いらない! 遺伝子組み換え食品・関西集会報告
ヴァンダナ・シヴァさんを招いて
『ひこばえ通信』2003年5月号

 中国を中心に世界的な汚染が広がる新型肺炎SARS。なぜ今このような病気が突然発生するのでしょうか? 単純な疑問が頭に浮かびます。AIDSやO-157も同様ですが、耳新しい病気が次々と発生してきます。今までに発生したことのない病気の原因は、人間が作り出した科学技術、特にバイオテクノロジーに関係しているではないでしょうか。いずれにせよ自然の摂理や生態系を無視した科学技術は、自虐・自滅にしか向かってゆきません。
 遺伝子組み換え作物も同様に自然界では絶対に発生しないものです。モンサント社の遺伝子組み換え種子に組み込まれた除草剤耐性遺伝子は、同社の除草剤(ラウンドアップ)の廃棄に使われた排水口より見つかったラウンドアップ耐性の土壌細菌の遺伝子です。大豆やトウモロコシの遺伝子に土壌細菌の遺伝子が組み込まれるということは、自然界では絶対にありえません。
 よつ葉連絡会は「いらない! 遺伝子組み換え食品」と声をあげ、数々の運動を進めてきました。そして今回、京都市のアバンティホールにインドを代表するエコロジスト、ヴァンダナ・シヴァさんを招いた講演会に賛同団体として加入し、実行委員会にも参加しました。

危惧される工業的農業の弊害

 シヴァさんはWTO体制のもと、自由貿易の名を借りてグローバリゼーションが台頭してゆくことに深い危惧を感じています。米国のような超大国や大企業が、工業化された農業を推し進めることにより、単作障害や水の大量消費、化学物質による環境汚染を引き起こします。工業化された農業のもう一つの弊害は、農家を借金漬けにしてしまうことです。それはインドの『緑の革命』の結末として現れた事実です。知的所有権を保持し、特定の種子や化学物質をグローバリゼーションの名のもと世界中に広げてゆく超大国や大企業の戦略が現実のものとなれば、どうなってゆくのでしょう。それは農家だけの問題ではありません。生産・流通・消費のあり方までコントロールし、利益を一極集中してゆく経済のあり方にシヴァさんは大きな警鐘を鳴らします。

循環型共生社会と女性の役割

 単一品種大量生産を目指すのではなく、種々の植物が相互作用し、循環される生命活動を損なわない生産こそ無理のない、最終的には効率のよい生産方法であることをナヴダーニャ運動(シヴァさんが主宰する伝統的種子の保存運動)は訴えています。独占支配しない、共生社会を築くことでしか次世代に地球環境を残せないと情熱的に語りかけるシヴァさんの言葉の中に、女性・母親の果たす役割の大きさということを強く感じました。
 折も折、講演会の数日前から米国によるイラク攻撃が始まっていました。サバイバルだ、勝組みだと自分の生き残りだけに奔走する男社会に対して、シヴァさんからはこんな言葉が飛び出したのです。「母親は三人の子どもがいれば、三人の子どもに平等に食べ物を与えるでしょう」アメリカの子どもにもイラクの子どもにも同じ気持ちを注ぐことのできる母親の愛情に、平和と共生を保つ知恵があるのではないでしょうか。

(よつ葉ホームデリバリー京滋 村上忠政)