清涼飲料水に遺伝子組み換え甘味料
甘いモノにはワナがある
10月号の「うまい話まずい話」は「“疲れた時に甘いモノ”のウソ」でした。おさらいしておきますと「甘いモノが食べたい」と思うとき、体が求めているのは本来は果物なのに、現代人はスイーツを連想してしまう。結果として、果物には含まれているビタミンやミネラルが不足するという話でした。その後、甘いモノについて気になるニュースを2つ目にしたので紹介します。
知らずに食べてる遺伝子組み換え食品
ひとつは、毎日新聞による調査です。飲料メーカー大手の多くが、清涼飲料水の甘味料として遺伝子組み換え「不分別」のトウモロコシを原料とする「異性化糖」を使っているというものでした。「異性化糖」といわれてもピンときませんが、成分表示欄には「ブドウ糖果糖液糖」などと書かれています。異性化糖は国内コーンスターチ(でんぷん)業者が、トウモロコシから加工して作ります。トウモロコシは、ほとんどを輸入に依存していて、9割をアメリカ産が占めています。アメリカ産の8割以上は遺伝子組み換えだといいますから、推して知るべしというべきでしょうか。
もうひとつは、味の素鰍ェ申請していた遺伝子組み換えアミノ酸2種類の市場化が近づいているというものです。食品安全委員会は、すでにこれを「安全」と評価しています。この委員会は何のために存在しているのか、かねてから疑問に思っているのですが、それはともかく、そのうちの1種類は人工甘味料になるものだそうです。
「三大栄養素である砂糖・アミノ酸・油がやっぱり一番おいしい」(『いま「食べること」を問う』伏木亨・山極寿一編著)そうですから、甘さを求めるのは動物として当然なのでしょう。しかし、人間の食事には、ある特定の成分が工業的に濃縮された自然界には存在しないものが含まれていて、いったんこれを食べると自然の食べものには戻れない、とも書かれています。ここが怖いところです。そんな人工的な味と、ほんものの味を区別できる舌になっておかないと、「未来の食卓」(という映画がありますが)は多国籍企業の思うがままでしょう。「ほんもの」の基準を外から押しつけるつもりはありませんが、一握りの大企業が作ったものを、世界中の人が食べるという多様性のなさに未来があるとは思えません。
子どもが甘いモノを摂り過ぎないように気をつけてあげるのは、親のつとめだと思います。ところが最近は、子どもが好きだからと、朝食を菓子パンや清涼飲料水ですます家庭が増えてきているようです。お母さんも甘いモノが大好きですから、止める人がいません。また、その時代に好まれる味は経済状況と関係するようで、思い出してみると、バブルの頃には今ほどスイーツはもてはやされませんでした。甘いモノへの志向は「癒し」や「温泉」のブームと対応しているのだと考えられます。
しかし、好きなものを我慢すると心にストレスがたまるからといって、甘いモノばかり食べていると、心はやすらいでども体は悲惨なことになりかねません。癒しもほどほどにしましょう。今月の「うまい話まずい話」・「苦労して育った野菜は味がある」にも関係する話だと思います。
「うまい」と「あまい」はもともと同じ語源だそうです。しかし、「うまさ」には本来、四季折々の自然であったり、ともに食卓を囲む人との関係であったり、さまざまなモノやコトが複雑に関わっているはずであって、「あまさ」に還元できるものではありません。食べものも飲みものも、質のよい素材で手作りを心がけ、その「うまさ」が、人工的なものなのか自然なものなのか、区別できる子どもに育てたいものですね。(編集部・下村) |