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赤インクを見つけよう~「みどりの食料システム戦略」について(2021.12)


吉永 剛志 (NPO法人使い捨て時代を考える会事務局)



「赤インクと青インク」という古いジョークがあります。30年前、ソ連がまだあったころのジョークです。

《あるドイツ人労働者がシベリアで職を得た。しかしシベリアではすべての郵便物が検閲官に読まれてしまう。だから友人たちと取り決めた。「暗号を使おう。僕からの手紙が普通の青いインクで書かれていればそれは本当で、赤いインクで書かれていれば嘘だ」》1ヵ月後、友人たちは最初の手紙を受け取った。青いインクで書かれている。「ここでは何もかもが素晴らしい。店はたくさん、食べものは豊富、アパートは広く暖房も効いていて、映画館では西側の映画が上映されている。-ただ一つ、赤いインクだけが手に入らないんだ」

この古いジョークは、今こそ私たちの生活そのものを表していないでしょうか。私たちには、私たちの望むあらゆる自由(の権利)があります。しかし、ただ赤いインクだけがないのです。私たちの不自由を明確に表すための言葉が。

●いいことばかり? 「みどりの食料システム戦略」 
実は「みどりの食料システム」戦略にも同じことが言えるのではないでしょうか。今年3月に農水省が突然発表しました。それによると有機農業シェアを現在の0.6%から2050年には25%にする! 私は「えーっ!」と死ぬほど驚きました。私は自分の属するNPOで4年前、農林水産省の当時の有機農業担当課長補佐の方の講演会を企画しました。そのとき、担当官は「オーガニックは、(酒やたばこと同じく)嗜好品でしょう? といまだに予算折衝で財務省に言われる。しかしがんばってネジを巻いている。東京オリンピックをロケットスタートにしてシェアを倍増させ、2018年には1%にする。実現できなければ農水省の沽券にかかわる」と言っていました。

 当然のようにその「倍増計画」は実現されませんでした。もっといえば、2000年に有機野菜の認証制度が始まり(有機JAS法)、「有機農業」が政府に認知され「変わりもの」がやっているという扱いでなくなりました。が、今でも有機農業のシェア率は2000年以前と変わりません。この20年間、法律による効果があるか全く怪しい。

それなのに25%! 目を疑いました。5月には87ぺージに及ぶ全体像が発表。気候危機に対応し、「食料・農林水産業の向上と持続性の両立をイノベーションで実現」する。有機農業シェア25%は、その戦略の中の一つです。他にもいいことばかりが言われています。

この「戦略」では「国際ルールメーキングへの参画」も言われています。つまり今年9月の国連食料システムサミットです。この5月の「戦略」発表はこのサミットをにらんだものでした。世界は、地球温暖化に真剣に対応している。日本も乗り遅れるな! というものです。

そして以上への議論は大体次のところに落ち着きます。「むちゃでも何でもとにかく政府が25%にする言うてんですから、有機農業に取り組んできたわれわれとしては結構な話やないですか、政府の言うこと否定ばっかりしても、得なことなんてなーんにもあらしません。いいところはいい、悪いところは悪いと是々非々で、提言するところは提言して25%にすること協力したらええんちゃいますのん」。果たして本当にそうなのでしょうか。しかし、これはつまり青インクしかない! ということではないでしょうか。


●小農組織ビア・カンペシーナのボイコット 
実は、世界には明確にこの方向性に「否」を突きつけた団体があります。ビア・カンペシーナ。南半球のいわゆる途上国を中心とし2億人の小農を代表する世界最大の小農組織です。ビア・カンペシーナは、国連食料システムサミットのボイコットを呼びかけました。誤解を避けるために言うと、ビア・カンペシーナは常に「否」と言っている団体ではありません。長年の運動と働きかけで、国連に2018年に『小農と農村で働く人びとの権利に関する国連宣言』(以下『小農宣言』)を採択させ、2019年から『家族農業の10年』を開始させました。画期的なことです。アグロエコロジー」という言葉もこの宣言には入っています。工業型/企業型大規模農業から転換し伝統的な小農の知恵や技術、生活様式を再評価し、脱石油型の持続可能な農業と農法をつくり上げ、それを広げていくことをいいます。

このようにアグロエコロジーを評価し、国連に『小農宣言』も採択させたビア・カンペシーナがどうしてボイコットを呼びかけるのか? 大変なことです。

一言でいうと、多国籍大企業が実に巧妙にこのサミットを仕切り、全てを決めているからです。「のっとられた」、「ハイジャック」された、という人さえもいます。報道によると、実はこのサミットは世界経済フォーラムという「グローバルエリート」が集うダボス会議の密室の中で議題は決められています。段取りと結論はもう決まっているのです。それを決めてから「多様性」を演出するために、「市民団体」の参加が許される。さらにはビル・ゲイツ財団から資金提供を受けている団体(AGRA)がサミットの議長です。カリタバ議長は、『小農宣言』を知りませんでした。さらにはビジネスとしての農業を学ばせる必要があると、農民をビジネスマンと呼んでいるそうです。

なお、大富豪ビル・ゲイツは今やアメリカ最大の農地保有者です。理由はよく分かりませんが買いあさっています。世界の金融は、基本的に金余りです。新たな投資・投機先を求めています。その一つとして農業がある。ビッグデータを駆使した農業を、多国籍アグリビジネス・ビッグデータ企業・投資機関が組んで開発しようとしていると言っていいでしょう。そのための名目として気候変動・オーガニック・<環境に優しい>が使われている。実際、図にあるように「戦略」では2040年頃に新技術(いわゆるスマート農業)を開発し、ビジョンを急カーブで実現するとされています。この50年の有機農業技術にはそれほど関心がありません。来年2月には「戦略」を超えて「法制度化」もはじまります。予算がどこに付いていくか注視していく必要があります。

 さて、しかしこれが分かったところで、なにができるでしょうか? これを変える手だての赤インクは見つかるでしょうか?

上映されている『MINAMATA』で、写真家のユージン・スミスは妨害に遭って腐ります。「水俣(病)のことは世界中どこでもで起こっている平凡なことさ。強いものが弱いものをいじめている、それだけだ。特にわざわざ写真を撮る価値はない」。しかし幾多の困難を乗り越え有名な「入浴する智子と母」を撮るわけです。当事者たちと信頼関係も結びます。そして事態の打開に一役買います。

私たちも私自身の「赤インク」を見つけ、「よつ葉憲章」にあるような、本当に自然と共生する社会をつくりあげていきましょう。

(農水省HP「みどりの食料システム戦略」概要より)"

(農水省HP「みどりの食料システム戦略」概要より)

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