ひこばえ通信
2007年9月号(第254号)

「畜産飼料の国内自給を高める全国集会」報告
あなたにとって「旨い肉」は持続可能?
津田道夫(能勢農場)

 少し古い話になるのですが、今年6月14日、岩手県盛岡市において、「農を変えたい!全国運動・有機農業技術会議」の主催による「畜産飼料の国内自給を高める全国集会」が開かれました。関西よつ葉連絡会も「よつ葉のビジョン」という目標を定めて、畜産飼料の見直しに取り組んでいますが、この集会には、全国の先駆的な取り組みを実践している畜産農家や流通団体、飼料メーカーが集まるということを聞いて、はるばる参加してきました。


 集会は基調講演として、「有機農業推進法と畜産への期待」と題して茨城大学農学部の中島紀一さん、「自給飼料をめぐる現状と課題」と題して農水省生産局畜産部の鈴木徹さん、「THAT'S 国産運動とフードマイレージ」と題して大地を守る会の藤田和芳さんの講演でスタートしました。その後、各地の畜産農家からの飼料自給化にむけた実践報告、東北・北海道の農業研究機関の専門家による研究報告、飼料メーカーの現状報告と盛りだくさんで、最後に各部門のメンバーによるパネルディスカッションで終わりました。
 詳しく報告する余裕はありませんので、いくつか、集会に参加して考えさせられた点を報告したいと思います。

持続不可能でゆがんだ穀物飼料の海外依存

 まず飼料の海外依存による穀物飼料大量給餌という日本の畜産の現状は、持続不可能で非常にゆがんだものであることを改めて痛感しました。この方向につき進めば必然的に大量飼育・大規模化にむかわざるを得ず、地域の農業との連携、むすびつきは壊されざるを得ません。そして、この日本の畜産の現状に強い危機感を持つ畜産農家が全国各地でがんばっていることを知っておおいに励まされました。

「良い肉」の常識は転換できるか?

 けれども、この流れに逆らって飼料の国産化、地域内自給化をめざす道は、相当、苦難の道であることも痛感せざるを得ませんでした。そうした畜産のあり方、結果できあがる肉質を受け入れてくれる販売先の確保がなければ、市場に出荷していたのでは成り立たないからです。そして、こうした販売先に強く依存することは、別の意味で、今度はその販売先に従属させられてしまう結果も生み出しかねないのです。先駆的な畜産農家の試みが、なかなか地域内の同じ畜産農家に広がらない限界が、こんなところにあるようにも感じました。
 飼料の見直しは、必然的に畜産動物の「種」の見直しにむかわざるを得ません。なぜなら、海外依存の穀物飼料の多給餌を前提とした畜産動物の品種改良が、もはや逆戻り不能と思われるほどに進んでいるからです。
 そして、それは現代日本で「良い肉」「旨い肉」「高い肉」として評価されている肉質の評価基準そのものの見直しへと行きつきます。それは消費者側の「肉」への常識の転換とセットです。
 果たして、圧倒的なマスコミ、市場流通の力を押し返すことができるのか。集会ではなかなか聞けなかった、畜産農家の直面している現実、苦闘の本音を想像しながら考えさせられた集会でした。


よつ葉がめざす畜産ビジョン
1.地域の気候・風土・人々の生活とむすびついた畜産を常に求め、地域の農業と一体化した畜産をめざします。
2.飼料の地域内自給、糞尿の地域内還元をめざし、環境負荷の少ない畜産をめざします。
3.繁殖・哺育・肥育・屠畜・解体加工・パック詰めの全ての過程で個体識別が可能で、履歴が追跡可能となる畜産・食肉加工システムをめざします。
4.動物としての家畜に、できる限りストレスがかからない、自然な肥育環境づくりをめざします。