかないようです。こういう時こそ、よつ葉に関わる皆さんとともに築いてきたつながる力の真価が問われます。カジノや原発・武器輸出がもたらす「成長」に未来はありません。確信をもって別の道を進みましょう。今年もともに。
〈あえて〉2017年、新年雑感 ―そして52度目の稲作に挑む (興農舎・小林 亮)
天変地異の災禍が時・所を問わず煩発し、人智が生み出した技術の粋たる原発も、豊かさを享受するとされた資本主義、その果てのグローバリズム―全てが制御不能の態にある今日を省みる時、心底ジクジたる思いに沈む…。
とはいえ、歴史は洋の東西・思想の左右を問わず一党独裁体制下の権力の奢りは道理に背き、良識に反し、声なき民の意を汲まず―やがては潰える宿命にある。
ただ、いつ来るかわからぬその時を、座して待つわけにもいかない。我が手になるこの米の一粒一粒が、我が手に握る野菜の一束一束が、万が一にも民族自決の原理を踏みにじり、他国に攻め入るための兵糧になられてはたまらない。武器・弾薬・兵糧は一体のもの。時には余り、時には足らず―工場生産と比較はできずとも、その一口の糧は胃袋を満たすのみならず、美味の感動を呼び覚まし、五体に力を取り戻し、心にやさしさを産み、五感を覚醒させる命の食に他ならない。
明けて70歳を迎える夢想だにしなかったこの齢を喜色を持って感謝する。〝平和〟があってこその農耕―命の食の担い手として、国民主権を取り戻す地方自治の主体の一員として、今年もまたよつ葉の皆さまと共に歩める喜びをかみしめています。
混迷は協同と知恵の源泉 (能勢農場・寺本陽一郎)
昨年は秋の長雨で稲ワラ回収がまったく進まず、今も10町歩以上が圃場にのこり、回収のめどがたっていません。年々天候が不安定になり、自然災害のニュースが連日新聞紙面を被う日が目立ち、「異常気象」という言葉が現実味をおびてきています。
一方、政治はというと改憲・原発・沖縄基地建設・TPPと国民不在の政治が横行し、特にTPPは「農業は好きにしていいから車を売らせて」と言わんばかりの暴挙でこちらはさしずめ、人災といったところでしょうか。いずれにせよ天災・人災を前に第一次産業はますます混迷の時代に入ったと言われています。
でも生産現場に携わっていると、多様な生産の長い歴史の中で、今のような混迷の時代が幾度となく繰り返され、そのたびに多くの先人たちの協同と知恵で乗り越えてきたからこそ今日があると感じる時があります。本紙11月号で、台風被害を受けた北海道の今利一さんの記事を読んだとき、「もう一度がんばろう」と思えたのは、自然と共存し、多くの人たちとつながりながら幾多の先人が遺した協同と知恵が詰まった大地にしっかりと根をはっているからこその決断だったのだろうと思いました。
能勢農場も、混迷の時代とは新たな協同を産み、知恵を生み出す源泉ともなる、そんな前向きな気持ちで今年もたくさんの人とつながっていきたいと思います。

能勢農場「年忘れ もちつき大会」での寺本さん(2016年12月11日)
我慢の年にも前進あるのみ (ヤマヒサ・植松勝久 )
最近の小豆島は、映画やドラマの舞台として露出が多くなっていることに加え、昨年は3回目の「瀬戸内国際芸術祭」が開催され、さらに多くの観光客で賑わいました。小豆島でも30を超える作品が各地に展示され、作品を見に海外からも多くの方が来られました。次回は2019年に開催されますので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください。
さて自社の話題ですが、2017年は我慢の年になりそうです。
まず昨年は、1989年から始まったオリーブ栽培で久しぶりに凶作に見舞われ、自社農園では例年の15%ほどの収量、小豆島全体でも不作でした。原因は、裏作にあたる年であったことに加えて、夏の台風、秋の高温多雨などで果実の病気の発生が多かったことが挙げられます。自社の果実を収穫するための農園では極力農薬や化学肥料を使わない方針で、木を枯らす「オリーブアナアキゾウムシ」対策の薬剤だけしか使用していませんが、本当に凹みそうになります。
次に、夏から秋の異常気象によって醤油の原料の国産大豆の収量が増えず、近年高止まりしている価格は、一昨年より4割ほど値上がりしたままです。
また、暗礁に乗り上げそうなTPPの締結に向け、醤油業界はHACCP取得を目指して基準を作成しているのですが、「使用機材の洗浄・殺菌」を導入することで安全面を担保しようとしており、蔵や桶に住み着いた菌や酵母を否定することにつながるようで、当社の考えと相いれないものになりそうです。
もちろん明るい展望もあります。オリーブでは、4年前に植栽した木がそろそろ果実をつける頃ですし、新しく導入した品種も少しずつ実をつけるでしょう。
また、従来からの伝統製法の醤油ではありませんが、オリーブの花から採取した酵母で醸した醤油「花醤」もぼつぼつ売れていて、この酵母を使った新たな展開も見込めそうです。ともかく、前進あるのみです。
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