食料の値上げが相次いでいます 昨年秋頃から、主食となる世界三大穀物―小麦・米・トウモロコシの国際価格が高騰したため、小麦関連製品のパン・麺類などをはじめ、大豆関連製品および穀物飼料で育つ牛の乳・乳製品も価格が上昇し、今年4月から政府は輸入小麦の売値を30%さらに引き上げました。日清製粉、明治乳業などの大手企業が30年ぶりに値上げに踏み切ったニュースが記憶に新しいところです。
私たちよつ葉の生産者は、穀物や石油の価格高騰をできる限り商品価格には転嫁せず、ギリギリまで努力を続けている状態です。例えば能勢農場では海外からの輸入に頼らない肉牛飼料の地域内自給化をすすめてきていましたが、石油の値上げは地場農家とのワラや堆肥のやりとりや、畑でのトラクターの燃料、おからの運搬など、すべての輸送経費や包装資材などに響いています。
しかし、それでも小麦・パン・麺・牛乳・乳製品など値上げせざるを得ないものがでてきています。
国際価格高騰が食卓へ直結
小麦については、オーストラリアが2年連続の干ばつで生産量を半減させたのをはじめ、EU、アメリカでも前年より15〜20%減産するなど世界的に不安定な状況が続いています。
トウモロコシは、本来食物であったはずのものが、ブッシュ政権のエネルギー政策によりバイオエタノールの原料へと流れました。そのため食べものや畜産飼料としてのトウモロコシや、値段の良いトウモロコシに植え替えられた大豆が世界的に不足しています。トウモロコシは100%、大豆95%、小麦87%を輸入に頼る日本で、その影響は甚大です。そのことが2年前から減反ならぬ“減乳”調整を強いられてきた酪農や畜産業へも影響し、穀物飼料の高騰で廃業に追い込まれる酪農家が一層増えて、牛乳・乳製品、特にバターなどが不足し値上がりしています。
よつ葉の生産者でも『夢ミルク』のシリカファーム・久川牧場はこの冬離農廃業されました。牛は乳を出すまでに2年かかります。あてのない酪農業政策の元ではこうしたリスクを個人で背負うことが難しいのです。
畜産用穀物飼料の間接的な消費増大の要因としては、中国の経済成長によって都市部を中心に中国の人々の食生活が欧米化したこと(この10年で牛肉の消費は2倍に。食肉の消費が増えると穀物飼料需要が加速度的に増える)もあげられます。
さらに、こうした食料の高騰に一段と拍車をかけているのが世界的な投機行為だと言われます。アメリカでのサブプライムローン破綻による“ドルの信用失墜”で行き場を失い、有り余った投機マネーが、値上がりの見込まれる穀物や石油へと流れているため、穀物や石油の国際価格がさらに吊り上げられているというものです。
「原油それ自体は不足していない」とのOPEC(石油輸出国機構)の発表がそれを物語っています。莫大なお金を右から左へ動かす一部の投機家や国家ファンドの投機行為が、作る農民や食べる側の人々に多大な不利益を招いているのです。
原油が高騰すれば、包装資材や移動・輸送コストが上がってあらゆる分野へ波及し、値上げにつながります。そしてグローバリゼーションといわれる世界の相互依存関係の高まりにより、国際価格の値上げは私たちの食卓へも直結するようになりました。
地域とわが家の自給率見直しの機会に

▲各誌でも食と農についての特集が組まれている。『世界』5月号((株)岩波書店)と『週刊金曜日』4月25日号((株)金曜日)
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このように、国境を越えた世界的な動きによる食料価格高騰であるため、先の見通しが立てにくい状況になっていることもあり「このまま世界の食料不足と値上がりが続いていけば、食料の6割以上を輸入に依存する日本で、私たちの食べものはどうなるのだろう」という不安の声も周りから聞こえてきます。
でもこんな時だからこそ、“お金さえ出せばいつでも食べものは手に入る”という考え方にもとづいた政府の農業政策―小泉政権からさらに強化された“農作物は海外に外注すればいい”という「農業切り捨て政策」―を問い直し、地域の農家や、まともな食べものを作る生産者を、会員の皆さんと一緒になって自分たち自身で支える姿勢をこれからも一層強めていくことが大切だと、私たちは考えています。
そして大切な家族の食事を他人任せに(外注)しないで、素性のはっきりした確かな食材でできるだけ手作りする“わが家の自給”の大切さもまた、見直してみる良い機会ではないでしょうか。 |