分散型・小規模再生可能エネルギーへの転換を
新しい豊かさへの模索 諸富 徹(京都大学) 6月に諸富徹さんをお招きして「エネルギー・環境問題の現状と未来」と題する講演会を開きました。お話の中で特に参加者の関心が集まったのが「地域分散型エネルギー=エネルギーの地産地消」への転換についてでした(参加者の感想は先月号に掲載)。その概要を読者のみなさんにもお伝えしたいと思い、この論点を中心に新たに書き起こしをお願いしました。エコを謳う商品が大量に生産され、消費される現在、エネルギー問題も経済成長の材料にされています。しかし、経済成長が、すでに自然と人間の有限性に直面していることは明らかだと思われます。物質的成長への強迫観念を捨て、価値観を転換し、新しい豊かさを模索するための提案としてお読みいただけたらと思います。(編集部・下村) |
21世紀の社会にとっての最大の挑戦が「低炭素社会」の実現であることは、もはや多言を要しない。そのためには、2050年までに全世界で温室効果ガスの排出を半減しなければ、大きな気候変動が引き起こされる危険性が高まっているという点について、ほぼ国際合意が形成されつつある。このような劇的な排出削減は大変困難な道だが、社会、産業、社会インフラの構造変化を通じて、環境問題を解決しながら、新しい産業と雇用を作り出す社会システムを構築していかねばならない。
エネルギーの地産地消 世界同時不況と気候変動問題に対する対応として、アメリカのオバマ政権は「グリーン・ニューディール」を打ち出した。これが狙いとしているのは、端的に言って「産業構造の転換」と「社会インフラの造り替え」である。ここでいう社会インフラとは、エネルギー・インフラと交通インフラである。 大量消費社会の見直しを とはいえ、温暖化対策を進めることが、電気自動車をはじめとしてさらに電力需要を増加させ、原子力発電を増やすという方向につながってしまっては本末転倒である。原発を増やさず、なおかつ温室効果ガスの排出を削減しようとすれば、(1)まずは、エネルギーの大量消費社会を見直すこと、(2)それでもなお必要な電力は、電力消費地の近くで発電される、地域分散型の再生可能エネルギーで賄う、という方向に進んでいく必要がある。参考になるのが、ドイツ・フライブルク市の試みである。 |
『環境』 (シリーズ・思考のフロンティア) 諸富 徹 著 岩波書店 2003年10月発行 B6・130P・1,365円(税込) |
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