ひこばえ通信
2008年4月号(第261号)

ご協力ありがとうございました
署名を内閣府へ提出!! 経済産業省に申し入れ

海に空に、放射能を流さないで!
井上陽志(近江産直)

 形やレッテルばかりが目立ってきた「無農薬」「食の安全」。その嗜好に「売れるから」と迎合し、生き残りを懸けて奔走する生産者。今の流行だからと物をかき集める流通。わが身が大事で安全・安心を買いあさる消費者。
 僕たちが食べものを通して見つめ直し、問い続けてきた、社会の歪み。その中で育てられた僕たち自身の価値観、心の傾きの点検。かつての有機農業運動は社会運動であったし、水俣などの公害問題、成田空港建設の三里塚闘争など多くの活動も経済成長、社会発展の時代の大きな流れや権力に対する抵抗だった。青森県六ヶ所村にある「核燃料再処理工場」の問題が生み出される温床、構造は同じではないだろうか。


▲辻元清美衆議院議員同席のもと経済産業省担当官に申し入れ。辻元さん(左から3人目)の右隣が井上さん。その右が「原発・エネルギーを考えるよつ葉の会」代表の上西さん。

1万7511筆を総理大臣宛に提出

 3/11(火)、17511筆の署名用紙提出(内閣府)と再処理工場の監督省庁である経済産業省に申し入れのため東京に行ってきた。どこのどういう立場の人であれ、携わっている人はエネルギーについて解決の糸口を模索し考えている。経済産業省の役人は課長補佐など比較的若い人たちが来た。多分、違う場でふと出会って知り合ったら楽しく時を過ごせそうな人たちはほとんど行政マンの仮面をかぶっていた。
 彼らの口から出てくる言葉は「国」の定める「法令」に基づいた「安全性の評価」というお役人の重役を見習ったようなお決まりの無責任な他人事。原発や再処理工場を推進するために用意した科学的な数字を提示する。問答が始まってすぐに怒りが沸々とこみ上げてきた。誰一人生活者としての立場からの核エネルギー・再処理工場の評価の言葉は出てこない。核に関わる危険性と安全を「交通安全」と同じにするなといいたい。何がこの人たちと自分たちを引き裂き分断しているのか。僕も含め行政マンもみんな何に絡めとられ、突き動かされているのか。
 経済という単語は世の中を治め、人民を救うことを意味する経世済民(もしくは経国済民)の略。これは中国の古典に登場する語で、現代での経済という意味とは随分違う。僕たちが今、「経済」ときいて思い浮かべるのは新自由主義、市場経済と呼ばれるお金のために働いてお金に動かされ、人の関係も子育ても恋愛も命も思想もお金次第の金主主義だろう。

六ヶ所村核燃料再処理工場本格稼動反対!
許してはならない 負の遺産の押し付け


▲17511筆の署名

 核エネルギー、六ヶ所村再処理工場の問題は今を生きる僕たちの暮らしはもちろんのこと何百年、何万年と未来の子どもたち、地球に負の遺産を押し付けてしまうということです。その判断を僕たちがしていいのだろうか。仕方がないと恭順し、あきらめる前に知らなければならない。僕たちの暮らしの捩じれの足元に居座っているものが何であり、何に動かされているかということを。
 経済発展・便利な暮らしの追求や維持と、不便が付きまとう倹約・節約を対峙させると人間の本質は前者の方へ動くだろう。だからこそ僕たちは足ることを知り、自分の生き方、暮らし方を考え、社会と向き合いたい。
 僕が六ヶ所村再処理工場の問題に関わっていてふと思い出される言葉は「愛の反対語は無関心」。「無関心」という都合のよい自分と他との遮断はもっとも残酷なものです。立派な大儀や科学という利口さよりも、誰しもが持っている自分たちの思いやりと優しさを信じながら世の事象を感じ、時代の流れに働きかけたいものです。