ひこばえ通信
2011年1月号(第294号)


第19回:防腐剤―腸内細菌―整腸作用

 食べものが腐るのは腐敗菌の働きです。この菌はどこにでもいますから、簡単に食べものにとりついて腐らせます。ただし、熱に弱いので、加熱して沸騰させれば腐敗菌を退治することができます。冷蔵庫に入れれば活動力は低下しますが、退治できるわけではありません。冷凍も同じです。真空パックや缶詰は、食べものを空気などから遮断して腐敗菌がとりつかないようにしたものです。同時に、酸素がなければ、腐敗菌も生きていけません。もうひとつ腐敗菌が好きなのが水分です。梅雨時に食べものが腐りやすいのはそのためです。逆に乾物は腐りません。
 市販の加工食品には、防腐剤や保存料、酸化防止剤など「食べものを腐らせないための添加物」が入っています。これによって、大量生産・大量販売が可能になりました。どうやって食べものを腐らせないようにしているかというと、添加物には腐敗菌を殺す力があるからです。それだけではありません。食べものといっしょに腸に届いて、腸内細菌も殺してしまいます。整腸作用がいいからとヨーグルトを食べる人がいますが、いっしょに添加物いっぱいのものを食べていたら、何をしているかわかりません。
 「食べものを腐らせない添加物」ばかりでなく、いずれの添加物も、毒性や発ガン性などの試験を行った上で使用が許可されています。マウスやラットなどの小動物に食べさせて確かめます。マウスもラットも哺乳動物ですから、これで害がでなければ、人間にも害がないと思っていいでしょう。ところが、大腸菌や乳酸菌などにどんな作用をするか全く無視されてきました。発色剤や粘着剤などはどうなのか全くわかっていません。ただし「食べものを腐らせない添加物」は試験をする必要はありません。まちがいなく、大腸菌や乳酸菌を殺します。そういう化学薬品です。農薬も抗菌剤も殺菌剤も呼び方が違うだけで全て同じです。
 大腸菌というと「汚いもの」「悪玉菌」というイメージがあります。食品の衛生管理の指標として大腸菌検査が使われるためにそうなりました。例えば牛乳もそうです。牛の糞にも人間の大便にも大腸菌は必ずいますから、搾乳からパック詰まで清潔な状態で行われないと大腸菌が混入し繁殖します。大腸菌が殖えたからといって食べものが腐るわけではありませんが、大腸菌がいるということは他のいろんな菌がいると見なされるわけです。でも、大腸菌そのものは汚いものでもないし、悪さをするわけでもありません。それどころか整腸作用という大事な仕事をしています。
 そもそも、整腸作用とは何なのか、いろんな本を読みましたが、ちゃんとした説明に出会っていません。結果として「便通がよくて、下痢も便秘もしない状態」を整腸作用がいい状態と呼んでいるだけでそのメカニズムはわかっていません。
 ヨーロッパで生まれた近代医学は「菌は悪いもので撲滅すべきもの」と考えていますから、腸内細菌など無視します。日本では断食療法をすすめるお医者さんたちは、整腸作用に注目しています。本来ならば体外に排出されなければならないものが「宿便(しゅくべん)」として腸内に滞留し、これがもとで様々な病気が引きおこされると考えます。断食をするのは宿便を体の外に出すためです。
 また、新谷弘実さんといいう「25万人を内視鏡検査した世界的権威」は、腸の状態を見ればその人の健康状態がわかると言っています。新谷さんは食べものが腸の状態を左右することと、玄米菜食が腸にとって一番いい食事だとも言っています。ただし、断食療法のお医者さんにしても、新谷さんにしても、結果として整腸作用が大事なことを訴えてはいますが、そのメカニズムを解明したわけではありません。
 腸の中だけでなく皮膚にも細菌が住みついていて、皮膚を守ってくれています。この細菌を殺してしまうほどに「清潔」にすると、かえって皮膚を痛める結果になります。
 いろいろな菌と上手につきあうことが、健康に生きる上で大事です。上手に生きたいものです。