ひこばえ通信
2009年1月号(第270号)

現地訪問記
上関原発建設予定地埋め立て免許の取り消しを!
祝島の暮らしと自然を守ろう
新見輝人(よつ葉ホームデリバリー奈良南)

 山口県熊毛郡上関町四代田ノ浦という瀬戸内海に面した場所に上関原発が計画され、真向かい4キロメートルのところに祝島があります。27年にわたって島民の9割が原発反対運動を続けているという祝島へ行ってきました。




▲現地での交流会にて。前列右端が新見さん。

原発計画と闘い続ける漁業と果樹栽培の島

 ハート型をした人口約530人の小さな島。漁業は船主船長の一本釣り、建網、蛸つぼなどの小規模漁業。農業は果樹栽培が中心だったが、現在は無農薬栽培のビワが盛んで、よつ葉ではこのビワ茶と干し蛸、甲イカを取り扱かっています。
 放牧養豚の氏本農園は休耕田の棚田で豚を放し飼いにしていて、豚は鼻で土を掘り返し、糞で肥料を施すので、そこは良い畑になるといいます。1つの棚田に子豚が3頭走り回っていました。全部で豚7頭、子牛5頭。これ以上頭数を増やすと循環型放牧養豚のバランスが崩れてしまうのだそうです。
 夕刻、27年間盆も正月も休みなく続いている週1回の定例島内デモ(現在1000回を越えている)に参加しました。70歳以上が7割を越えるという島民が「原発はんたーい、エイエイオ〜」と、のどかな、おしゃべり交じりの、それでいて重みのあるデモを行っていました。

公有水面埋め立て免許取り消し求め提訴

 翌日は山口県知事が中国電力に許可した公有水面埋め立て免許の取り消しを求める二つの訴訟が、山口地方裁判所でありました。一つは「長島の自然を守る会」の「上関自然の権利訴訟」。スナメリ、カンムリウミスズメなど天然記念物や絶滅危惧種に指定されている生物6種を「長島の豊かな生態系の象徴」として原告に据え、人間側111人の原告団の一人として私も参加しています。原発予定地が完全な生態系が残る貴重な海域であり、世界的にも希少な絶滅危惧種が生存していること。埋め立てで海の環境が破壊され、原発が海水を取水・排水することで、海中の微生物が死滅し、海水温が上昇するなどして生態系に打撃を与えること。この訴訟はこれらを理由に山口県知事が中国電力に公有水面埋め立て免許を交付したのは違法と訴えています。
 もう一方、祝島の漁民74人による埋め立て許可取り消し訴訟の第1回口頭弁論は「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の山戸貞夫さんの意見陳述があり、埋め立てに祝島漁民の同意を得ていないことの違法性を述べ、漁場を守りたいと訴えました。記者会見の後、埋め立ての取り消しを求める署名10月提出7万人分の追加、約1万5千人分を県庁に提出し、日程を終えました。

▲祝島島民の会代表・山戸貞夫さん
 祝島は過疎と高齢化に悩みながらも、原発の金に頼らない町づくりに取り組んでいます。裕福ではないが自然の恵が豊かであり「漁師が隣に魚を持っていけば、隣は野菜をくれる。いわば物々交換で、私なんか月十万円足らずの収入で余裕があるぐらいだ」と山戸さんは笑って言います。厳しい自然の中で助け合ってきた島の人たちの団結力は、中国電力の支払った漁業補償契約金10億円の受け取りを、今も拒否しています。
 祝島には自然とバランスよく暮らしてきた人たちがいる。そのバランスが保たれていたからこそ、世界でも希少な絶滅危惧種の生き物たちも生存している。ここには最も反自然的で反人間的な原発はいらない。

訴訟資金カンパにご協力お願いします
●振込先:ゆうちょ銀行普通預金 15500-23173591
●加入者名:長島の自然を守る会(TEL&FAX 0835-23-1891)

*「長島の自然を守る会」が中心となり、スナメリやカンムリウミスズメなどの野生動物を原告に据えてたたかわれる「自然の権利」訴訟には、よつ葉からも2名が原告団に参加しています。訴訟への協力をお願いいたします。