ひこばえ通信
2009年9月号(第278号)

第3回:「美肌にコラーゲン」のウソ

 7月24日付読売新聞朝刊の記事広告から。福岡の医薬品メーカーが「ラフィネ パーフェクトワン」という、コラーゲンを主成分とした美容液を開発・販売しているそうです。「コラーゲンは皮膚や腱など体のほとんどの組織にある繊維状のたんぱく質で、体の中にあるたんぱく質の約3割を占め、そのうちの4割が皮膚にある」これは紛れもない事実です。「若いうちは体内で合成される量が分解される量よりも多いが、年齢を重ねるにつれて分解される量の方が多くなり、その結果、皮膚が老化、ハリが失われ、しわなどができる」これもその通りでしょう。
 「したがって、いつまでも若々しい肌を保つためには外から積極的にコラーゲンを補う(ケアする)ことが大事になる」というのですが、このあたりになるとマユツバものです。皮膚の中で不足しているコラーゲンを外に置いてやるわけですから、その限りではハリやみずみずしさを感じられるでしょう。でも洗い流せば元の肌にもどります。皮膚が若返るのではなく、若返ったように感じられるのです。
 一方、化粧品メーカーの資生堂は飲むコラーゲンを売り出しています。外に塗ってやるのでは限界がありますから、飲んで皮膚まで届けてやろうということでしょうか。でも、こちらはもっと大変です。まず胃の中でコラーゲンを各種のアミノ酸に分解しなければなりません(コラーゲンばかりでなくどんなたんぱく質もアミノ酸に分解して小さくしないと吸収できません)。そして腸で吸収して血液の中に取り込み、皮膚の細胞まで届けなければなりません。もし、血糖やコレステロールが高ければ、末梢血管はボロボロになっていますから、皮膚まで届きません。何とか皮膚まで届いたとします。あくまでも原料となるアミノ酸が届いただけですから、皮膚の細胞の力が弱っていれば、コラーゲンを上手に作れません。
 製薬会社は中からコラーゲンを補うむずかしさを知っているから化粧品を作り、化粧品会社は外から補う限界を知っているから、サプリメントを作る。ぼくの邪推かも知れませんがそう見えます。いやいや、考えすぎかな。売れればいいんだから。
 化粧品にしてもサプリメントにしても、原料のコラーゲンのほとんどは魚からとっています。つまり、魚を食べればコラーゲンをとることができます。ただしお造りはダメです。皮を捨ててしまうから。毎朝だしじゃこのみそ汁を食べて、しかも、だしじゃこも捨てずに食べれば、コラーゲンをたっぷりとることができます。また、魚だけでなく、どんな動物も皮膚はコラーゲンでできています。トリ肉は皮も食べますが、残念ながらブタや牛は皮を食べません。ただし、沖縄と韓国・朝鮮ではブタの皮や耳・足などを食べますが、それでコラーゲンを十分にとることができます。
 美しい肌には、化粧品やサプリメントよりも、バランスのよい食事がいちばんだと思います。あまりにありきたりですが。