住民登録削除反対署名へのご協力ありがとうございました
釜ヶ崎にさらなるご支援を
釜ヶ崎解放会館・梅澤晴美
住んでいるところに住民登録をする。「当たり前でしょ、そんなこと」。皆さんは即座に答えると思います。
でも釜ヶ崎の日雇労働者は住む場所を転々としています。日払いのドヤ(簡易宿泊所)を毎日変わる人もいるし、まとめて10日分のドヤ代を支払って、その後飯場に入る人もいます。昨日はドヤに泊まれても、今日は仕事にあぶれてドヤに泊まることができず野宿するということもあります。不景気が続き、最近は公園や河川敷にテントを建て、アルミ缶やダンボールの回収で生計を維持している人もたくさんいます。
釜ヶ崎解放会館では労働者の役に立つのならと、「住所を置く場所が無い人は釜ヶ崎解放会館に住所設定してもらってけっこうですよ」と呼びかけてきました。労働者の間に口コミで拡がって、一時は4000人を超える人が解放会館に住民登録しました。郵便物の預かりも行っています。会館1階の組合事務所には「あ」から「わ」まで行別に分別された棚が設けられ、訪ねてくる労働者から問い合わせがあると探し出して手渡しします。「ドヤは郵便物を捨ててしまったり紛失したりで、きちんと保管してくれないからホントに助かります」。そういう声をよく聞きます。
「生まれて初めて選挙に行ってきました。ほら、投票済みの票、ここに置いときますわ」。上気した顔で興奮しながら報告に来た若い労働者もいます。野宿していて救急車で病院に運ばれた労働者を見舞いに病院訪問したら、鍵付きの床頭台の引き出しから解放会館の名刺を出して「住所置かしてもらっています」と頭を下げられたこともあります。
住民登録できない実情知ってください
今回、大阪市は解放会館等に住民登録している人のうち居住実態のない住民票は削除するとの方針を明らかにし、実際3月29日強制削除しました。強制削除を食い止めるために大阪弁護士会ホームレス部会に属する弁護士さんに支援のお願いをしたことがあるのですが、開口一番「大阪市の言うことは当然だと思いますよ」と言われ絶句したものです。釜ヶ崎のことを他の弁護士さんより詳しくご存知な方でもそういう認識なのです。ましてや、一般の市民の方なら最初に書きましたように「居住実態のない住民票は削除する、って当たり前のことでしょ」となるのです。
釜ヶ崎の実情を知っていただきたい。住民登録したくてもその場所がない。そういう人たちに解放会館は登録場所として提供してきたのです。西成区役所は釜ヶ崎解放会館への住所設定を認めてきました。それは住民基本台帳法を釜ヶ崎の実態に即して柔軟に運用してきたからであり、決して違法を放置してきた結果ではないのです。私たちはそう認識しております。
野宿する人、テントで生活する人はいったいどこに住所を置けばいいのでしょうか。またドヤを転々とする労働者はどこに住所設定すればいいというのでしょうか。西成区役所に設けられた相談窓口でそのことを質問しても回答はなく無言でした。
今回、よつ葉の会員さんからも住民票の強制削除に反対する署名にたくさんご協力いただきました。この場をお借りして心よりお礼申し上げます。よつ葉の産直運動や能勢農場の開設を切り開いた上田等さんは、釜ヶ崎解放会館設立委員会に絶大な経済的支援を寄せてくださった方です。上田さんの訃報を聞いて、解放会館に寄せられた労働者の信頼を、どんなことがあっても受け止め続けなくてはならないと改めて思ったものです。
強制削除されて2か月近くになります。法の改正を含めて奪われた住民票をどうやって回復していくのか、多くの方の知恵や力をお借りして考えていかなくてはならないと思っています。今後もどうぞよろしくお願いいたします。 |