
第8回:よつ葉の野菜は軟らかい!
淀川産直の「心をつなぐ情報通信『つなごっ』」に若いおかあさんからの次のような手紙が載っていました。
「子どもがかむのが下手で葉っぱ物野菜をさけていたのですが、よつ葉の野菜は軟らかい! 子どもにも安心して食べさせられる。なんで、スーパーの葉物に比べてこんなに軟らかいのですか。何が違うのでしょう。もちろん他の大根・かぶなんかも軟らかくてとろけるようです」。
今回はこの話題です。題して“よつ葉の野菜は軟らかい!”
単身赴任中のぼくは毎朝具だくさんのみそ汁を作り続け、食べ続けて10年になりますが、何回か、スーパーの野菜を使ったことがあります。大根・さといも・白菜・小松菜・白ネギなど(こんな野菜を入れるのが好きなんですが)、どれも固いのにびっくりしました。生しいたけもまるでガムをかんでるみたい。大きくなり過ぎて固いのかと思って、細くてひ弱そうなものを選んでもやはり固い。
それではと時間をかけて煮ても、あまり軟らかくなりません。味が薄いのは覚悟していましたが、固いのには閉口しました。せっかく手間とヒマをかけて作ってもこれではがっかりです。
こんな野菜が出回っているから、日本人の野菜離れがすすんでいるんだと、この時思いました。今では、あのアメリカ人よりも野菜を食べる量が減っています。やさい村の配送員のOくんのヨメさんは玉ネギを食べられませんし、何と、よつば農産のUさんはにんじんがダメです。おそらく、どちらも玉ネギやにんじんのニオイが苦手なんでしょうが、子どもの時に、まずくて固い玉ネギやにんじんを食べたことが原因だと思います(ニオイの問題はまた機会をみて書きます)。
なぜ固いのか、ひとつは旬の問題です。大根、白菜などの冬野菜は霜が降りると、自分の身を守るために、繊維質を糖質に変えます。その結果、「軟らかく」「甘く」なります。このことは前々回のこの欄でも書きました。
ふたつめは化学肥料の問題です。化学肥料は有機質の肥料(ワラ、葉、フンなど)に比べて、速く吸収されます。野菜も果物も、人間に食べてもらうために大きくなるのではなく、子孫を残す(花を咲かせ、種を作る)ために生きています。肥料をじゃんじゃん吸収すれば、どんどん大きくなります。植物の体はほとんど繊維質と水でできていますから、その結果、「味が薄く」「固い」野菜ができます。固い小松菜や白ネギ、さといもがそうです。固いしいたけは菌床栽培が問題だと、ぼくはにらんでいます。
みっつめは、品種改良の問題です。メンデルの法則と言って、昔、中学校の理科で学んだのを覚えていますか。違う種をかけ合わせた雑種一世(F1と言います。ちなみにハイブリッドは雑種のこと)には親の強いところだけ出ますから、いろんな組み合わせが可能で、じゃんじゃん品種改良が行われています。ただし、種は必ず種苗会社から買わなければなりません。品種改良の目的は、「日持ちを良くする」「形をまっすぐにする」など、遠くに大量に運び、しかも、スーパーの店頭に並べやすいようにするためです。結果として、「固い」野菜が多くなります。
孫がもうじき2歳になります。1週間分のぼくの弁当として、ひじきの煮物や切り干し大根の煮物を日曜日にごそっと作ります。そのおすそ分けを孫がパクパク食べてくれます。
決して腕自慢ではありません。おいしい野菜とちゃんとした調味料と、しっかりしたおダシで煮れば、まちがいなくおいしいものができます。そのおいしさは幼い子にもわかります。人間はそういうふうにできています。 |